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ダンジョン村のパン屋さん2〜1年目の物語  作者: 丁 謡
第31章 去る者、訪れる者
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 居間に戻ったアマーリエを見てマリエッタがボソリという。

「リエ、あんたすごく悪党面になってるわよ」

「あんた、また誰か泣かせたでしょぉ」

 南の魔女が、ジロッとアマーリエを見て言う。アマーリエがアルギスを大泣きさせた時の顔とそっくりだったからだ。

「マリエッタさん!私なんて、小物ですし!南の魔女様ー、いい女は男泣かせなんですよー」

「おとこのひとなかせたの?リエちゃんがコモノレベル?いやいや、そのまえにあくとうはひていしないんだ……」

 シルヴァンがブツブツとつぶやく。それを耳に挟んで、魔法馬鹿ではあるが一応常識人二人が、子どもの教育に問題とキッとアマーリエを見る。

「「リエ!」」

「美容講座」

 口で端的に言い、目でお小言無用というアマーリエ。

「「ウッ」」

「ちょっと仕返ししただけですし。問題はありません(ダールさんもご領主なだめるのに大変かもだけど、休暇期間定めないとか同罪だよ!)ないったらない!」

「仕返ししたの?」

「どんな?」

「ただのお菓子抜きですよ」

「お菓子抜き?」

「なぁんだぁ」

 マーリエの肩をすくめる様子にホッする二人。シルヴァンの方は、アマーリエに本気でお菓子抜きって言われたらその場で五体投地で謝るなと考える。

「でしょ?ファルさんぐらいお菓子好きじゃなきゃ、さしてダメージなんてありませんよ」

 続く言葉に二人は「あ゛?」という顔をする。

「つまり、ファルぐらいお菓子が好きな人にやったのね?」

 アマーリエの性格を考慮するに、ダメージの入らない仕返しなんかしないと判断したマリエッタ。

「それぇ、発狂するんじゃないのぉ?」

 アルバン村神殿生活の頃、毎日幸せそうにお菓子の時間を決めて食べているファルを見ていた南の魔女は、それができなくなった時のファルを想像して身を震わせる。

「「やりすぎ!」よぉ!」

「大丈夫ですよ。どうせ、私以外がお菓子送るでしょうし。問題なんて、欠片もないない」

 アマーリエは、ダールに頼まれてコッホが、習い覚えたお菓子を送るだろうと考えている。アマーリエの知らないところであるはずのブラウニーさん達も、領主へお菓子支援をするだろう。ウィルヘルムの仕事が滞って余波を食らうのはブラウニーさん達なので。

 お菓子抜きと言っても、ウィルヘルムへの胃袋へのダメージほぼなく、アマーリエを怒らせたかも!どうしよう!?ぐらいなのである。物理的距離のせいで、相手の顔色がわからず、悶々とすることになるのだ。

