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キリのいいところにしたら、ちょっと短くなってしまいました。
「……無理だ。祓えん」
村の衆に呼ばれてパン屋にやってきたヴァレーリオ。アマーリエの黒いのをまじまじと見つめて言う。
「呪いじゃないのぉ?」
ヴァレーリオに祓えななら、呪いではないのかと首を傾げる南の魔女。
「呪い……なんだろうが、本人になんの異常も出とらん。そもそもだな、この黒いのをアマーリエ本人が出しとるんだから、根を断たねば無理だ」
呪いに似た何かとしかわからず、ヴァレーリオ自身も首をかしげる。
「じゃあ、根を断つ方法はぁ?」
「根深すぎて無理だな」
「大丈夫ですって。明々後日には絶対、消えますから」
そう言って屈託なく笑うアマーリエ。背後の黒いのは、ますます濃さを増していく。
本人の屈託の無さに比例して濃くなっていく黒いのに、居合わせた村の衆は、アマーリエからじりじり離れていく。
「「なんで明々後日?」」
「へっ。そりゃ、明々後日に、どう転んでも、面白いことにしかならないからに決まってるじゃありませんか」
ぐぐっと黒さが増す、アマーリエの黒いの。
「「「「「「……」」」」」」
たらたら冷や汗がこぼれ始める、居合わせてしまった人々。
「ほんとに!ちょーっと腹黒さが、表に出てるだけ!問題ない、問題ない」
「「「「「「(大問題な気がするんですが。腹黒いとか自分で言っちゃうの?)」」」」」
言葉に出来ず、お互いに顔を見合わせ、目で語り合う村の衆。
「ヴァリー、あたしぃ、心配だからパン屋に泊まるわぁ」
「そうじゃのぅ。どうせだから、西のも呼んで三人で泊まろうじゃないか。三人いれば大丈夫だろ(何かあってもきっと被害が分散されるはずだ)」
「は?泊まるって、どこで寝る気ですか?三人も」
ヴァレーリオの発言に、眉をしかめるアマーリエ。
「居間でぇ、雑魚寝するからぁ、大丈夫よぉ。野宿に比べたらぁ、大したことないわよぉ。あんたにぃ何かある方が怖いのぉ!」
南の魔女がメッとアマーリエを叱る。
「この冬場にぃ?暖炉に火を入れっぱなしで、いくらお三方が頑丈っていっても、風邪ひきますよ?年寄りのひ……」
「「アマーリエ?」」
「何でもありませーん」
「大丈夫だ。一晩ぐらい、なんとでも出来る」
「そうそう。神殿は、ネスキオちゃんに任せとけばいいわねぇ」
「そうだな。わしは、夕の祈りを済ませたら西のと一緒に、パン屋に戻る。また、後でな」
「へーい。じゃあ、夕飯作ってますよ」
留守番を言いつけられたネスキオは、盛大にごねまくったが、三人からプリンを与えられ(パン屋で買いしめた)ブーブー文句を言いながら、お留守番することになった。
そんなこんなで、パン屋初の泊り客になった、南と西の魔女、ヴァレーリオの三人。アマーリエは、自分が神殿に行ったほうが良かったんじゃと思いつつ、厨房で夕飯の支度を始めた。
夕食後に、南の魔女が、お土産のユグの村のチーズケーキを皆で食べようと取り出した。そのタイミングで、土の精霊の分体がパン屋にやってきた。
ヴァレーリオが、土の精霊にアマーリエの状態を確認するも、特に問題ないよと言われてしまう。
「問題ない……のか?あ、南の、わしは焼いてあるほうが好きだ」
「これくらいでいいかしらぁ?はい、ヴァリー」
「おう」
「私も焼いてあるほうが良い。精霊様がそう言うのなら、問題はないんじゃないか?精霊は、禍々しものに近寄れないんじゃなかったか?」
西の魔女が、南の魔女からベイクドチーズケーキを受け取りながら言う。
『そうだよ。パン屋さんの黒いのは、まじりっけなしに黒いだけだもの。禍々しくないよ』
こちらも南の魔女からベイクドチーズケーキを切り分けてもらい、ご機嫌な土の精霊の分体。
「「まじりっ気のない黒?闇属性ってことか?」」
ヴァレーリオと西の魔女は、頭を抱えて悩み始める。
