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ダンジョン村のパン屋さん2〜1年目の物語  作者: 丁 謡
第27章 本気の鬼ごっこ!?
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章の組み直しをしました。ここが最新話になります。

 スタチュー遊びの中に、漆黒と黒紅の姿を見た領主一行は、その遊びの行方を見守る。

「漆黒様は人型で、黒紅様は竜のままのお小さい姿なんですね」

「ああ。黒紅様は、あの姿のほうが動きやすいんだそうだ。漆黒様は芸術賞も狙ってるんだろうね。賞品は細工師が技術の粋を凝らしたアクセサリーだと言っていたから」

 ルイーゼ・ロッテの質問に、西の魔女が答える。

「ええ。頑張って、私への贈り物にすると言ってました」

 にっこり微笑んで、辰砂がノロケを口にする。

「あらあら」

「まあまあ」

「「素敵ですわね」」

 いくつになっても恋バナが楽しい女性陣であった。

「漆黒様の姿勢はなかなか様になっておるの」

 あごひげをしごきながら、周りの男達よりも立ち姿が様になっている漆黒を見て、つぶやくゲオルグ。

「そうですね。ん?銀の鷹のダリウス殿の立ち姿もかなり様になってますよ」

 フリードリヒがゲオルグのつぶやきを拾い、改めて男たちのポージングを検分していく。

「ああ。あの二人は、南の魔女と伝説(レジェンド)級の装備達に姿勢の指導を熱心に受けてたからね。私に言わせれば、装備達に美的感覚があったことが驚きだよ」

 西の魔女の相変わらずツッコミどころ満載な言葉に、全てはアマーリエにと視線を交わしてうなずきあう、ルイーゼ・ロッテとマルガレーテであった。

「お?シルヴァンも参加しておるのか?」

 狼型のまま、シルヴァンなりにいろいろとポージングし、尻尾も揺らさず頑張っているのを見て、ゲオルグがくすりと笑う。

「あの子達がスタチュー遊びを始めたからねぇ。あの中じゃ、ベテランだよ。今回は参加しないようだが、かくれんぼも得意だね。隠形のスキルもグレゴールが索敵できないほど上がってるよ」

 ちび台風がかくれんぼ参加にしない理由は、索敵レベルの高いグレゴールでも探せないのに誰が探せんのよ、勝負になんないじゃんっていう大人の事情であった。グレゴールも、回収作業が大変だから参加しないでお願いと頼み込んだのである。

「なんとまぁ。あれは何になるつもりなんじゃ」

「ブフっ。うちの隠密にスカウトしますか?ダールの奥方が喜んで仕込んでくれそうですが」

「やめとけ。ダールに何をされるかわからんじゃろうが!あれはアマーリエ並みにやらかすからの」

 シルヴァンによる黒紅お持ち帰り事件が、記憶に生々しいゲオルグは、フリードリヒの冗談を真顔で否定する。

 しばらくして漆黒達の回が終わる。

『大祖父様〜、大祖母様〜見てくれたか?』

「おお、紅!よく頑張っておったの」

「二回も救出してましたね!」

捕縛役(ねこ)から助け出すのは、得点が高くなるのじゃ!』

 仲良く話す古代竜達を見て、あまり人と変わらんのだなと内心でひとりごちるゲオルグであった。

「オンオン!」

「黒紅ちゃん!次のとこいくよ~」

 シルヴァンとちび台風が黒紅を誘いに来る。

『む、次の会場にいかねばの!妾たちは、次に参加するへそ踏みの会場に移動するが、父上たちはどうするのじゃ?』

「儂らもどれかに参加したいんじゃが?」

「そうですね。面白そうですし」

 黒紅の言葉に、月白と緑青が参加したいと言い始める。

『ぬ。力加減が必要になるぞ、緑青』

「あなたと一緒にしないでください、黒紅」

 心配そうに小首をかしげる黒紅を、鼻で笑う緑青であった。

『なら、父上達皆で組んで、へそ踏みに参加せぬか?あれは参加する団体が少ないからの。勝ち抜き戦とやらの対戦数に必要な組が足りないと、委員の人が言っていたのじゃ。どうであろ?』

