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ダンジョン村のパン屋さん2〜1年目の物語  作者: 丁 謡
第26章 さあ!鬼ごっこが始まるよ!
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 翌日。青い空に、遠く北にある魔の山の稜線が、くっきり浮かび上がるほどの鬼ごっこ日和となった。

 アマーリエは朝早くから、今回も銀の鷹に屋台道具一式と大会本部用のテントを馬車で運んでもらう。

 シルヴァンと黒紅はちび台風達と一緒に、あとから村の人と一緒来る予定である。ピーちゃんもヴァレーリオ達とあとからのんびり来ることになっている。

「で、リエは屋台で何を売る気だ?」

「ふふふー、それはついてからのお楽しみ」

「おい~、綿菓子みたいなことになるんじゃないのか?」

「ものが物だけに、多分、大丈夫のはずー」

「ほんとかよ」

 御者台の上で、ダリウスに疑いの眼差しを向けられながら、呑気に鼻歌を歌いつつ今日はガッツリ稼ぐつもりのアマーリエ。

 レシピの売上があるんだから、そんなに儲けなくたって大丈夫だろということなかれ。

 アーロンの事業などに出資もしているため(言い出しっぺなので、口を出すならお金も出しとけよということである。もちろんアーロンはその出資を倍以上に増やして返すつもりであるが)、アマーリエさん、次のネタのためにも副業して稼がないとだめなのよ!だった。

 ちなみに、鬼ごっこ大会は参加費が必要になる。と言っても現金の代わりに、物品での支払いも可なので近隣の農家などは、作った野菜や小麦、乳製品などを参加費として払っていたりする。

 参加費を払うとお昼の夏野菜カレー券と飲み物無料券三枚がついてくるのである。アマーリエのように屋台参加の場合は、出店料を出している。

 今回の場合、村人が発起人であるため、領地からの補助金は出ない。(リラ祭りや収穫祭は、領主から民への労いも兼ねているため助成金が出るのである)

 そのため、諸々の費用を賄うために参加費を徴収することになった。最初から有料にしておけば、そういうものかで、済むからだ。

 鬼ごっこの会場につくと、馬車の誘導係に導かれ馬車留に向かう。この誘導係も、冒険者ギルドで仕事として依頼してたりするのである。鬼ごっこに参加しない冒険者が、小遣い稼ぎと貢献度目的で依頼を受けている。

 他にも、各鬼ごっこの審判には上級騎士が就くが、監視係と会場保全係には冒険者が依頼を受けて就いている。

 そして大会会場の結界の入り口には、土の精霊と漆黒が居て、参加者の手の甲に拇印を魔力で押していく。これが入場許可証代わりなのだ。

『はい、パン屋さんとグレゴールさん以外は、手を出してー。押すよー』

「反対側の手を私に」

 ベルンが左右の手を土の精霊と漆黒に差し出すと、二人の親指がベルンの手の甲に触れて淡く光る。続けてダリウス達も手の甲に印をつけられる。

「リエとグレゴールはいいのか?」

「私は昨日、すでに許可済みですからー」

「俺も準備を手伝った時に許可もらったし」

「なるほど」

「ホイ、本部のテント設置を手伝ってくださいね」

 衣装箱より大きなアイテムボックスを担いだダリウスが、アマーリエの後ろをついていく。その後ろにビール瓶ケース程度の大きさのアイテムボックスを持ったベルン達が続く。

「リエ、この辺か?」

「はいー。そっちに本部のテントその隣に給水所、その隣に私の屋台です!」

 草刈り済みのスペースを指して、場所の指定をするアマーリエ。

「わかった。ダリウスとグレゴールは本部のテント、俺とダフネで給水所のテント、出来上がったら、アマーリエの屋台な」

 ベルンの指示で動き出す。

 身体強化したアマーリエがアイテムボックスから取り出したテントの部品を、マリエッタとファルがバケツリレー方式でベルン達に手渡していく。

「私は、本部で飲み物の配布係なのよね。ファルは、本部で治癒だっけ?」

「ええ。鬼ごっこと言えども皆さんかなり本気なので。暑さに負けた人やけが人が出たら、私とアルギスさんとネスキオさんが治癒魔法で、薬師の有志の皆さんがポーションで対応することになりました」

 マリエッタは、冒険者ギルドの貢献度のために今回は大会運営の手伝いで、ファル達神官は保健係のようなものだ。 

「そりゃ、安心だな」

「リエさんが大会委員会の話し合いで、こまめに提案してましたから」

 神殿で行われていた、鬼ごっこ大会委員会の話し合いの下準備を手伝っていたファルが、ベルンに頷く。

 ファル達を保健係に借り出したのも、アマーリエである。話し合いでファルの顔を見て、大会当日、治癒能力のある人が居たほうがいいと判断したのだ。

「グレゴールは、かくれんぼの会場の監視役だっけか?」

「うん。チビ達が隠れたまま寝ちゃったりするから。見つけて、確保しないとだめなんだよ」

「ああ。いつものやつか」

「そ、いつもの。でも最近チビ達、ほんと隠れるのがうまくなりすぎてて。見つけるの一苦労なんだよ」

 このところ、子ども達のかくれんぼののレベルが上がりすぎていて、鬼役が探し漏れを起こし、隠れた子どもが神殿の隙間で寝てしまうことがあるのだ。

 それを探すのが、グレゴールの探索の訓練の一部になってしまっていた。

「この間はヴァレーリオ様の執務机の下で寝てたなぁ」

 ダリウスも、引っ張り出すのをたまに手伝うのだが、思わぬところに子どもがハマっていて、唖然とすることが多々あるのだ。

「今日も、突拍子もない所に隠れないでくれるといいんだけど」

「「そりゃ無理だろ」」

「だよねぇ」

 始まる前から、想像だけでぐったりするグレゴールであった。

「よし、本部と給水所は出来たぞ。次はリエの屋台な」

 ベルン達が屋台を組み立て始めると、アマーリエとマリエッタ達は本部と給水所の備品設置に回る。

「リエ、この樽の魔法陣は何?」

「保冷です。その樽、魔道具にしてもらったんですよ。中身は温泉の炭酸ジュースとただの炭酸水、牛乳、ミックスジュース、お茶が入ってるんで飲み物引換券と交換で好きなの選んでもらってください。券がない人は一杯150シリングです!無料の水の樽もあるんでそちらもお願いしますね」