「仕返しの相手ってご領主様なのね?」

「ウィルちゃんなのねぇ」

 お菓子を送るという言葉に、誰のことかあたりをつけた二人。

「「はぁ」」

 続けて大きなため息をつく。

「リエとご領主様なら問題ないわね」

「問題ないわねぇ。子どもの喧嘩ってだけだものぉ」

 仕返し相手がわかって、興味をなくす二人。

「まあ、いいわ。ほら、リエ!美容講座の続き!」

「どんな事するのよぉ?」

「……あわれなり、ごりょうしゅ」

 あっさり見捨てられたご領主に手を合わせるシルヴァンであった。その後やってきた黒紅と一緒に、シルヴァンはお弁当を持って森に採集に行く。美容には興味がなかったので。

 残されたアマーリエは、魔女二人に冬の間の予定を決められてしまうのであった。



 村で冬を越さない冒険者たちや訪問者達は、近隣の村々の合同収穫祭を大いに楽しんだあと、アルバン村を去ることになった。

 空の青が高くなったある秋の日。村の門の前には大勢の人が集まった。

 今日、村を去る【銀の鷹】やアルギスと南の魔女にネスキオ、王都の歌劇団の三人、クレウサの冒険者パーティと【黒の森の梟】を見送るのだ。

「皆さん、道中、おきをつけて!」

「また、来春には来てくださいよ!」

 村人たちが、それぞれ仲良くなった訪問者たちに声をかける。

「アル坊、しっかりの」

 目がうるうるしているアルギスに、ヴァレーリオが苦笑しながら、その肩を叩く。

「うぅ、ヴァレーリオ様、本当に帰らないんですか?」

「俺はここでカレー道を極める!それが俺の使命だ!」

「シクシク。それじゃ、スパイス送りますね」

「おう、頼んだぞ。俺もできたカレー粉を送ってやるから楽しみにな」

「ヒック、はい」

「アルにー、なみだふいて」

 シルヴァンが、アルギスにハンカチを渡す。

「ありがとう、シルヴァン。シルヴァンは優しいね」

 感激でさらに、涙が出るアルギスに、アマーリエとそばにいたブリギッテが苦笑する。

「アルギスさん、月に二回村から色々送りますね」

 ブリギッテが、その場の空気を変えるべくアルギスに話を振る。

「うん、アマーリエ、ブリギッテさん、楽しみにしてるね。私も国から珍しいもの送るからね」

「楽しみにしてます!」

「あんちゃんによろしく!」

「うん」

 そう言ってアマーリエたちに手を振って、銀の鷹の馬車に向かうアルギス。ブリギッテは父親に呼ばれ、黒の森の梟に挨拶しに行く。

「南の魔女様もお元気で!」

「あたしはぁ、アルギスさん送り届けたらぁ、すぐ戻ってくるからねぇ」

「僕も!」

 見送りの村の衆の言葉に応えた、南の魔女とネスキオ。某州元知事のいい笑顔がアマーリエとシルヴァンの心に浮かんだ。

「……こわさをかんじるのはなぜ?」

 ポツリと呟いたシルヴァン。

「「「え?」」」

 戻ってくるという話を聞いてなかった村人が目を見開く。

「美容講座を逃すわけ無いでしょぉ」

 その言葉に、アマーリエはげっそりする。

「南の。それも結構だが、魔の山の調査も忘れないでおくれよ」

 実は村に残る事になっている西の魔女。偉い人は、いろんなお仕事を抱えているのである。

「わかってるわよぉ、西のぉ!仕事はちゃんやるわよぉ。美容講座はぁ、頑張ってるあたしへのぉ、ご褒美!」

 フンスと鼻息荒くのたまう南の魔女。

「何だ、魔女様。仕事もあるんだ」

「あるわよぉ。でなきゃ、こんな雪深いところに戻ってこないわよぉ。あたしぃ、寒いの苦手なんだものぉ」

「雪が溶けてからでもいいような?」

 雪山で遭難するんじゃないのかとアマーリエは首をかしげる。

「そういう訳にもいかないんだよ。魔力溜まりの件があるからね。漆黒様にも手伝っていただける今、なるべく早く見ておかないとね」

「そうなんですね」

 西の魔女の真面目な言葉に、漆黒が手伝うのなら大丈夫かと頷くアマーリエ。

「ゲオルグ様、職人の皆さん!魔物の暴走(スタンピード)が終わったら、レジェンド装備のことよろしくおねがいしますね!」

 歌劇団副支配人のモーリシャスがゲオルグと職人たちの手を握って、別れの挨拶をする。

 装備たちを王都の歌劇場で披露するための方法は、まだ考えついていなのである。

