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へそ踏みの図を入れてみました。これで少しはわかりやすくなったでしょうか?
選抜騎士組が開始位置に、アーノルドを先頭にノール、グゥエン、カークスウェル、スケルヴァン、ミカエラの順に並んでいる。
古代竜の方は最初の島に月白、後攻自陣に代赭が迎撃体制で待ち、一番大きな島に漆黒、それに向き合い挟み撃ちするかのごとく緑青、遊撃にドラコが位置する。
「ティールさん、ヘソ踏みでは定番となったかたちですね?」
実況のモーリシャスがそれぞれの配置を見てティールに話しかける。
「ええ。今回は奇をてらうことなくタンカーのアーノルドと重剣士のノールが最初の抑え役ですな。古代竜様の方はそれを見越して、ご年配のお二方に二人の相手を任せたようです」
「なるほどなるほど」
「二人が抑えているうちに残りの四人が先へ進み、おそらくグゥエン、カークスウェル殿が先にいる漆黒様と緑青様を抑えにかかり、スケルヴァン殿とミカエラがへそを踏みにいく形になるでしょう」
実況のモーリシャスの質問に、ティールがこの先の展開を推測して話す。
「皆さんよろしいですね?では、開始!」
ヨハンの声に、アーノルドがすぐさま代赭を抑えにかかり、ノールは島と自陣にまたがって月白と組み手争いを始める。
アーノルドとノールが月白と代赭を抑えている間に、グゥエン、カークスウェル、スケルヴァン、ミカエラが先へと駆け抜ける。
「おっと!?漆黒様が騎士二人を相手取っているのか!?」
「はぁ、さすがですな。若手一番のグゥエンと領内で右に出るものはいないと言わしめた重剣士のカークスウェル殿を赤子のようにいなしておりますな。魔法騎士のスケルヴァン殿がどこまで一人で緑青殿を抑えられるかです」
漆黒が舞うように、カクさんとグゥエンの攻撃を交わしつつ進路を妨げる。スケさんの方は、緑青の魔の手を必死に躱している。ミカエラはそのスキマを必死で走り抜け自陣を駆け抜けて、後攻の陣へと入り込み、ドラコと相対する。
「ウグッ!?」
「へ?」
急に腹を抑えてしゃがみこんだドラコに驚くミカエラ。それでもミカエラは、しゃがんだドラコに腹痛の際の簡単な回復をかけつつ、へそを踏みにいく。
「痛いの痛いの飛んでいけ!へそ踏みましたぁ!」
「勝者!先攻選抜騎士組ッ!」
審判のジャッジを確認してヨハンが勝者宣言をする。
「ありゃっ」
「ドラコ!?」
「あらあら」
「何事だ?」
「申し訳ありません!急に腹が痛くなりまして!ちょっと花を摘みに行ってまいります!」
尻を押さえつつ、平謝りしながら退場するドラコに、首をかしげる古代竜組。古代竜の血脈が早々腹を壊すとかないからである。
「ん?確か、あの竜人、アマーリエの屋台でアイスクリームをやたら食して居らなんだか?」
「ええ。売り子のお嬢さんにお腹を壊すとかなんとか言われていたような?」
ゲオルグとマルガレーテが原因に思い至り、げんなりした顔になる。
「ふっ、さすがアマーリエ。なんだかんだと騎士の味方だな。まさに領民の鏡」
「あなた!それ冗談ですのよね?」
「もちろん冗談だ」
「真顔で言わないでくださいな」
「真顔で冗談をいいたくもなる心境なんだ」
いろいろ頭痛の種を抱えたフリードリヒが、ルイーゼ・ロッテの抗議をニヒルな笑みを浮かべて流していく。
「何やら運良く勝機を物にした選抜騎士組!次は守備ですね」
「ええ。知力体力時の運!運も実力の内です。これを弾みに守備でも頑張ってもらいたいものです」
実況と解説はのんびり攻守交代について感想を言い合う。
お花摘みから戻ってきたドラコに、月白が再度回復魔法をかけて万全を期して攻撃体制に移る。漆黒を先頭に緑青、ドラコ、代赭、月白と並ぶ。
それを見て選抜騎士組の方は最初の島にカークスウェル、その向かいの自陣にグゥエンとスケルヴァンを抑えに置く。アーノルドとミカエラが大きな島で待ち、ノールはその向かいの自陣で待つ。
「選抜騎士組は、三人で抑えることにしたようですね?」
「先ほど、漆黒様に二人とも抑えられたのを考慮したんでしょうな」
「この場合の勝機は?」
「唯一の竜人であるドラコ殿をすばやく戦闘不能にすることですな」