「うーん、わかったわ」

 ヨハンソン達魔道具士に今回もあれこれ魔道具を作ってもらったアマーリエだった。そして飲み物は、温泉村で販売するものを決める実地調査を兼ねていたりする。そのため給水所にはマリエッタのほか、商業ギルドの職員が係に就いている。

「マリエッタさん!魔法陣はあとですよ。先に備品の設置を終わらせてください」

 マジマジと樽の魔法陣を見ていたマリエッタの服をファルが引っ張る。

「あはは、欲しかったらヨハンソンさんに注文してください。それ保冷の魔法陣しかついてないからアイテムボックスに入れられるんですよ」

「なるほどー」

「マリエッタさん!」

「わかったわよ、ファル」

 木のカップを持ったファルに急かされて、折りたたみのテーブルを広げるマリエッタ。

「ダフネは参加するんだろ?」

「うん!母さん達と一緒にへそ踏みの上級者部門!」

「……止められるやつが居るのか?力と速さを兼ね備えたお前とクレウサさんを?」

 上機嫌で答えるダフネに、屋台の柱を支えたまま首を傾げるベルン。

「最大の敵はちび台風たちだ!次点で騎士組と冒険者ギルド組!」

「「「「「なるほど!」」」」」

 ダフネの言葉に、神殿前広場での戦績を思い出したベルン達が納得する。

 へそ踏みとかくれんぼは、団体戦なのでチームごとの参加となる。黒紅とシルヴァンはちび台風でへそ踏みに、個人でだるまさんがころんだ(スタチュー遊び)参加の予定である。

 ちなみに、ダフネが言う騎士組とは、ゲオルグのお供のカクさんとスケさん+グゥエン、ノール、ミカエラ、アーノルドで、騎士達の中でも選り抜きのチームである。というか、下っ端騎士達を鍛えるための教官チームとも言うべき存在である。

 一方の冒険者ギルドチームは、バネッサを筆頭にギルド長のビンセント、受付のミルフィリア、警備のショーン他六人チームである。

「なかなか見ものだな。リエ!対戦予定表とかあるのか?」

「ありますよー。へそ踏み参加者に対戦予定表と開始時間を書いた紙を配りますし、本部にはりだしますから。あと、それぞれの遊びの規則を書いた紙も配りますよ」

 ベルンに聞かれたアマーリエが説明する。

「ベルンは遊びには参加しないのか?」

「俺は、リエの屋台の売り子役だよ。お前はスタチュー遊びだったか?リエ、屋台も出来たぞ」

 ダリウスに答えながら、アマーリエに屋台が出来たと報告するベルン。

「ありがとうございます。本部の備品設置もお願いします」

「応!カレーと食器が入ったアイテムボックスは本部の方なんだよな?」

「はい!あと、折りたたみ机と椅子を広げてください」

「わかった!今日は、ご領主様一家も来るんだろ?」

 ベルン達は流れ作業でせっせと机と椅子を広げておいていく。

「ご領主様抜きですけどねー」

「そうなのか!?」

「今回は留守番だそうです」

「ありゃまぁ、拗ねそうだな」

 ベルンとダリウスは顔を見合わせて苦笑する。

「とっくに拗ねちゃってるそうですよ、聞いたところによると」

 ダールから、緊急にお菓子送ってくれと手紙の届いたアマーリエだった。

「あ!もしかして昨日のお菓子……。そのせいで新しいお菓子作ったの?」

 昨日のどら焼きを思い出して、いろんなことを察したグレゴール。そのグレゴールに、キッと視線を向けるファル。

「そうですよー。ファルさん落ち着いてください。今日の屋台で売りますから」

 アマーリエは本部のテントの柱に対戦予定表をはりだしながら、グレゴールに向かって駆け出そうとしたファルを止める。グレゴールの方は、危機を察知してダリウスの後ろに隠れている。

「本当ですか!?」

「ええ。他にも新しいお菓子を出しますから、楽しみにしててください」

「治癒係でよかった!いつでも好きなときに新しいお菓子!」

「あ、危なかった。リエ!ファルにちゃんと新しいお菓子のこと教えといてよね!」

「忙しくてうっかり」

 またもや起こった自分の危機に、冷や汗が流れ落ちたグレゴール。テヘペロするアマーリエをダリウスの後ろから睨む。

「で、リエ。新しいお菓子は何だ?」

「ちょっと待ってくださいよ。今、屋台の準備しますから」

 ダリウスに応えながら、アマーリエはアイテムボックスからあれこれひっぱり出して、設置する。それをいそいそ手伝うファル。

「三種類あるんですね?」

 蓋についた印を見てアマーリエに聞くファル。

「一箱ずつわたしにください」

 一斗缶ぐらいの大きさの金属の蓋付きの箱をアマーリエに渡しながら、ファルがくびをかしげる。

「?これひんやりしてます」

「ええ。今日は暑くなりそうですからね。冷たいお菓子も用意しました」

「冷たいお菓子!」

「楽しみだな」

「ムフフ。財布の紐緩めてくださいねー」

 なんやかんやと準備を終わらせた、アマーリエ達であった。

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