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ダンジョン村のパン屋さん2〜1年目の物語  作者: 丁 謡
第27章 本気の鬼ごっこ!?
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 日が傾き始めた頃すべての鬼ごっこは終わり、大会委員も各鬼ごっこの集計を済ませ賞品授与式を始める。

「……では次はへそ踏みの優勝組。『ちび台風』!優勝賞品はあとからでも選べるからな!」

「優勝おめでとう!黒紅様、シルヴァン、チビ達もよくがんばったのぅ」

 ゲオルグは、大会委員が作った賞状と賞品目録をちび台風に手渡していく。シルヴァンは受け取ってすぐ自分のアイテムバッグにしまい込み、黒紅やチビ達は賞状を両親の方に向けて見せている。

 それを見て親や周囲の大人たちは、笑いながら子どもたちを称え拍手をする。

 大会委員は個人の健闘賞や芸術賞など次々発表し、ゲオルグがせっせと賞状と賞品を手渡していく。

「へ〜、シルヴァン達勝ったんだねぇ」

「漆黒様はスタチュー遊びの芸術賞を獲得したみたいですね」

 漆黒は手渡されたペンダントを辰砂につけて、抱きしめている。

「「「あらあらあら」」」

 本部に居たアマーリエたちは、片付けを始めながらその様子を見る。

「リエ、温泉村に行くのか?」

 ベルンが優勝賞品のうちの一つ、温泉村の宿泊旅行券があったのを思い出して聞く。

「さあ?シルヴァンが行こうって言ったら行くかもしれませんけど」

「廉価版魔導コンロはないだろ?お前の家にはもっといいのがあるんだし」

 首をかしげるアマーリエに、ベルンも首をかしげもう一つの優勝賞品を指摘する。

「いや、ダンジョンに行くのなら欲しいかもしれませんよ?買うよりただで貰えるなら欲しがりそうだし」

「シルヴァンは、コメが炊けるからなぁ」

 パトリックが片付けを手伝ながら、アマーリエの意見もありえるとうなずく。

「あの子、コメを炊くどころじゃないわよ?ちょっと見ない間に料理スキル上がってるし。この間、ヴァレーリオ神殿長がスキルの確認したらレベルが上ってたのよ」

 一緒に片付けをしていたマリエッタが、呆れたように付け加える。

「え、そうなんですか?ヴァレーリオ神殿長ったらいつの間に……」

「神殿で、アルギスさん達が昼食作るの手伝ったりしてるわよぉ。それにヴァリーの調薬も手伝ってるからなのか調薬スキルも付いてたしぃ」

 アルギスの護衛をしながら救護所にいた南の魔女が、会話に加わる。

「南の魔女様もシルヴァンのスキル判定用紙をご覧になったんですか?」

 ファルが目を丸くして確認する。

「あの子ったら、見せびらかしたのよぅ。あたしたちにぃ」

「あたしたち?」

「あたしとぉ東と西のにぃ」

「僕には見せてくれなかったんだよねー」

「お前に見せる意味はないだろ」

 アイスクリームを食べながら、ぶすっというネスキオに突っ込むアルギス。

「訓練の成果を見せたかったのよぅ、あの子ったら。いろいろスキルも増えてたし、レベルも上がってるわよぅ」

 南の魔女が肩をすくめて、アマーリエに伝える。

「あらまー、うちの子がどんどん多才になってくなぁ」

「まあ、魔狼だし、長生きするらしいし、なんでもできたら困らないんじゃないかな」

 かくれんぼ会場の回収作業を終え、本部でぐったりしていたグレゴールが会話に加わる。

「確かに。私より長生きになるはずですから、後々困ることがなければ何でもありですよね」

「うーん、そうなんだがなぁ?」

 常識人ベルンが、最近の常識と非常識の境界の曖昧さに眉をしかめ、うなり始める。 

「ベルン、悩んだって無駄よ。ハゲるわよ」

 もうひとりの魔法以外は常識人マリエッタの非情な言葉に、慌てて頭頂部を抑えて身震いするベルンであった。

「はぁ、片付いた。あとは屋台とテントを片付けたら終わりー。大怪我する人もなくて、無事に鬼ごっこ大会も終わったかなぁ」

 若いくせに腰を叩いて言うアマーリエに、ファルが苦笑しながら疲労回復の魔法をかける。

「ノール殿が宙を舞ったのには肝が潰れるかと思ったがな」

「ああ、あれね。ベルンさん達はノール殿が宙に舞う時はダンジョンに潜ってて、今日初めてみたんだっけ?」

 救護所の片付けを終えたアルギスが、ベルンの言葉を聞いて、笑いながら尋ねる。

「ああ。アルギスさんは初めてじゃないのか?」

「毎回見てるよ。すごく高く舞うんだよね。これで四回だっけ?」

「ええ。四回ねぇ。彼だけなんでかぁ、いつも宙を舞ってるわねぇ」

 アルギスの言葉に南の魔女が顎に手を当てて、首を傾げながらうなずく。

「……そうなんだ」

 パン屋に居て知らなかったアマーリエもポツリと漏らす。

「毎回、黒紅様に確保されてるよ。一度はその黒紅様に飛ばされて、慌てて回収されてたけど」

「「「「「はぁー!?」」」」」

 日中仕事で、神殿前の鬼ごっこに参加していなかった人たちが目を丸くする。

「村で噂になってなかったよね?」

「うん。聞いてない」

 アマーリエの言葉にメラニーがうなずく。

「「なんでだろう?」」

 ノールが宙を舞うのは、アルバン村ではすでに日常となり噂の種にもなっていなかったのであった。なにせ、やらかしたのが漆黒と黒紅、シルヴァンという人とは違う存在だから、そういうものかで見ていた人たちは済ませてしまったのだ。