「辰砂様は、ご懐妊中と伺いましたが?」

 マルガレーテが心配そうに辰砂に尋ねる。

「ええ。皆様に心配をかけてはいけないでしょうし、私は観戦だけにしますよ」

「ドラコ、あなた参加しなさい」

 辰砂の言葉にうなずいて、緑青が頭数を揃えるため連行していたドラコに参加を申し付ける。

「はい!」

 緑青の問答無用の威圧に、ものすごく嬉しそうに参加表明する、竜人族の性には逆らえぬドラコであった。

 そんなこんなで、チーム古代竜が結成されることと相成ったのである。

 そして、皆はぞろぞろとへそ踏みの会場へ。へそ踏み会場は、参加する冒険者組や騎士組、そんな彼らを観戦しようと集まった村の人々で賑わっていた。

 みんな手元に、屋台で買った食べ物や飲み物券で交換した飲み物を手に、話しながらへそ踏みが始まるのを待っている。

「おや、皆様お揃いで!」

 へそ踏み会場主任担当、役場のヨハンさんがやってきたゲオルグ達に声を掛ける。

「ヨハンさん、うちの一族で参加したいのですが」

「漆黒様達が?辰砂様もですか!?」

「いやいや、辰砂は観戦だけ。私と緑青、代赭お祖母様と月白お祖父様、竜人族のドラコで参加したいのです」

「一人足りてませんが、皆様古代竜でらっしゃるんですよね?」

 ひいふうみと数えて思案するヨハン。

「ええ、ドラコ以外」

「でしたら、実力調整ということで、そのまま五人でお願いしますね」

 ハンディキャップが必要だから、少ないほうがいいかと判断したヨハンであった。

「わかりました。緑青、お祖父様参加できますよ」

「おお!」

「ふふふ、我々の実力を……」

『緑青、手加減な?』

 不穏な顔つきで、物騒なことを言い出す緑青に、胡乱げな視線を向けて突っ込む黒紅。

「む、わかってますよ」

『心配なのじゃ。者共、コヤツには気をつけるのじゃぞ』

 黒紅は真面目な顔で、いつもつるむちび台風達に注意をする。注意されるシルヴァンと子どもたちも真顔でそれに頷く。何やら察したらしい。

「黒紅ちゃん、作戦会議!」

『わかったのじゃ。父上、妾たちはあっちで作戦会議をしてくるのじゃ』

「うん。仲良くね」

 じゃあねと子どもたちは大人たちに手を振って、会場の端の方で話し合いを始める。

「では、漆黒様達の組は、この勝ち抜き戦表のここの空き枠に入ります。ではみなさーん!へそ踏みを始めますよ!最初の対戦は……」

 ヨハンがトーナメント表の空いた枠が埋まったことを皆に告げ、へそ踏みの開始を宣言する。シードのつもりだった冒険者の組は、対戦相手が古代竜と聞いて顔を青ざめさせている。

 へそ踏みはこれで十六組参加で、初回は八試合となる。

「さあ!こちらへそ踏み会場です!解説にはアルヴァン砦の司令官、エンリケ・ティール殿をお迎えしました!今回の参加目玉は漆黒様率いる古代竜組だ!」

 何故か始まる実況は、歌劇場副支配人ナイジェル・モーリシャスで、そのそばに解説役として砦の最上級騎士で司令官のティールが立つ。

「……そなたら、何をしとるんじゃ?」

「パン屋さんが、へそ踏みは説明があったほうがわかりやすいだろうと」

「このへそ踏みは、戦略がありまして、解説があるとより見てる方にもわかりやすいのだと。アマーリエが」

 ゲオルグの質問に、責任者(言い出しっぺ)が誰かを明確にして答える二人。

「「……アマーリエ」」

 フリードリヒとマルガレーテが額を抑えて首を振る。

 アマーリエがモーリシャスとティールに頼んだのは、別に無理やりというわけではない。

 日頃、神殿広場の前で行われるへそ踏みに、この二人が頼みもしないのに実況と解説をやってることが、ままあるのを見かけていたからなのだ。それをそばで聞いて、村人達が感心したり、面白がってるため、大会でもやってみたらどうかと言ってみただけなのである。

