表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 『修羅の国』での死闘  作者: 橋本 直
第二十一章 新たな時代を担う世代

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

94/205

第94話 引き継がれるもの

「新三、そこはお前の場所ではないんじゃないか?お前はすでに嵯峨家当主ではない、四大公ではなくただの平の公爵だ。身分をわきまえろ」 


 そう言う兄の声に気づいたように嵯峨は三歩後ずさった。そしてかえでは空気を察したように叔父の正面に腰を下ろした。


「この度の家督相続の儀。祝着である」 


 その西園寺義基の一言を聞いた屏風の後ろに控えていた白い直垂の下官が三宝に乗せた杯と酒を運んでくる。その様子を見て、嵯峨はこれもまた家督相続の儀式であると言うことを初めて知った。戦中の嵯峨自身の家督相続はすべて書面だけで行われ、儀式をしようにも嵯峨の身柄は内乱の気配が漂う遼南の地にあってこのような舞台は用意されることも無かった。


 下官に注がれた杯を飲み干す本来なら四大公家筆頭当主としてかえでの家督相続を認めるのは『関白太政大臣』の専権事項である。ゆくゆくはそうなるはずの娘である現西園寺家当主であるかなめの不在により代理を務める西園寺義基が満面の笑みを浮かべていた。そして彼は静かにその杯を正面に座る娘のかえでに差し出した。かえでの手が震えているのが嵯峨の視点からも見て取れた。


 受けた杯をかえでは飲み干した。


「藤原朝臣楓子(ふうし)。三位公爵大納言に叙する」 


「ありがたくお受けいたします」 


 西園寺義基の言葉を聞くとかえでは拝礼した。それを見ながらそのまま三宝に置かれた酒器を持って下官は部屋を出ていった。


 完全に下官達が去ったのを確認するように伸びをした後、義基は突然足を投げ出した。そこには先ほどまでの緊張した面持ちなど跡形もなく、くだけ切った『平民宰相』の庶民的な笑顔だけが残されていた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