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ダンジョン村のパン屋さん2〜1年目の物語  作者: 丁 謡
第4章 一緒にお散歩
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 テイムモンスター用アイテム屋に入った途端、アルギスは店主に駆け寄り、ブラッシング用のブラシを見せてもらい始める。

「試してもかまわないか?」

「ええ、後できちんと浄化魔法かけて匂いも取りますから大丈夫ですよ。銀狼なら、このあたりのブラシがおすすめですね」

 店主にブラシタイプを二本、櫛タイプを三本トレーに入れて手渡されるアルギス。

「シルヴァンおいで」

 呼ばれたシルヴァンはアルギスにブラッシングしてもらって、どれが良いか聞かれている。一方の南の魔女は、店主にアクセサリー系の魔道具を出してもらい、あれこれ見定め始めた。

「……わたし一応主なんですけどね。お二人とも、シルヴァンが嫌がらない程度でお願いしますよ~」

「大丈夫~」

「わかってるわよぉ」

 ほぼ放置状態におかれたアマーリエは憮然とし、店の中に展示してある物を見て回る。

「へ~、大型獣用のバッグがもあるんだ。シルヴァンに持たせたら、村のお使いぐらいはできるかしら?」

 リュックを取り上げて、ちらりとシルヴァンの方を見る。

「う~ん、真後ろに背負う形か?シルヴァンがつけたら動きが阻害されないかな?山岳救助犬みたいに首から下げる樽は嫌がりそうな気もするしなぁ?脇に固定する形のはないのかな?」

 あれこれ、動物用の袋物を手にとってあれこれ検討を始めるアマーリエ。


 我に返ったアマーリエが再度、シルヴァンを見遣ると、首に大きめのふんわり可愛いピンクのリボンを結ばれていた。

(魔女っ子シルヴァンか?)

 思わず内心で突っ込んだアマーリエだった。

「可愛いわぁ、でもダンジョンじゃ邪魔にしかならないものねぇ」

 残念そうな南の魔女とちょっと耳がヘタっているシルヴァンに、思わず吹き出したアマーリエだった。

「ぶっはぁ、やばい、可愛けど間抜け可愛い感じだよ。はぁ、腹筋崩壊するかと思った。あの、今更なんですけどシルヴァンて雄です雌です?全然確認してないんですが」

 あいにく、可愛いは正義を持ち合わせていないアマーリエは、ジト目でこっちを見たシルヴァンを気遣ってなんとか爆笑するのを我慢しきった。

「尻尾を上げたらわかるよ」

 ひょいと、アルギスが尻尾を持ち上げる。

「雄だね」

「キューン」

 シルヴァンはアルギスから逃げ出し、南の魔女の後ろに隠れる。

「あ、シルヴァン」

「いきなり尻尾掴んじゃだめよぉ。最悪がぶりとやられるわよぉ。シルヴァンだから何にもなかったけどぉ」

「ごめんね?もうしないから」

「キュゥ」

「ほら、こっちとこっち、どっちのブラシが良い?」

「オン」

 南の魔女の後ろから顔を出し、前足で欲しい方のブラシをテシテシ叩いて要求するシルヴァンに、顔がにやけるアルギス。

「貢がれまくってるなぁ。魔女様、そのリボンは流石に邪魔になると思うんで勘弁してやって下さい」

「クゥン」

 アマーリエの言葉に頷くシルヴァンに、首のリボンを外して、ため息を吐きながら南の魔女が言う。

「わかってるわよぉ。ちょっと付けてみたかったのよぉ」

「着飾らせてみたいと思うお気持ちは重々承知してますが、ほどほどで。店主さんすみません、こう動物の両脇に袋が垂れると言うか固定されるような形のありませんか?」

 身振り手振りでバッグの形を説明するアマーリエに、顔を輝かせてガッと近づいてくる店主。

「それいいですね!」

「うぉぅ。ってことは今はないんですね?」

「ええ、ありません!つい人と同じ形で考えてましたよ!そうですよね、四足なんだから胴体の両脇に垂れるほうが、動きが阻害されにくいし、付けられる方も気持ち悪くなさそうですよね!すぐ作ります!」

 回れ右した店主をアマーリエは慌てて捕まえて、追加で質問する。

「あ、その作った袋にをさらにアイテムバッグ加工ってできますか?」

「もちろんです!これは、また儲かる予感~」

 舞い上がった店主を今度はアルギスがなんとか地上に引き止め、南の魔女と一緒に買うつもりのもののお会計を始めた。受け取ったアイテムをアルギスがシルヴァンにつけ始める。

 キラッキラになったシルヴァンを見て、頭を抱えるアマーリエ。

「……どんだけ貢ぐつもりですか」

「いいだろ!」

「いいでしょぉ。ダンジョン用よ!」

「ほんと二人を見てると初めて下の兄弟ができた子と初孫に貢ぎまくる祖父母みたいで可愛く見えます」

 アマーリエの言葉にシルヴァンが深く頷くと、二人は文句を言おうと開けた口を閉じ、ちょっぴり反省したが買うのはやめなかった。

「はぁ、他にも貢ぎそうなのがいっぱいいるから、やっぱりバッグは必須かねぇ。おやつをもらうまま食べてたら、お前危険水準あっという間になるよ。どうも皆、子供代わりに可愛がろうとする傾向があるんだよねぇ」

「キュゥ」

 アマーリエの言葉に頷いて同意するシルヴァン。シルヴァンになんやかんやと言い訳やら愚痴やら言いながら南の魔女とアルギスは、ダンジョン用のアクセサリーをシルヴァンから外し始める。

