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ダンジョン村のパン屋さん2〜1年目の物語  作者: 丁 謡
第26章 さあ!鬼ごっこが始まるよ!
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さあ!夏本番ですよ〜。リアルは冬至過ぎましたけどねー。

 農作業も落ち着いてきた、夏のある日。春から無駄に力の入っていた鬼ごっこの大会が、近隣の農村と共同開催されることが決まった。

 審判には砦の上級騎士がなり、平騎士や見習い騎士も班を組んで参加する。

 なんでこうなったと首をひねりながら、アマーリエは気持ちは一歩引きつつも、真面目に大会委員のお仕事に励む。

 と言ってもアマーリエは鬼ごっこ大会の概略を説明し、大会の中身はやる気みなぎる他の委員にお任せで、たまに脱線しそうになるのを修正する程度であった。

 後は賞品の用意を村の有志と一緒に地道に行い、鬼ごっこを真面目にやっている人々にアドバイスするぐらいである。

 鬼ごっこ大会の日が近づくに連れ、村の人々や参加する冒険者たちの気合の入り具合が凄まじくなっていくのを、アマーリエは乾いた笑いをうかべながら、怪我しないようにと注意してクールダウンさせていく。

 そして、いよいよ鬼ごっこ大会前日。

 アルバン村近くの原っぱに、冒険者有志と漆黒、そしてアマーリエと土の精霊が集まった。

「それじゃぁ、安全確保のためにまず防御幕張りますね」

 アマーリエは大会委員会から預かった魔石を使って、広範囲に防御膜【アイギス(絶対なる盾)】を張る。

「はあ、こんなもんかな。じゃあ、冒険者の皆さんよろしくお願いしますー」

「「「おう!」」」

 続いて、その中に魔物や危険な野生動物が居ないかを冒険者達が確認する。野うさぎ程度の小動物しか居ないことが確認され、アマーリエの防御膜の上から漆黒と土の精霊が結界を施す。

「これで、許可した生物しか中に入れなくなりましたから、後は、私と土の精霊さん、古代竜さん達と鬼ごっこ用の場所づくりですね。冒険者の皆さんは、今日のぶんの報酬受け取ってもらって解散ですー」

「ほいよー」

 持ってきたアイテムボックスから、携帯食とお菓子の入った詰め合わせ袋を冒険者に渡していくアマーリエと土の精霊。

「ウフフ、これが欲しくて準備も参加したんだし」

 もらった巾着袋の口を開けて、中を覗き込む冒険者達。

「お、この紙の包みはなんだ?……新しいお菓子発見!」

 冒険者の一人が紙の包みを開いて中身を確認する。

「なになに?」

「パンケーキになんか挟んでる?」

「あ、それ、どら焼きです。生物(なまもの)なんで、早めに食べるか、アイテムバッグ入れといてくださね。黄色いのは卵を使ったカスタードクリーム、黒茶っぽいのは豆の餡です。好みが分かれるかもしれませんけど各自で調整してください」

 子どものようにはしゃぐ冒険者達を見ながら、アマーリエが新しいお菓子の説明をする。

「豆の苦手なんだよな、誰か替えことしてー」

「私あんこ好きだから、替えたげる」

 取り替えたり、半分に分けて早速食べ始めたりと、そのまま、食べ歩きしながらアルバン村に帰り始める冒険者達であった。

 鬼ごっこのフィールド内容を知る人が少ないほうが公平だろうからと、参加しないアマーリエ、魔力の多い漆黒、土の魔法に特化した土の精霊が鬼ごっこのフィールドづくりを担当するのだ。

「さて、じゃあこの辺の草を刈り取りしますか。こっちからあっちまでは原っぱのまんまで大丈夫です」

 漆黒に草刈り予定地を指示するアマーリエ。原っぱのままのところはそのまま、鬼ごっこ予定地である。

 アマーリエは風の下級魔法【かまいたち】を使って草を刈る。真似をして漆黒が広範囲の草を刈り取り、刈り取った草を土の精霊がアイテムバッグに詰めてしいく。

 それらの草は、あとで薬草と雑草に仕分けされ、薬草は薬師ギルドへ、雑草は農家や薬草園などへ肥料用に分けられる。

「パン屋さん、こんなものかな?」

「十分です。んじゃあ、この絵を見て、だいたい全体が五サングぐらいの大きさで、同じような感じの絵になるように地面に描いてもらっていいですか?」

「なんとも珍妙な花の形に描くのだね。このポツポツある丸も描くのかい?」

 受け取った紙の絵を見て目を丸くする漆黒。

「ええ、お願いします。そのポツポツの丸も重要なんです」

「重要?どうやって遊ぶんだい?」

「【ヘソ踏み】とか【ひまわり】と言う、陣取り遊びです。その中心の丸い円が守備側の陣地、周りのいろんな花びらが攻勢側の陣地。ポツポツある丸が島と呼ばれる両方が使える陣地になってて、それぞれの陣地から出ちゃうと失格。攻勢側は、この花びらを一周したら守備側の大きな円に入れて、中のこのへそという部分に触れたら勝ち、守備側は守りきったら勝ちになるんですよ」

 漆黒に渡した絵を指で指し示しながら説明するアマーリエ。

「ほうほう。じゃあ、力が強いものが勝つんじゃないのかい?」

「そう単純でもないですよ。攻勢はすばしっこいのや体格差を活かして囮を使ったり緩急つけることで守備側のスキを突いたりするので、一概に力が強ければいいってもんでもないんです。島や陣地の使い方もありますしね」

