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ダンジョン村のパン屋さん2〜1年目の物語  作者: 丁 謡
第4章 一緒にお散歩
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 翌朝、広場の朝市に行ったアマーリエとシルヴァンは、近くにいた人にマチェット村とホーゲル村のまとめ役の人が誰か尋ねた。教えられた人物を見つけ、村の小麦を始めとする農作物や畜産物について話し合い、取り決めを終えた。

「さて、シルヴァン。次は自分たち用の買い物しようか」

「オン!」

 アマーリエは店先を覗き込んで、携帯食用と自分用に野菜や家畜肉、卵などを買い込んでいく。行く先々でシルヴァンに驚かれるが、シルヴァンは人懐こさを発揮してちゃっかりおまけを付けてもらっていた。

「愛嬌って大事よね」

「オン!」

 尻尾をフリフリ答えるシルヴァンに、買い物の時はシルヴァンを絶対連れて行こうと腹黒いことを考えるアマーリエだった。

 午後になると南の魔女とアルギスがパン屋を訪れ、そのまま、広場に向かう。

「んじゃぁ、芋っ娘はベルンから聞いてるとは思うけど、この村の歩き方の基準ねぇ」

 どこの観光協会の回し者かというぐらい流暢に村の成り立ちを交えて村歩きを説明し始める南の魔女。二人と一匹はウンウンうなずきながらその説明を聞いているがその様子はお上りさんと遜色なし。どちらも、都落ちしてきたのにだ。

「村役場に行きましょうかぁ」

「はーい」

 村役場に入った南の魔女とアマーリエは昨日作った荷物を送るため、転送陣の使用許可を取りに受付に向かう。アルギスとシルヴァンはとくに用事がないので村役場の中を自主見学中である。

「そう言えば、南の魔女様はどこ宛てに発送するんです?」

「自宅よぉ。内弟子が管理してるわぁん」

「なるほど」

「あんた、それ書いたら荷物渡して。かわりにやっとくからぁ。その間に開業日を連絡してきなさいなぁ」

「ありがとうございます。よろしくお願いします」

 見た目すごいが、中身は気の利く女子力の高い南の魔女様であった。アマーリエは南の魔女に書類と荷物をお願いして昨日担当してもらったヨセフを呼び出してもらう。

「あ、モルシェンさん、おはようございます」

「おはようございます、ヨセフさん。開業日が決まりましたので届けに来ました」

「ご苦労様です。こちらの書類に記入お願いします。引っ越しの方はどうですか?」

「はい。無事に終わりました」

「それは良かった」

 記入事項を書いてヨセフに手渡す。

「……今週の黄の日からの営業ですね。休日は白の日。営業時間は鐘一つ半(午前七時)から鐘六つ(午後四時)までですね。では早速村の掲示板で告知します」

「よろしくお願いします。あ、村の掲示板は?」

「村役場の玄関左側の待合室にありますよ」

「わかりました」

「他にも村に関連する告知がありましたらそちらの掲示板の利用ができますのでご利用ください」

「はい、ありがとうございます」

「村に関することでわからないことがございましたら、遠慮なく村役場の方に申し出てくださね」

「これからよろしくお願いします」

「こちらこそ。美味しいパンを楽しみにしてます」

 ヨセフに会釈して南の魔女のもとへ行く。

「魔女様、おわりました~」

「おつかれ。それじゃぁ……あの二人はどこ?」

「あれ?村役場の中を見てるっていってましたけど、どこ行ったんだろ?シルヴァン!」

「ウォンウォン」

 アマーリエの声に反応したシルヴァンが、鳴いて場所を知らせる。

「あっちですね」

 なぜか、待合室で村のおばぁちゃん達から構われまくっていたアルギスとシルヴァンだった。

「……こんな男前の神官さんがおるんなら、ちょくちょく神殿にお祈りにいかねば!」

「そだそだ」

「あはは。ありがとうございます?」

「この子もめんこいのう。ほれ、おばばの手作りの干し肉じゃ。いるかの?」

「オン!」

 どうやらシルヴァン、人間に愛想をふりまくと美味しいものがもらえると学習したようだった。

「……シルヴァン」

「!」

「ありがとうございます、うちの子の相手してもらって。シルヴァン、それは散歩の後でね」

「……オン」

「あんれ、南の魔女様~。お久しぶりじゃねぇ。お元気そうで良う御座った」

「んま!ミグルさん!久しぶり~。なぁに~相変わらず元気そうねぇ。ちょっとぉ、前よりさらにお肌つやつやしてない!?その若さの維持の秘訣を今度こそ教えてちょうだいよぉ」