 言われた二人も調子よく引き受けてたりするのだ。

 まあ最も、へそ踏みが始まりモーリシャスの実況とティールの解説があることで、より面白くわかりやすくなることをゲオルグ達は実感し、アマーリエはお咎め無しとなる。

「?あなたは確か、王都の歌劇場の方では?」

 ルイーゼ・ロッテの声に、モーリシャスがにこやかに笑って挨拶をする。

「この度は、入村許可をいただき、誠にありがとうございます。お陰様にて、新しい歌劇の題材が増えました。来春には公演できるよう頑張る所存でございます」

「そうですのね。では、来春の公演を楽しみにしていますね。今は、このへそ踏みを楽しませていただきますね」

「ええ。たいそう面白いですよ!期待していてください!では、初戦、参加の組は年少騎士見習い組と冒険者ギルド組!」

 モーリシャスは挨拶を終え、実況に戻る。

 ゲオルグ達は、村人達が用意してくれた折りたたみの椅子に腰を落ち着け観戦を始める。緑青達は、最初の試合を見ながら、漆黒の解説で遊び方を学ぶ。

「初戦から優勝候補の冒険者ギルド組が登場です!先攻は騎士見習い組!守るは冒険者ギルド組です。ティールさん、最初にへそを踏みに行く見習い騎士たちの実力の方はどうでしょうか?」

「ふむ。最初の試合ということ、衆人環視の下という事、普段とは違う環境で少々動きが固くなっているようですな」

「なるほど。いつもの俊敏さが見えないということですね。いつもですと、俊敏さと柔軟さを活かし、稀に冒険者ギルド組から勝ち星を拾っていますからね」

「ええ、この攻撃で勝って弾みをつけ、後の防衛で粘りきりたいところですが、この先攻は落としそうですな」

「このへそ踏み。攻守交代の一試合二勝負で、先に二勝を上げたほうが次に進みます。一勝一敗の場合攻守を再度決めて、三度めの勝負を行い勝者を決めます……」

 二人の玄人はだしな実況と解説を聞きながら試合を楽しむゲオルグ達の手元にも、いつの間にか村人達から差し入れられた飲み物やお菓子があった。

「む、このきのこのお菓子美味しいですね。エールが欲しくなります」

「そうじゃの。お!あやつうまくすり抜けおったぞ!」

 むしゃむしゃときのこチップスをかじりながら、騎士見習い達を応援するフリードリヒとゲオルグ。

「おおっと!年少騎士見習いの一人があの冒険者ギルドのショーンを振り切った!?」

「いや、ショーン殿は、その後ろに控えるガタイのいい騎士見習いを止めるために、見逃したようだな。すり抜けた騎士は、ショーン殿の後ろに控えるミルフィリア殿でもさばけるようだ。ほら、ミルフィリア殿がはじき出してる。ガタイのいい騎士見習いも、あっさりショーン殿に捕縛されて内側の陣に引き込まれて終わった」

 モーリシャスの実況の後、すかさずティールが解説を入れる。

「なかなかみごたえがあって、面白いですね、あなた」

「そうじゃの。たかが遊びと侮れんの」

「ああっと残念!騎士見習い最後の一人が、外に出てしまいました!冒険者ギルドチームの一勝です!では攻守交代して、次の勝負が始まります!」

「お前ら!負けるのはしょうがないが、防御の時間が短かったら特訓だ!粘り抜け!」

「おおっと!ここでティール司令官から喝が飛んだぞ!」

 ティールの吠え声に、ビシッと硬直する騎士見習い達。それを見た観客達から応援や笑い声が入る。

「ふむ。なかなか面白い遊びですね。うちでもやってみましょうね」

「ええ!アズリアス様!」

「ここでは緑青で構いませんよ、ドラコ」

「緑青様ですね?」

「ええ。さあ、続きをじっくり見て私達も作戦を練りますよ」

 本気になった緑青に、胸が高鳴り始めるドラコであった。



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