「お茶いれましたよ。ほら、チーズケーキ食べましょうよ。私、スフレの方のチーズケーキ!問題ないって、付いてる本人がも言ってるんだから、大丈夫ですよ」
「芋っ娘ぉ!おだまりぃ!でもぉ、かなーり、黒いわよぉ?禍々しく無いってなんでよぉ???」
アマーリエにスフレチーズケーキを切り分けながら、怒ったり心配したりと忙しい南の魔女。
『大丈夫だよ。結界は反応してないから。村に対して悪意があったら、パン屋さん、今頃村の外に出ちゃってるもの。南の魔女!このチーズケーキ美味しい!』
「あらぁ!精霊様のお口にあって、よかったわぁ」
「ん?結界に反応したんでないなら、なぜこちらに?」
タイミング良くやってきた土の精霊に、ヴァレーリオが確認する。
『シルヴァンちゃんが修行で居ないから、パン屋さんが寂しいかもっていう話を砦で聞いて、来たの』
「土の精霊様、優しいなぁ。ありがとうございます!はい、チーズケーキ追加!」
スフレタイプのチーズケーキを切り分けて、土の精霊の皿に盛るアマーリエ。
『わぁ!』
「じゃぁあ、その黒いのはぁ、なんなのよぉ?」
「だから、ちょっとお腹の黒さが、にじみでてるだけですって」
ジト目で見てくる南の魔女に、アマーリエは肩をすくめて答える。
「芋っ娘ぉ!?」
「冗談抜きで本気ですって!」
南の魔女に揺さぶられながら、真顔で自分の腹黒さを肯定するアマーリエ。
「じゃあ、その腹黒さを誰に対して発揮しようとしてるんだい?」
西の魔女が、ケーキに舌鼓を打ちながら、真面目な顔でアマーリエに聞く。
「そこは内緒です!全ては明々後日に!」
「村に被害はないんだな?」
ヴァレーリオの念押しに、アマーリエが首を傾げて言う。
「あー、私の捧げものの残りを口にしなきゃ、巻き添えにはなりませんね、確実に」
「「「捧げものの残り?」」」
「ええ。残りがどうなるかと、それを食べるか否か、味覚と記憶力の程度で被害状況が変わるかも」
「アマーリエの捧げものと言えば……至高のパン?」
「ええ。私が全力で焼いたパンですよ。同じパンはもう焼けないですからね。そもそも今年最高のできの小麦粉も使い切っちゃいましたし。来年の小麦がどうなるかで、味変わりますからね」
「……最高のできのパンで何がどうなるのやら?」
西の魔女が首をひねる。そこまで食に執着もなく、舌も至って庶民派な西の魔女は、これから起こることがさっぱりわからないのである。
「食べなきゃ、問題ないですよ。それは自信をもって言えます」
食べなくて問題ないかと言えば、実はそうでもなかったりする。人というのは、やったことよりやらなかったことの方を後悔する生き物だからだ。
「「「……」」」
顔を見合わせる、三人。
「……ん?もしや、また、北神様が、残さず食べちまうってことか?」
アマーリエのやらかしたことを思い出して、ヴァレーリオが可能性を口にする。
「その可能性は、ありますね。捧げものをするときに、ちゃんとみんなで食べられるように、残してくださいねって、釘を刺すつもりでいますけど」
「「「北神様に釘を刺すって……」」」
「ふふふ、釘を刺す呪いっていうのが、別の世界にはあってですねぇ……」
ヴァレーリオには知恵者とバレているので、呪いの藁人形の話をわざとして、話を違う方向に持っていくアマーリエ。
魔法馬鹿な二人が、本格的に異世界の呪いに興味をもったため、明け方まで呪い談義に終止するアマーリエ達であった。大人のお泊り会が健全ではないのは普通だが、違う方向で健全じゃないお泊り会になったのであった。
そら豆の美味しい季節ですね。実家の父が育てたそら豆が届いたので、出汁醤油であっさりめに炊きました。
鶏と中華風に炒めても美味しいんですけどね。
いかり豆(油であげてる方じゃなく、炒ってある方)も大好きなんですよ。地味で滋味な美味しさが良い。
そら豆って、なんであんなふくふくしたサヤなんですかね?ベルベットみたいなお布団で寝る豆!って感じですよね。