「うふふふ、若い衆と楽しく話をすることじゃね」

「えぇ~!?若い子の魔力奪ってんじゃないの!?」

「……それ南の魔女様だけ」

 ボソリとつぶやくアマーリエ。

「なぁにぃ?なんか言ったぁ?芋っ娘?」

「いいえ~。初めましてみなさん。今度こちらでパン屋をやります、アマーリエ・モルシェンです。どうぞご贔屓に」

「おお、これはめんこいおなごさ、よう来ただなぁ。そげな細腕で、パン屋さ、つとまるかの?」

「あはは、大丈夫です。これで身体強化も使えますんで。後は店の手伝いも頼む予定です」

「したらば、トールんとこのブリギッテはどうじゃぁのう?あん子さ、家の手伝い以外の仕事さしてみたいとゆうとらんだったか?」

「ほいじゃあのう。パン屋さん、商業ギルドに届けはいつだすね?」

「今から行く予定です」

「そいじゃブリギッテにギルドに行くよう伝えねばの」

「パン屋の仕事ちゅうが、どういった仕事になるさね?」

「お客さんが選んだパンを袋に詰めて、お会計をする仕事ですね。だからパンの種類と値段を覚えてもらう必要があるかな。後、働く日にちや時間、お給金なんかは商業ギルドの方で詳細張り出す予定ですよ。あ、お昼の時間をまたぐ場合はお昼のまかないつけます。後、従業員割引でパンも買えますから」

「ほうほう、それはなかなか。募集は一人かね?」

「いえ、最低鐘二つ分働いてもらえればいいので時給で、都合の付く方を何人か雇えたらいいなと思ってます」

「ふむふむ。女衆が家事の合間に働けるということさね」

「はい。お小遣い稼ぎ程度になってしまうと思うんですけど」

「イヤイヤ、それでいいからというのも居るでな」

 ワイワイと話しているとヨセフが紙を持ってやってくる。

「あれ、皆さんお揃いで?おはようございます。どうされました?」

「おはようさん、ヨセフ。パン屋さんが来たって聞いたからねぇ。掲示板を見に来たよぉ」

「おや。皆さんお耳が早い。今から張り出しますよ」

「しっかり読んで、皆に知らせねば」

 ヨセフが掲示板に張り出したパン屋の開業と営業日のお知らせに、おばあちゃんたちが群がる。

「ほうほう、黄の日からかね」

「はい、作るのが私一人なんで、在庫を作る時間が必要なんですよ。焼きたてをアイテムボックスで保存するので焼きたてをそのままお出しできますよ」

「なるほどの」

「ふふ、色々美味しいパンがあるんですよ」

 アルギスが嬉しそうに教える。

「ほうほう。ジーンは頑固一徹に昔ながらのパンを焼いておったが、嬢ちゃんはハイカラなパンも焼くんかいの?」

「ええ、私一人なのでいきなりたくさんは出来ませんが、日替わりとか週替り、月替りでいろんなパンを出そうと思ってます。昔ながらのパンは定番品として毎日出しますよ」

「おお、そりゃ楽しみだわ」

「今日も朝市で近くの村の小麦を頼みましたし。」

「ほうほう、マチェット、ホーゲル、バーシュクの小麦かね」

「それぞれの村の小麦は特徴があっての。ジーンはマチェットとホーゲルの小麦を仕入れとったの。バーシュクの小麦は、商業ギルドの宿屋が仕入れてパスタにしておるよ」

「ああ、宿屋で出たパスタはバーシュクの小麦粉なんですね」

 おばあちゃん達からの情報をありがたく仕入れるアマーリエ。

「そうそう。宿屋の料理人が帝国の出での、お国の料理が出るんじゃわ。お国の料理が作れるとバーシュクの小麦を見て泣いて居ったのが懐かしいのぉ」

「へぇ~。今度、お話するんで、いっぱい帝国の料理のこと聞きますね」

「そりゃええ、美味しいものが増えるということだの」

「帝国の料理なら私も教えられますよ」

 アルギスが会話に混ざってくる。

「え!?」

「ただ神殿の質素なものになりますけど」

「作ってたんですか!?」

「神殿の賄いは見習い神官の仕事でしたからねぇ。少ない食料でいかに量を増やして美味しく作るのかを学びました。あれを知っていれば、飢饉の炊き出しや災害のときの炊き出しに役立ちますからねぇ」

「なるほど」

「なので、レシピ交換です。絶対リエの料理も教えて下さいね」

「う、はい。よろしくお願いします」

 すごい勢いで食らいついてくるアルギスに腰が引けるアマーリエだった。

「料理のレシピ交換会をするんかいの?」

「ええ、リエの料理も美味しいんです。国にいる兄に送ろうと思いまして」

「そりゃ、村の女衆も参加できるんかの?」

「別に女衆に限らず男衆でも子供でも場所と時間が合えばできると思います」

 美味しいものを広めるチャンスとばかりにアマーリエが安請け合いする。

「それはいいですね!村の料理講習会ですか!他にも何か催し事が出来そうなら、ぜひ村役場にご一報を!仕切らせていただきますよ」

 側で話を聞いていたヨセフが話に乗ってくる。

「あはは、そのときはよろしくお願いします。まだまだパン屋のほうがどうなるかわからないので、落ち着いてからになると思いますが」

「わかりました。商業ギルドの料理人さんにもお願いしてみますよ」

「それもいいですね」

 こうして、村を巻き込んでのイベントが勝手に増えていくのであった。

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