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ダンジョン村のパン屋さん2〜1年目の物語  作者: 丁 謡
第6章 仕事は人に任せよう
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「それじゃ。何を食べたらそうなったんじゃ?」

 ゲオルグは普段より気配が薄くなっているシルヴァンを見て首を傾げる。

「普通のマジッククウェイルよりも大きなやつを塩揚げ鶏にしたら、隠行の支援効果が付いちゃったんですよ。使ったお肉が特殊個体のだったのか、調理方法のせいだったのか、料理人のせいなのかわかんないんですよねー。一番高い可能性は特殊個体だろうってのが大方の予想ですけど、調理方法も可能性がありますし。二人で一緒に料理したからそのせいかもしれないし」

「それはぁ、また後日ねぇ。料理長さんと放浪の料理人?の彼も一緒に実験しましょうかぁ」

「ですよね。自分でやること増やしてる気がしてしょうがない。はぁ、なるべく他の人に丸投げしようっと」

「芋っ娘!」

「えへへー、私、パン屋ですから!」

「このっこのっ」

「あにゃにゃー」

 南の魔女に頬を押しつぶされて、いじられるアマーリエだった。

「リエ!その塩揚げ鶏食べたいぞ!」

「いいですよ~。はい、ダフネさん」

 リュックから塩揚げ鶏を取り出してダフネに渡すアマーリエ。早速一口で頬張るダフネ。

「んぐ、んっ!旨い!隠行がついた!シルヴァン!今から鬼ごっこだ。どちらが上手く隠形を使いこなせるか勝負だ!」

「オン!」

「神殿内のみでやるぞ、来い!」

 あっという間に一人と一匹の気配がなくなる。突然始まった鬼ごっこに周りは唖然である。

「すみません!ほんと申し訳ない、うちのダフネが!」

 平謝りを始めるベルン(おかん)だった。

「いや、シルヴァンも乗っちゃいましたから、止められなかった私のせい?」

「友誼を結んでるあんたじゃ、無理でしょうが」

 マリエッタが呆れたように言う。

「私も止める暇がなかったわぁ」

 目をパチクリさせて南の魔女が言う。

「いいじゃありませんか、楽しくスキルの効果を実験できて。二人に任せましょう」

「東のぉ、甘いわよぉ」

「大事でしょ?効果」

「はぁ。それで、グレゴールあんた、ダフネとシルヴァンの気配辿れそう?」

 おっとり言う東の魔女をジト目で睨んだ南の魔女は、グレゴールに話を振る。

「え!?俺ですか?」

「あんたの分野でしょうがぁ」

「は、はい!……一瞬捉えられる時がありますが」

 慌てて気配察知のスキルを使って一人と一匹の気配を探るグレゴール。が、眉間にしわがより始める。

「あぁ、隠形を意識して解いてるときね。隠形を意識して使ってる時は難しいってことねぇ」

「そのようです」

「はい質問!」

「なぁに?芋っ娘」

「普通の隠形スキルだと、発見された時点で隠形の効果は切れるんですか?」

「相手に認識された時点で切れるよ、普通」

 グレゴールが何言ってるんだという表情でアマーリエを見る。

「魔女様、私、昨日の隠形、鐘一つ分継続しっぱなしでしたけど、これ食べ物の支援効果だからですか?」

「あー……変よねぇ」

 目が虚ろになる南の魔女だった。

「あははははー。私は、専門外なんで考えるの放棄していいですか」

「考えなくていいわよぉ。ただぁし!料理手伝ってもらうからぁ。任せたわよぅ。でもぉこっちは、考える方ねぇ。はぁ、この食べ物の支援効果とスキルの支援効果、魔法の支援効果の違いをきちんと調べ直さないとダメねぇ。研究してる子居ないかしらぁ?」

「一応、魔法ギルドに問い合わせましょうか。それに研究する者が他に居てもいいじゃないの南の、あなたもやれば。この所、暇だ暇だが口癖だったでしょ」

 うふふと笑って口元を抑える東の魔女を南の魔女がじろりと睨む。

「東のぉ、それ長命種に対する皮肉なのぉ?」

「人より長生きなんですもの。やることいっぱいある方が飽きなくていいでしょ」

「やってやるわよぉ!こんちくしょう!」

「リエ、そなたすぐ、料理に隠形効果がついた理由を調べるんじゃ。調理した素材のせいなら問題なし。調理のせいならその調理をしないようにすればいいがの、料理人のせいならそなた一生ここ住まいじゃぞ」

