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ダンジョン村のパン屋さん2〜1年目の物語  作者: 丁 謡
第6章 仕事は人に任せよう
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 二人と一匹が神殿に着くと、すでに銀の鷹も居て、ヴァレーリオにスキル鑑定をされていた。皆一様に首をひねっている。

「お待たせしました~」

「おっ!来たな、リエ。シルヴァン連れて早くこっちに来い!」

 ダリウスがアマーリエに気づいて声をかける。

「?はーい。メラニーさん、すいません」

「いえいえ」

「シルヴァン行くよ」

「オン!」

 アマーリエはメラニーに断りを入れて、大きな水晶玉に見えるスキル解析用の魔道具のところに行く。

「ほら!リエもシルヴァンも早くスキル鑑定してもらって」

 マリエッタに急かされながらも、魔道具の側に居たヴァレーリオの神官服を見て、アマーリエが挨拶する。

「はい。初めまして、神殿長。新しく来たパン屋のアマーリエ・モルシェンです。こっちがテイムした魔狼のシルヴァンです」

「おうおう、よろしくの。わしが此処の神殿長のヴァレーリオだ。待ちかねておったぞ。ほれ、魔道具に手を置くんだ」

「はい」

 アマーリエは素直に水晶玉に手を置く。

「その次に、シルヴァン、お主もだぞ」

「オン」

 一声鳴いて腹を見せるシルヴァン。

「な!?わしにまでテイムスキルが生えたではないか!?」

「ヴァレーリオ様ずるい!」

「アル坊は黙っとれ!ほれ、アマーリエ、お主のスキル解析書じゃ。読んでみろ」

 そう言って、ヴァレーリオは魔道具から出てきた、スキル解析された白紙の紙をアマーリエの手渡す。アマーリエは手渡された紙に魔力を通す。すると、文字が浮かび上がる。これは、解析された本人しか読めない様になっているのだ。自身が感知できるスキルの詳細がこの解析紙から読み取ることができる。テイムされた従魔に関してはテイマーである主人が読むことが出来る。

「いつも思うんですけどこの魔道具不思議ですよね~?」

「これは、創造神様から贈られる魔道具だからの」

「え?そうだったんですか?」

「おう。帝国の神殿が総本山で最古のスキル解析の魔道具がある。新たに神殿が建つとその魔道具から新たなスキル解析の魔道具が出てくるんだ」

「はじめて知りました」

「おう、ほとんど誰も知らんだろ」

「え゛っ!?それ聞いちゃまずいことなんじゃぁ」

 アマーリエの言葉に周りの人間も頷いて同意する。

「いや。不思議に思う者が居たら、そう答えることになっておるぞ」

「そう答えるって、じゃあ真実かどうかわからないんですか?」

「調べられんからな」

「?」

「調べようとこの魔道具を鑑定すると拒絶されるし、しばらく魔力が使えんようになる」

「うわー。って神殿長は調べたんですか?」

「おう」

「あんたも魔法バカじゃァないのぅ」

 思わず南の魔女が突っ込む。

「ほっとけ。ほれ、シルヴァン次」

「オン」

 シルヴァンは台座に前足を片方引っ掛けるように伸び上がり、もう片足で水晶に触れる。しばらくすると紙が出てくる。

「ほれ、アマーリエ読めるか?」

「え、魔力通せばいいんですよね?」

「ああ」

「……通らないんですが」

 白紙の紙を首をひねりながら、アマーリエは答える。

「はぁ、やはりおかしなことになっておるか。お主、自分の解析紙のテイムの項目、きちんと読んでみろ」

「え、あ、はい。……友誼???」

 その言葉に、テイムスキルが生えた面子はそれぞれ難しい顔をしたり、呆れた様子を見せたりする。

「今までにない状況だな。さて困った。どうしたものか」

「実験するしか無いでしょぉ」

「魔女様、いまいちよくわかってないんですが」

「スキルの公開なんて基本的にしないもんなんだけどぉ、今回はもうしょうがないわねぇ。シルヴァンがテイムスキルを生やした人にはぁ、テイムスキルのところにシルヴァン(降伏状態)ってあるのよねぇ」

