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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 『修羅の国』での死闘  作者: 橋本 直
第二十一章 新たな時代を担う世代

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第96話 兄を通しての頼み

「醍醐君の気持ちも汲んでやってくれよ。あの人もそれなりに考えて今回のバルキスタンへの介入作戦を提案してきたんだからな。それに地球圏との関係。今のままでいいとは俺には到底思えないんだ。新三は遼州人だから俺とは違う考えかもしれないが」 


 兄の言葉に空々しさを感じて嵯峨は思わず薄ら笑いを漏らした。


「まあそうでしょうね。あの人が有能な官吏で軍人だって事は私も十分承知していますよ。確かにあの人の立場に俺がいたら……そう、今回の作戦と変わらない作戦を提案するでしょうから」 


『今回の作戦』と言う嵯峨の言葉に、西園寺義基は少し表情を強張らせた。


 義基は外交官の出身である。戦時中はゲルパルトとの同盟に罵詈雑言をマスコミで繰り返し、官職を取り上げられ飼い殺しにされていた彼は、戦局が敗北の色を帯び始めた時点で講和会議のために全権大使として再登用された。地球軍に多くのコロニーを占領され、死に体であった甲武だが、そんな中で西園寺が目をつけたのは戦争遂行能力に限界の見えてきた遼北人民国だった。


 素早く遼北の最高実力者、周衛(しゅうえい)首相を密かに訪れ電撃的な休戦協定を締結する方向に動いた。


 遼北の突然の停戦宣言で地球軍は甲武の首都、鏡都のある第四惑星降下作戦発動のタイミングを失った。そして地球軍は渋々講和のテーブルに付き戦争は終結へと向かった。その勲功により終戦を待たずして世を去った父重基を継ぐようにして政界へ西園寺義基を押し上げるきっかけを作った実績は誰も否定することが出来なかった。


 嵯峨が『今回の作戦』と言う言葉を使ったことが、醍醐陸相から首相である西園寺義基に受けている作戦要綱以上の情報を嵯峨が手に入れていると言う意味であることを義基は聞き逃すことは無かった。


「それなら今の立場。遼州同盟司法局の実力部隊の隊長としてはどう動くんだ?」 


 その言葉に嵯峨は思わず笑みを漏らしていた。


「それは醍醐さんにも話しときましたよ。実力司法組織として、でき得る最高レベルの妨害工作に出ると。加盟国の独走を許せば同盟の意味が無くなりますからね。それは有力加盟国の首相である義兄さんも知ってるはずのことじゃないですか」 


 西園寺義基の表情は変わらなかった。そして、そのままかえでへと視線を移した。


「『最高レベル』の妨害か……アメリカ軍と事を構える気か?」


 緊張している。それは敗戦国の宰相である西園寺義基にとって戦勝国であるアメリカと事を構えようと言う弟の言葉に息をのんだからだった。


「別に事を構えることだけが妨害って訳じゃないでしょ?妨害の方法にもいろいろある。まあこれは同盟機構の極秘事項なんでこの場では言えませんが」


 嵯峨はそう言って不敵な笑みを浮かべた。


「かえで、お前の義父になる男はこういう男だ。気を付けた方が良いぞ。今回は完全に俺の負けだ、妨害工作とやらを好きにやんな。俺はもう知らねえと言いたいところだが、そう言えないのが政治家と言う職業の悲しいところだ」


 父に見つめられたかえでは首を横に振った。もとより西園寺義基はかえでには嵯峨の説得が不可能なことはわかっていた。だが、とりあえず威圧をしておくことが次の言葉の意味を深くする為には必要だと感じていた。



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