 考え込んでいたゲオルグが、難しい顔で発言する。

「え」

「暗殺者に、こんなもん食わせられんじゃろうが!料理人のせいとなったら、そなたまた様々な場所から追い掛け回されるんじゃぞ」

「ごもっとも」

「よぉっし!芋っ娘!今から商業ギルドの宿屋の厨房借りてまとめて実験やるわよぉ!どうせ客はそこの二人なんだものぉ!厨房借り切ったって問題ないわぁ!」

 拳を振り上げて宣言した南の魔女に、アマーリエが速攻でツッコミを入れる。

「えええええ!今からって!?私、パン屋の開店準備!」

「死に物狂いでやんなさぁい!」

「おぅふ」

「アマーリエさん大丈夫?」

 アマーリエの様子に慌てて助けに入るブリギッテ。

「ダイジョバナイ。ブリギッテさん、開店の日にもう最低二~三人は人手が欲しいです。短時間で交代も構いません。単純計算が出来る人なら問題ないですから、集めていただいてもよろしいですか?」

「わかった!任せといて!店番ならほとんどみんな出来るから!手が空いてる人駆り出すからね!」

「お願いします~。できたら明後日の午後にでも集まっていただいて、開店当日どう動くのか相談しましょう」

「うん。大事よね。絶対、開店の日は人が多いと思うの!うちの村って他に娯楽無いんだもの!」

「……娯楽か。ですよね~」

「うん!頑張ろうね!」

 娘二人、互いの両手を握りしめあって、気合注入中である。周りはそんな二人を微笑ましげに見ている。

「自重するつもりが想定外にいつも転びすぎるのが悪いんだー」

「何にもしないってのは、リエの性分として無理だものな。美味しいものが食べたいだけなのになぁ」

 ダリウスがしみじみと言う。

「そうなんです、ただ美味しいものが食べたいだけなのに、なぜか話が大きくなるんですっ」

「我慢しろとはいえんからのう。儂らとて美味いもののご相伴に預かりたいしの」

 涙目のアマーリエを慰めるようにアーロンが言う。

「ほれ、隠行の話はギルドの宿の厨房で続きをするとして、ウコンの話の方じゃ」

 毎度のこととあっさりゲオルグが話を元に戻す。

「はい~。えっと手元に鬱金は五つあります。私は二つあれば問題ないです。残り三つですが、どうしましょ?」

「ダンジョンから出たものとしてまずは、ヴァレーリオに二つ渡して薬効を調べてもらえばいいじゃろ。一つは商業ギルドから染色職人へ。銀の鷹にはわしから指名依頼を出して栽培環境を調べてもらおうかの。採集してきた冒険者も一緒に行けばどこで採集したかわかるじゃろ。ついでに、採集も頼んどけば良い。銀の鷹はそれでいいかの?」

「ええ、うちは問題ないです。相手の方次第ですね」

 ベルンが頷いて承諾する。

「そうじゃの。アーロン、あとで採集してきた冒険者を教えてくれ」

「おう、構わんよ」

「それでじゃ、栽培に関してはわしからアッカーマン薬草園へ栽培依頼を出そう。確立した栽培レシピは領名義で登録、栽培者名をそなたらで登録で良いかの?栽培に掛かる資金も出すゆえ。そのほうがそなた等の身の安全も守りやすいからの」

「はい、そのようにお願いします。ありがとうございます、大隠居様」

「栽培できれば色々助かる者が増えるからの。頼んだぞ?」

「はい!」

「それで、商業ギルドのほうじゃが冒険者ギルドに常時依頼を出して採集を頼むように。買取価格については低めに設定しておいて、徐々に価格を上げるようにすればよかろう」

「わかりました、その方向でギルド長と相談いたします。集まったウコンはまずは神殿と染色職人に流す方向でよろしいですか?」

「ああ、そうしてくれ。銀の鷹が生育環境を調べてからアッカーマンの方に卸すようにな。代金はわし宛にしてくれ」

「はい、畏まりました」

「あ!はい!」

「なんじゃ、アマーリエ?」

「アーロンさんから伺ったんですが、ダンジョンの一階層から四階層は季節に別れてて、同じ位置の部屋は同じフィールドになってるそうなんです」

「なんじゃと!?」

「えっと、一階層の手前の部屋が春だとすると二階層のは夏。ってな具合だそうなんで、ウコンが取れる部屋とお米が取れる部屋の四階層分を調べたら通年の生育環境がわかると思うんです」