「ああ、だからこのとポツポツある飛島が大事になるんだね。守備側もそれに備えて、考えて守る必要があると」

「ええ、陣地外に出ちゃって失格になると守備の人数が減っちゃいますしね、守るにしてもいろいろ考えないとだめなんですよ」

「これ、陣地の描き方によっていろいろ変わるねぇ」

「そうなんですよ。花びらの形や島の位置で作戦の立て方が変わってきますからね」

「面白いねぇ。これは陣を描く方も楽しいね」

 この陣取り遊びは、砦の騎士たちのお気に入りになっている。攻撃と守備への基本的な考え方や柔軟な発想が学べるからだ。

「うーん私達も組んで参加できればよいのだが、どうしても手加減をせざるを得ないだろうなぁ。もう少し私達の数が増えれば、同種同士、全力で遊べるのだろうが」

 そう言って、絵を見ながら腰の剣をさやのまま使って、地面に真円をきれいに描き上げる漆黒。

 それを聞いたアマーリエが、古代竜のへそ踏みを想像して顔をこわばらせる。不毛の地が生まれそうであった。

「土の精霊さんこっちに柱作ってください。古代竜の皆さんもこっちのだるまさんがころんだ(スタチュー遊び)ならできると思いますよ。黒紅ちゃんもこれに参加するみたいですしー」

 土の精霊に、だるまさんがころんだの鬼用の柱を作ってもらいながら、へそ踏みの花びらを描いている漆黒に大きな声で話しかけるアマーリエ。

「そちらは、わたしも参加するよー。パン屋さんこんな感じかなー?」

「バッチリですー」

 アマーリエは、漆黒の描いたへそ踏みの陣地を確認して、OKを出す。

『パン屋さん、次はかくれんぼ用の疑似建物だっけ?』

「はい。あの辺りのヤブや木立も利用して、隠れる場所をあれこれ作ります。出入りできる程度の穴もありですよ」

『任せといてー』

「あ、一応建具屋さんから扉と窓枠も借りてきてるんで、使ってください」

 そう言って、アイテムボックスから漆黒と一緒に、扉と窓枠を引っ張り出すアマーリエ。やる気に満ち満ちた村人たちから本格的なかくれんぼ用にと扉や窓枠を渡されたのである。

 それを使って、土の精霊が擬似建物を土魔法を使って作っていく。アマーリエも、土の精霊が作った土の家の強度を増すために、錬金術を施していく。

 そして、何故かデルタフォースの恐怖の館も真っ青な、キリングビレッジが出来上がった。

『どう?』

「はて?なぜこうなったし?まっ、いいか。かくれんぼだから、あながち間違いでもないでしょ。上等です!きっとかくれんぼも盛り上がりますよ!」

『楽しみー!』

 騎士チームと参加予定の土の精霊であった。

「えーっと、後は、あっち側に高鬼と影踏み用に柱と台の場所を作ってと」

 アマーリエは錬金で、土の精霊と漆黒は土の魔法を使い様々な高さや幅の柱や台をこしらえていく。こちらは大人用と子供用に仕様を分けている。

「パン屋さんこんな位かい?」

「はい。だいたい準備できましたね。あとは明日、あの辺りに大会本部ということでテントを建てたら完成です」

「わかった。しかし見事に出来上がったね」

「ええ。かなり立派な遊び場が出来上がりました」

『満足ー』

「さて、私達も村に戻りますか」

 鬼ごっこフィールドの完成に満足し、アマーリエ達は村に戻る。アマーリエと土の精霊は、そのまま村の有志達と明日の炊き出しの準備のため、神殿に向かい、漆黒はアマーリエから報酬を受け取って家に戻る。

「土の精霊様!パン屋さん!待ってたよー」

 神殿の厨房で、すでに下揃えを始めていた村の人達に歓迎されるアマーリエと土の精霊。メニューは夏の野菜たっぷりカレーである。そして、冷たい飲み物も大量に用意する。

 領都や王都に比べれば、幾分夏の暑さが弱いアルバン村地域であるが、それでも走り回るため熱中症対策は必要なのだ。

「パン屋さん、またなんかやらかすの?」

「うふふふ。私は鬼ごっこには参加しませんからね。屋台出します」

「あらまぁ」

「楽しみにしててくださいね」

 によーっと笑うアマーリエに、村の人がゲオルグ様に叱られないようにねと笑う。

 村の外に出るのは、ゲオルグに許可をもらっており(村の人をはじめ古代竜達も擁護したのだ)問題はクリアしているアマーリエ。

 そして、魔道具屋のベルク親方と鍛冶屋のフェラーリ親方を巻き込んで、新たなネタも仕込み済みである。

 また今回は、温泉村でのんびりしていた先代領主夫妻と先々代領主夫妻も、今日の夕方にはアルバン村に到着し、明日の鬼ごっこ大会も観覧する予定になっている。

 領都でお留守番の現領主が何やら言ってきていたようだが、先代も先々代も耳を抑えて聞こえないーをやっていたそうだ。

「さて、腹ごしらえの準備もできたし、明日の準備はバッチリかな!」

「楽しみだね」

「シルヴァンはどうしたの?」

「ちび台風と組んで参加するから、今も神殿前の広場で鬼ごっこしてるんじゃないですか?」

 最後の仕上げとばかりに、神殿前の広場や役場前の広場で、鬼ごっこ大会参加者達が真剣に鬼ごっこに取り組んでいるのであった。

 こうして、アルバン村近隣は、本格的な夏が始まったのである。

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