 それを苦笑いしながら見ていた店主に、アマーリエが声をかけ、途中になっていたバッグの話を始める。

「店主さん、すみませんがこの子の寸法測って、バッグ作ってやってもらえませんか。あと紐の部分は調節できるようにしたいんですが」

「え、なになに?魔法使わないで調節できたりするの?それなら安くできるわよ!」

「あれ?調節って魔法でするんですか?」

「魔道具だからね」

「?」

「……あなたテイマーじゃないの?あの子あなたの従魔よね?」

 お互いの話の噛み合わなさに、店主が慌てて認識の齟齬を改め始める。

「イエ、ただのパン屋がうっかりテイムしただけです」

 どこのパン屋がうっかりテイムするんだとノールなら突っ込みそうなことをアマーリエは口にする。

「まぁ!どうやってテイムしたの!」

「美味しいものをあげたとしか……」

「興味あるわ!お話しいない?」

「いや、あの、まだこの後用事があるし、店を開ける用意もあるから余裕ができましたらでいいですかね?」

 掴みかからんばかりの勢いの店主にさすがのアマーリエも腰が引ける。

「あっ、ああ、あなたが新しいパン屋さん?」

 テイムの方に意識の比重がよっていた道具屋の店主が、漸くアマーリエをパン屋と認識した瞬間だった。

「ええ、そうです。アマーリエ・モルシェンです。よろしくお願いします」

「あ、名字も捨ててないのね。じゃあ、ほんとパン屋さんねぇ」

「名字を捨てる?」

「冒険者は、名字を名乗らないの。腕一本で食べてく決意の表れね」

「そうだったんだ」

「でも、新しいパン屋さんならたしかに開店の準備もあるわよねえ」

「はい、すみませんが」

 話が通じる相手でよかったとほっとするアマーリエ。

「お休みはいつ?」

「白の日ですね。後、普段は鐘六つ(午後四時)に店を閉めますから、それ以降ならいつでも家にいると思います」

「わかったわ。パンを買いに行く時にでもあなたのあいてる時を確認するわね」

「はい、お願いします。えっと?」

「ああ、マーサよ。マーサ・ナサニエル。よろしくね、アマーリエ。あなたとは色々面白そうな話ができそうで楽しみだわ!」

「ちょっとぉ、その話、私も同席させてもらっていいかしらぁ?あんたを野放しにすると危険な感じがするのよねぇ」

 横で話を聞いていた南の魔女は、危険を察知して釘を差しにかかる。

「うっ、テイムに関してはわかってないことがいっぱいだから否定できないです」

「テイムだけじゃないでしょぉ。魔物の料理もでしょぉ?」

 ただ、南の魔女もまだリエの危うさ認識は甘い方であった。

「はい」

(イエッスサーじゃなくてやっぱイェスマァム!か?)

 内心で失礼なことをつぶやきながら、アマーリエは真面目な顔で頷く。

「あはは、嫌だ、魔女様。そんな危ないことしませんよ」

 店主が笑いながら大袈裟すぎだと止めに入る。

「ふっ、冗談じゃぁないのよぉ?色々とこの子はやらかしてるのぉ。魔法バカの私でもぉ、危ないと思うくらいにね?」

 南の魔女の静かな威圧に店主はコクコクと首ふり人形と化した。

「ということでぇ、シルヴァンのバッグ作り及びテイムアイテムに関しては、わたし立ち会いのもとで話をすることぉ。いいわねぇ?」

「「はい」」

 こうして、テイムアイテム開発については開発顧問(南の魔女)がつくこととなった。あとで話を聞いたノールが胸をなでおろし、マリエッタが参加表明したのは言うまでもない。


「そう言えば、芋っ娘、あんたはブラシ買わないの?」

「もう、アルギスさんが毛づくろい担当でいいですよ。ずっとここにいるんですよねー?」

 ニヤリと笑って意地の悪いことをアルギスに言うアマーリエ。

「なっ!?帰る時はリエにブラシを預けて帰るよ!」

「早く帰れるといいですねぇ~」

「ちょ!?リエ!?聞いた?シルヴァン!やっぱりうちの子になりなよ、リエって意地悪だよ!」

「シルヴァンには意地悪してませんから。ね~シルヴァン?」

 そそくさと南の魔女の後ろに隠れたシルヴァンだった。

「二人共ぉ、シルヴァンを困らせないのよぉ」

「「は~い」」

「さて、じゃあ次は魔導具屋ね。ほら、いくわよぉ~」

「はーい。じゃあマーサさん、また今度!」

「ええ、よろしくね!」

 三人と一匹は店を後にして通りに戻る。

「あんまり人通りないですね」

「こんなもんよぉ、アルバンは。ダンジョンが発見された当時はまだ規制がなかったから人はいっぱいだったけどねぇ」

 南の魔女の話に、アマーリエとアルギスは頷きながらも魔女の歳が気になったのは言うまでもない。

「今度またダンジョンの話も教えてあげるわぁ」

「お願いします」

「えぇ、もちろんよぉ。ちゃんと話とかないと、あんた行きたくなるでしょ?」

「えへへ」

「まあ、あんたがAクラス以上の冒険者を護衛に雇えるならぁ、行けなくもないけどぉ」

「銀の鷹の皆さんには速攻でダメ出しされました~」

「でしょうねぇ」

「シルヴァン、代わりに良い物見つけて来てね~」

「オン!」

 シルヴァンのその自信満々な様子に、南の魔女が顔を綻ばせる。

「ほら、あそこの角が魔道具屋よ」

 魔女の後について、店へ入った二人と一匹だった。

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