「降伏ですか」

「そうなのぉ」

「わしも、見とかねば」

 ブツブツ言いながらヴァレーリオも解析し始める。

「……わしも降伏状態だな。普通はな、アマーリエ。服従なんだよ。テイマーと従魔の関係は」

「はぁ」

「つまり、テイマーの言葉は従魔にとって絶対なんじゃ。友誼は、まあなんとなくは分かる。お前さんがなにか言っても、必ずしもシルヴァンが言うことを聞くとは限らんだろうな」

「なるほど」

「問題は降伏の状態がどういうことかと、結果としてシルヴァンをきちんと管理できるかどうかわからんということなんじゃ」

「あー、私だと普通に犬や猫を飼ってる状態ってことですね」

「ああ。躾がされておらなんだら、噛み付いたり引っ掻いたりするだろうな」

「ということでぇ、降伏状態がどういうことかきちんと調べるわよ」

「今からですか?」

「もちろんよぉ。はっきりさせておかないとシルヴァンを鎖で繋がないといけなくなるわぁ」

「あーそうですよね」

「それじゃぁまず、皆あっちに一列に並んでぇ、シルヴァンはここで待てよぉ?」

「オン!」

「わ、私もですか?」

 理解の追いついていないメラニーが南の魔女に確認する。

「お嬢ちゃんは一般人枠参加。アルギスさん達スキルの生えて無い組も参加よぉ。あらゆる可能性を調べなきゃぁ」

 そんなわけで皆ぞろぞろと祭壇の前に一列に並んだ。

「んじゃぁ、特に強い意志を込めないでシルヴァンを呼んでみてぇ」

 南の魔女に言われて、皆それぞれ軽い調子でシルヴァンにおいでと呼びかける。するとシルヴァンは尻尾をフリフリ、一列になった皆の前にやってきてちょこんと座る。

「呼ばれると誰にでもついていきそうですね……」

 ファルがポツリとこぼす。南の魔女も首を振る。

「んじゃぁ、商業ギルドのお嬢ちゃん!絶対に来てほしいって意志をこめてシルヴァンを呼んでみてぇ」

「は、はい。シルヴァン来い!」

 呼ばれたシルヴァンは素直にメラニーの側に行く。

「来ちゃいましたよ」

「これは、まずいんじゃ?」

「まだよぉ、今度はお嬢ちゃんとアマーリエが呼んでみて」

 すると、シルヴァンはアマーリエの方に向かう。

「友誼のある方に行くわけですか」

「芋っ娘ぉ、次はシルヴァンにお嬢ちゃんのところに行くなって言ってみて。お嬢ちゃんはその後シルヴァンを呼んでみて」

 言われた二人は素直に行動する。呼ばれたシルヴァンの方は、逡巡しながらもアマーリエのそばを離れない。

「芋っ娘のほうが優先順位が上ってことねぇ」

「迷ってましたけどね。状況によっちゃ、メラニーさんの方に行く可能性ありそうです」

 たしかにこれは困った状態だとアマーリエも難しい顔をする。

「え、おやつ持ってたりとか?」

 思わず突っ込むグレゴールだった。

「キュウ」

 突っ込まれたシルヴァンは情けない顔をする。

「そ、そっちか。それは思わなかったな。そうじゃなくて、メラニーさんが危機的状況にあったらシルヴァンが行きそうな気がしたんです」

「例えばぁ?」

「誰かに拐かされそうになってて、助けを求めてたら、この子助けに行きそうな気がします。自分が無理そうなら、その場に居る一番強い人を連れて行くぐらいの賢さは、あるような気がするんですよね」