「そうなんですか!それなら短い時間で調べることが出来ます!アルギスさん良かったですね、早く調べが付けばお兄様のもとに帰れる日が早くなりますよ」

 ファルが手を打って喜びアルギスに話しかける。

「ああ、そうだな。私も一緒に潜るから、よろしく頼む」

「ええ、もちろんです」

「いいな~、私も行ってみたいなぁ~」

「アマーリエさんダンジョンに行ってみたいの?」

「面白そうなものがいっぱいありそうなんだもの」

 アマーリエの言葉にブリギッテがなるほどと頷く。

「リエ!絶対ダメだからね!」

 マリエッタがアマーリエを止めに入る。

「栽培が確立したら、そっちの方の薬効の確認も頼むぞ、ヴァレーリオ」

「おう、任せとけ」

「それで、アマーリエの言う香辛料の方だが」

「取り敢えずは、魔女さまを手伝って食事から付く支援効果の実験手伝います」

「どうせじゃ、その香辛料の方も何が付くかわからんのじゃ。一緒にやってしまえ」

「うっ、わかりました。なんとかします。初日に売るパンの種類を減らせばなんとかなるはずですから」

 がっくり項垂れながらアマーリエがゲオルグに答える。

「よし、ウコンについてはまとまったかの。それじゃあ、一度解散じゃの」

「オンオンオン!」

 皆がゲオルグの言葉に頷いているところにシルヴァンが駆け込んできた。アマーリエの側にピタリと引っ付く。

「あ、シルヴァン!何?あっ、隠行が切れてる」

「シルヴァン!」

「ダフネさん」

「リエ!この隠形なかなかいいぞ!」

「ダフネぇ?あとで効果についてゆっくりお話しましょうねぇ?」

 すかさずダフネの後ろ襟首を掴んでオハナシする南の魔女だった。

「う、わかった南の魔女様」

 掴まれたダフネは耳と尻尾がピンと立ってしまっている。

「ダフネ!いきなり鬼ごっこなんか始めるんじゃない!シルヴァンもだ!」

 躾が大事とばかりにベルンが雷を落とす。

「ハゥ、済まないベルン。つい気になってしまったんだ」

「キュゥ」

 うるうるした目でシルヴァンに見つめられ、ベルンはついデレそうになるがぐっとこらえてしかめっ面を続ける。

「まあまあ、ベルンさん、落ち着いて。ダフネちゃんもシルヴァンも反省してるわよね?」

「もちろんです!」

「オン!」

 ダフネとシルヴァンは調子よく東の魔女に即答する。それぞれの人の言葉に耳と尻尾が反応してわかりやすいダフネとシルヴァンに、ベルンは頭痛を堪えるようにこめかみに手をあてる。

「ダフネちゃん、ちゃんとどういう効果があったのか話してくれればいいからね」

「はい!東の魔女様!」

 とっても良いお返事をした、ダフネだった。

「それじゃ、お開きにするか。アッカーマンはいきなり呼び出してすまなんだの」

「いえいえ、新しい薬草の栽培は楽しいですから。それでは先々代様、御前失礼致します」

「アマーリエさん、明後日の朝市に行く?」

 ブリギッテがアマーリエに声をかける。

「行くよ~」

「じゃあ、そこで落ち合いましょう。集まった人を紹介するから!」

「ありがとう!その時に開店日にどうするか、相談の時間も決めようか」

「うん!じゃあ、明後日ね!」

 先に帰るアッカーマン親子に手を振るアマーリエ。

 二人を見送るとアマーリエはゲオルグを振り返って頼む。

「大隠居様、店に寄って必要なもの持って行きますから、先に宿に戻っていて下さい」

「わかった。東の、戻るかの?」

「ええ」

「面白そうだからわしも行くぞ」

「わしもじゃ」

「俺らも行くか?」

「興味あります」

 結局、皆でまた商業ギルドの宿屋の食堂に行くことになったのだった。

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