「なるほど、後ろに控える、アーノルドさんとノールさんが自陣に引き込むか、外に出さないといけないわけですね」
「ええ。そしてそのスキを突かれて、代赭様と月白様に抜かれてもならんのですよ」
「ふむふむ。ではドラコさんと月白様代赭様の間を開けることも必須になると」
「ええ、そこは最前を守る三人の仕事ですな」
実況と解説の話になるほどとうなずき、選抜騎士組に期待の目を向ける観衆たち。
「準備はよろしいですか?では、後攻始め!」
ヨハンの声に、漆黒が自陣方向に、緑青は島方向に飛び出す。それを間髪入れず、グゥエンが漆黒に向かって、緑青を巻き込めるように勢いよく飛び出す。それを察したカークスウェルは、巻き込まれるのを避けるために自陣に戻る。
漆黒はグゥエンを躱して体勢を崩したところで、スケルヴァンに敵陣に引き込まれ失格に。緑青はグゥエンにぶつかって、一緒に外に出て失格になる。
「「「「おおおおお!」」」」
いきなりの古代竜二人の失格に盛り上がる観衆達。ゲオルグとフリッツもも立ち上がって拳を上げている。
「ぬぁっ!?ドラコ殿が抜けたぞ!」
そのスキを見逃さず、ドラゴが島を抜け先に出る。続いて代赭が行こうとするもカークスウェルが島に戻って止めにかかり、続く月白もスケルヴァンが止めにかかる。
走ってきたドラコを、自陣からノールが押し、アーノルドがそれを受け止めてそれを外に投げ出し、ドラコを失格にする。
カークスウェルを外に出した月白が続いて、体勢の甘くなったノールに組み付くも、ノールはなんとか踏ん張って四つ組になって月白を止める。
アーノルドは、スケルヴァンを抜けた代赭を止めにかかる。スケルヴァンの方は慌てて自陣を走り、代赭を追いかける。
「うわぁお!?」
「ぎゃぁ!?大爺様!?手加減!?」
ノールが月白に飛ばされるのを見た黒紅が、慌てて身体を大きくしてノールを確保に飛んでいく。
「すまんすまん」
「お、ノール様またとばされましたね!」
「アイツまた、飛ばされたか。あ、結界に跳ね飛ばされやがった!?ノール!おとなしく黒紅様に捕獲してもらえよ!絶対暴れるなよ!落とされるから」
「あれで四回目ですかね?」
「私が見てる分には確か。……漆黒様に一回、黒紅様に一回、シルヴァンに一回だったかな?」
「大丈夫なんじゃな!?」
のんきに話すモーリシャスとティールに、ゲオルグが目をむく。
「大丈夫ですよ、ゲオルグ様。いつものことです」
神殿でのへそ踏みをよく見学している人たちはいつものことと囃し立て、そうでない人々は立ち上がって絶句状態である。
「ノールさん!後で骨は拾いますー!」
みなの意識が、空飛ぶノールに奪われた瞬間、ミカエラがすかさず月白に向かって体当りして、自陣に引きずり込む。それに驚いて力が緩んだ代赭をアーノルドが外に出す。
「後攻陣全滅!勝者選抜騎士組!」
ヨハンが選抜騎士組の勝利宣言をする。そのタイミングで、黒紅がノールを確保する。
「「「「「「おおおおおおおおお!」」」」」」
騎士たちの勝利とノールを見事にキャッチした黒紅に、観衆から歓声が上がった。
「騎士殿すまんの?大丈夫か?」
降りてきた黒紅とお姫様抱っこ状態のノールに声を掛ける月白。
「はい。黒紅様、ありがとうございます」
『いやいや、こちらこそ毎度すまぬの』
「いえ、ちゃんと守っていただいてますから、問題ありません」
姫抱っこされたまま、キリッとした顔で言うノールに頷く黒紅。
「いつまで抱っこされているのです。あなた早く降りなさい」
「うわッ、はいぃ、ただいま!」
ノールの後ろ襟首を掴んでドスを効かせた顔でいう緑青を、黒紅が尻尾でピシャリとはたきこむ。
『緑青!手加減と言うたじゃろ!』
「むぅ」
「くすくす。緑青ちゃん嫉妬は見苦しいわよ」
『ぬ?嫉妬なのか緑青?』
代赭にからかわれる緑青に真顔で聞く黒紅。
「嫉妬か、緑青!若いのぅ」
「黒紅はまだお嫁に出しませんからね」
月白までからかいに入り、漆黒がにこやかな笑顔を緑青に向ける。
「はいはい、皆様。次の試合のために会場整備しますから、退場してくださいねー」
ヨハンが、粛々と次の試合の準備を進めるのであった。
次で鬼ごっこは終わるはずー?




