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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 『修羅の国』での死闘  作者: 橋本 直
第十九章 想定外の未知の敵

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第87話 法術テロ組織の『変質』

「まあ奴が焦ってここから消えたってことは忘れるとして、じゃあ基本的なところから行くか。まず最近のテロ組織の傾向について言ってみろ」 


 その厳しい言葉はどう見ても子供にしか見えなくてもランが軍幹部であることを誠に思い出させた。


「近年はそれまでの自爆テロを中心とする単発的な活動から、組織的な自己の法術能力を生かした活動へと傾向が変わりました。近年の代表的テロでは先月、遼南南都租借港爆破事件があります。アメリカ海軍の物資調達担当中尉を買収して、食料品の名目で多量の爆発物を持ち込んだ上で軍施設職員として潜入していたシンパが爆薬の設置を行う。これは非法術系の作戦ですがおそらく他者の意識を読み取れる能力のある法術師が関与していた可能性は極めて高いです。直接的な法術系のテロは近藤事件以降は僕を襲ったあの件だけと言うのが最近の傾向です」 


 誠の言葉にランは黙って聞き入っていた。


「そうすると変じゃねーか?アタシも現場にいたからわかるけどこの非合法法術使用事件は単独の法術師によるものなのはオメーも見てただろ?テロ組織にしたら虎の子の法術師をわざわざ身柄を拘束される可能性があるこんな街中でのデモンストレーションに使う意味がねーじゃん。するとテロ組織とは無関係の単独犯の行動?これほどの力の法術師が組織化が進む犯罪組織に目をつけられないはずはねーな」 


 そう言いながらランは頭を掻く。誠は少しばかり彼女の勿体つけた態度に苛立っていた。


「それなら誰がここに立っていたんですか!」  


 誠の語気が思わず強くなる。そんな誠に茜が肩に手を添えて言った。


「つまりクバルカ中佐はこうおっしゃりたいのよ。『既存のテロ集団とは違う命令系統のある法術師を多数要するテロ集団による犯行』とね。しかも、ここに来た人物はその組織のそれなりの地位にある人物だろうと推測されるわ……法術師を中心としたテロ組織では法術師としての能力の高さがその地位に比例する傾向があるの。同時並行で強力な法術を展開できる人物がただの使い捨ての駒とは考えにくいですわ」 


 誠は茜の穏やかな顔を見つめた。その瞳が少しばかりうれしそうに見えるのは、茜があの騒動屋の嵯峨惟基隊長の娘であると言う確かな証拠のように誠には見えた。


「あんまし甘やかさねーでくれよ。ズバリ答えを行っちまったら神前に『考える癖』って奴を付ける機会が無くなっちまうじゃねーか」 


 そう言いながらランは苦笑いを浮かべる。それを一瞥した茜は再び階下の様子を伺うべく屋上から下を覗き込む。その姿を見ながらランは頭を掻きつつ銃を肩から掛けるポーチに仕舞った。


「茜、テメーは一人で跳んだのか?するとラーナはどうした。アイツはサポート系の法術師か使えねえから跳べねえはずだぞ」


 ランは法術特捜のもう一人の構成員カルビナ・ラーナ巡査の事を思い出してそう言った。 


「いいえ、下に着いてますわよ。私が跳んだ時にはちょうどこの近くに買い物を頼んでいたので呼び出しました」 


 群衆をかき分けて東都警察と同じ制服姿のカルビナ・ラーナ巡査がビルの下にたどり着いた様が誠からも見えた。そのわきでは増援の機動隊に説明しているアメリアの姿が見える。盾を抱えて整列する到着したばかりの機動隊員とカウラが雑談を仕掛けているが、アメリアの説明を受け終わった機動隊の隊長がそのまま部下を特殊装甲で覆われた大仰なバスに乗り込むように部下を指示していた。


「うぃっす!遅くなりました」 


 ランと比べれば大人っぽく見える感じのする浅黒い肌の元気娘のラーナが所轄の警察官を引き連れて現れた。階段を急いで駆け上ってきたようで肩で息をしながら手を上げているランに駆け寄る。警察官達は手袋をはめながら誠とランを時折見上げて正体不明のテロリストが立っていたあたりの床を這うようにして調べ始める。


「クバルカ中佐。今後は私達が引き継ぎますので」 


 そう言って茜とラーナは敬礼する。誠はそれにこたえて敬礼するランにあわせてぎこちない敬礼をするとそのまま階段に続く扉に向かった。


「済まねーな。デートの途中で引っ張りまわしちまって」 


 ランは頭を掻きながら肩に僅かにかかる黒髪をなびかせて階段を下りていく。


「やっぱり僕も『バカバの剣』は携帯した方が良いですかね」 


 ポツリとつぶやいた誠の声にランは満面の笑みを浮かべて振り返った。


「それはやめてくれ。アタシの始末書が増えそうだからな。銃刀法違反は西園寺だけで十分なんだ。それにあの剣は遼帝国の国宝だ。そう簡単に奪われて闇市場にでも売られたらアタシも隊長も即座に辞表を書かなきゃならねー」 


 その表情に誠はランが自分の法術制御能力を低く見ているのがわかって少し落ち込んだ。


「クバルカ中佐!とりあえず現場の指揮権は所轄と嵯峨主席捜査官に移譲しました!」 


 紺色のジャケットを羽織ったカウラが階段の途中で敬礼しながらランを迎えた。



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