「おう。王都での出し物を、息子夫婦が楽しみにしておるから、そなたもしっかりの」

「はい!皆様に楽しんでいただけるようがんばります!」

「みなさんにはお世話になりました。また、絶対村にきますからね!」

「俺もだ。題材に事欠かないからなぁ」

 音楽家(ウェスト)作家(シダー)も村人と別れを惜しむ。

「私達もなるべく早く王都に拠点を作って、ここと行き来しやすくするからね。美容講座楽しみにしてるわよ」

 アマーリエに耳打ちするマリエッタ。

 やる気満々のマリエッタの言葉に、アマーリエは首をかしげ、こっそりマリエッタに聞く。

「転移陣を家の中に作って大丈夫ですか?」

「大丈夫よ。ご領主には許可をとったから、あとは王様に許可をもらうだけよ。実績があるから許可は下りるはず。またね、リエ!」

 そう言って、マリエッタはアマーリエを抱きしめて、馬車の中に入っていく。

 王様という言葉に嫌な予感を覚えるアマーリエ。

あの(、、)自由な方たちの許可ですか?下りると思うけど、やめといたほうがいいような気がしてきたなぁ。ねぇ、ベルンさん、内緒で転移魔法陣は流石に、だめですよねぇ」

 そばにいたベルンに、こっそり話を振るアマーリエ。

「それはだめだろ。認可してもらったほうが色々問題が少ないからな」

 ベルンが、真面目な顔で答える。

 ベルンやマリエッタは、転移陣を扉に彫る際の常識的な問題にしか考えが至っていない。転移陣の運用における安全面や信用面と言ったことだ。

 アマーリエの方は、やんごとなきお方たちの行動力から、非常識な方の問題にまで、すでに思考が及んでいる。一縷の望みは、城に戻った女官長(マルガレーテ)がやんごとなきお方たちの抑止力となれるかどうかである。

 そこが今ひとつ読みきれないアマーリエ。

「ベルンさん、強く生きてくださいね(私は巻き込まれないようにしたいが無理だろうな……トホホ)」

 ポロッと口をついてでた言葉に、アマーリエがしまったという顔をする。

「はぁ?どういうことだ、リエ?」

 意味はわからないが、よろしくない感じを受けて眉をひそめるベルン。

「ふふふ、私達仲間ですから!その時が来たら、わかりますよ。私も心の準備をしとこ」

 何かを悟ったようなアマーリエの笑みに、背筋が凍るベルン。

「何の仲間だ?どういうことだ、リエ!?」

 アマーリエの肩を掴んで揺さぶりはじめるベルンを、ダリウスが慌てて引き剥がす。

「落ち着けベルン!どうした、リエ?」

「生きていくには、心の強さが必要だって言う話ですよ」

「そりゃあ、冒険者をやるには必須だが」

 アマーリエのごまかしに、うっかり乗りはじめるダリウス。もちろんベルンは騙されない。

「違う、ダリウス!こいつは、なんか、またろくでもないことを考えついてる!」

「嫌だなぁ、ベルンさん。私()やらないし。できることなら全力で避けたい」

「おーい、ベルン!そろそろ出るぞ!」

 馬車にいたダフネがベルンに声をかける。

「ちょっと待て!リエから聞き出せなきゃ、心の準備もなにもない!寝られなくなるだろうが!」

「寝られないって、ベルンさんそこまで弱くないですよ。優しい南の魔女様もいるんだし!」

「お前!抉りにきてるだろ!」

「気の所為気の所為。ほら、皆さん行っちゃいますよー」

「ほら、ベルン行くぞ」

「くっそ!マリエッタ!転移陣を拠点に作ったらどうなるのか、もう一度、王都までの道々で考え直すぞ!」

 先に馬車に乗っているマリエッタに向かって叫ぶ、ベルン。

「「「「皆さんお気をつけてー」」」」

 ダリウスに引っ張られて馬車に乗るベルンを、いい笑顔で送り出したアマーリエと村の衆であった。









今年も一年、お付き合いくださりありがとうございます。

来年もよろしくお願いいたします。

新しい年が、みなさまにとって良いものとなりますように。

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― 新着の感想 ―
[一言] 確実に王妃様たち女性陣が毎日のようにここに集うことになるな。 男連中は、相手にもならないっと。
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