「そう?流石に……」

「オン!」

 何やら胸を張って同意するように鳴くシルヴァンに一同納得する。

「……行きそうだな」

「まあ、アルギスさんのお守してたからな」

「グッ、反論できませんね」

「取り敢えずそこは置いといてぇ、次は皆で強い意志を持って呼んでみるわよ」

 南の魔女に言われるまま、皆がシルヴァンを呼ぶ。するとシルヴァンは南の魔女の前に腹を見せて降参のポーズを取る。場の中で一番誰が強いのか判明した瞬間だった。

「魔女様、シルヴァンにやっちゃいけないこと言い含めといて下さい」

 あっさり南の魔女に躾を頼んだアマーリエだった。

「……そうねぇ。シルヴァン、い~い?嫌な感じの人にはぁ、大人でも子供でも近づいちゃダメ。あなた反撃したら問題になるからぁ。いい?」

「オン!」

「美味しいものを見せられてもダメよ?」

「ブフッ」

 その瞬間グレゴールが吹き出す。グレゴールにじろりと視線を飛ばして、シルヴァンは南の魔女に返事をする。

「オン!」

「あと、あんたを怖がる人間を面白がって追いかけ回しちゃダメよぉ?」

「オン!」

「何かあっても反撃しないでぇ、リエや降伏した人のところに助けを求めに行くことぉ!」

「オン!」

「はぁ、あなたやっぱりお利口さんねぇ」

 そう言って魔女はシルヴァンを撫でくり回す。ダリウスが羨ましそうに見て、つい意思を込めてシルヴァンを呼ぶ。シルヴァンはダリウスの傍に行き、お腹を見せて撫で回されている。

「ほんとにわかっておるのか?あれは?」

 シルヴァンの状態を見て首をひねるヴァレーリオ。

「わかってますよ。リエに脅されたら南の魔女さまの後ろに隠れてましたから」

「アルギスさんが尻尾握ったら、南の魔女さまの後ろに隠れてましたから、わかってると思います」

 アルギスとアマーリエは同時にヴァレーリオに答えて、ムッとした表情でお互いを見合う。

「そうか。なら、シルヴァンは村の連中が慣れるまでは一匹で行動させん方がいいな」

「わかりました。気をつけます」

「村の連中にもきちんと通達しとかねばな。特に子供らに無茶をするなと、言いつけておかんと」

「よろしくお願いします。あ、今ここにいる人で一番強いのが南の魔女さまって判明しましたけど、ゲオルグ様や東の魔女様が居たらどうなるんだろ?」

「それは、いらっしゃった時に試せばいいんじゃないの」

 アマーリエの言葉にマリエッタが答える。

「ゲオルグ様は一応お呼びしたんですよね、ここに」

「ああ、薬草のお話ですね」

「ええ」

「お~い、皆で何をしておるんじゃ?」

「お、噂をしたら影!」

 中に入ってきたゲオルグ達がアマーリエ達に声をかけた。

「……シルヴァン?あなた存在感が薄くなっていませんか?」

 ゲオルグの後ろに居た東の魔女が小首を傾げる。

「……言われてみれば?」

 ボソリと呟くベルンだった。

「ああ、さっきマジッククウェイルの塩揚げ鶏をご褒美にあげたんですよ。隠形効果がつくんですよね」

「なんじゃと!?」

「隠行ですか!」

 アマーリエの言葉にグレゴールが思い切り食いついたが南の魔女が手を振って答える。

「ま、それはまた後でねぇ。今、最優先はシルヴァンなの。申し訳ないんだけどぉ、シルヴァンからテイムスキルを生やされたゲオルグ殿達は、一斉にシルヴァンに来いって命令してもらえるかしらぁ?」

 東の魔女様最強伝説が、確立した瞬間であった。

 まあ最も、爺世代にはさもありなんという納得の頷きがあったらしいが。アマーリエは詳しい話を聞きたいと思う好奇心を本能でねじ伏せてお口にチャックした。

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