 非日常が、日常にすり替わった瞬間である。

「オンオン!」

『主ー!』

「はい、シルヴァン、黒紅ちゃんお疲れ様!鬼ごっこを堪能したみたいだね!」

 アマーリエは、飛びついてきた二匹を身体強化して受け止める。

『うむ!おおいに楽しんだ!大祖父様も大祖母様も楽しかったそうじゃ!』

「あれ、参加したんだ?」

『うむ、へそ踏みになっ!』

「そ、それはそれは……」

「……対戦相手のスキルレベルがァ、馬鹿みたいに上がってそうよねぇ。ヴァリーもぉスキル確認で忙しくなりそうねぇ」

 言葉が続かないアマーリエに、そばで聞いていた南の魔女が手で顔を覆う。

「シルヴァン、優勝賞品を何にするか決めたのか?」

 気になっていたベルンが、シルヴァンに尋ねる。尋ねられたシルヴァンは画像念話でベルンに答える。

「やっぱり温泉村か。いつ行くんだ?」

 ベルンの質問に首を傾げて、黒紅の方を見るシルヴァン。

『そうじゃ、主!皆で温泉村宿泊券にすると決めたのじゃ!皆の家族と一緒に温泉旅行じゃ!』

「そうなんだ。困ったなぁ、私、大隠居様に温泉禁止令出されてるからなぁ。一応隔離対象だしー」

「……リエ、顔が笑ってるわよ」

 ちっとも困った顔をしてないアマーリエに、呆れた顔をしてマリエッタが突っ込む。

『そうなのか?じーじに相談してくるのじゃ!』

 そう言って、パタパタと優勝賞品授与式を終えたゲオルグのもとに飛んでいく黒紅。

「相談?リエ、あなたゲオルグ殿が断れないのをわかってて、わざと黒紅様に現状を言ったわね?」

 マリエッタが渋ーい顔をしてアマーリエを見る。見られたアマーリエの方は他所を見て口笛を吹いている。

「……芋っ娘ぉ、あんたぁ、シルヴァンそっくりよぉ」

 アマーリエの両頬をうにっと引っ張る南の魔女。

「いっしょにすみゅとにりゅんれしゅー」

「キュゥ」

 ワイワイやってる南の魔女とアマーリエを置いて、ゲオルグのところに行き、何やら話しかけている黒紅に視線をやるベルン達。

「あ、ゲオルグ殿、頭抱えた」

「フリードリヒ殿もな」

「……ゲオルグ殿に断れんだろ?」

「ある意味、脅迫だよねー」

「本人に脅迫の意識はなくてもねぇ」

 ベルンがつぶやき、グレゴールが肩をすくめ、マリエッタがため息をつく。

「こうして、また周りがいろいろ巻き込まれていくんだな」

 テントを片付け終えたダリウスが、未来予想する。

「ダリウス、他人事みたいに言ってるけど、確実に私達も巻き込まれるわよ」

「いいじゃないか、マリエッタ。温泉!俺たちも久しぶりにのんびり湯に浸かろう」

「だよな。前向きに考えよう」

「……ベルン」

 巻き込まれること前提で、温泉を楽しむことに決めたベルンとダリウスに、がっくりするマリエッタ。そこへ鬼ごっこに参加していたダフネ達親子組が戻ってくる。

「お腹すいたー!」

「「「ダフネ」」」

「へそ踏みは冒険者ギルド組に負けたー。今度は絶対勝つ!影踏みは三位になった!リエ!食料いっぱいもらったから、美味しいもの作って欲しいぞ!」

「おかえりなさい、ダフネさん。三位おめでとう!いいよ~、帰ったら美味しいもの作るよ」

「やった!神殿の厨房借りよう!宴会だ!ファル!アルギス!神殿長に許可もらって!」

「ちょっ!?ダフネ?」

「いいですよー」

「アルバートはかくれんぼで三位、母さんも高所回避で三位だったんだ!大丈夫、この人数ならまかなえる!」

 ダフネ親子チームは食料品狙いで鬼ごっこを頑張ったようである。

「ブクク。大量の食品があっという間に食い尽くされちまうな」

「アイスクリームもまだありますから、食後に出しますよ。さ、閉会式が始まったみたいですよ」

 アマーリエの言葉に、閉会を告げるヨハンの方を皆が向く。

「みなさん!お疲れ様でした!ぜひまた鬼ごっこ大会を開きましょう!これで第一回四村共同鬼ごっこ大会を閉幕いたします。解散!」

 こうして、皆鬼ごっこの余韻を楽しみながら、それぞれの村へと帰っていったのであった。

鬼ごっこ終了です。


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