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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 『修羅の国』での死闘  作者: 橋本 直
第十九章 想定外の未知の敵

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第84話 法術師同士の戦いの鉄則

「どうだ?相手は動いてるか?」 


 ランはそう言うと階段を今度は三階まで一気に駆け上った。ようやく追いついた誠は息を切らせながら神経を先ほどの法術師のいた場所へと向けた。


「感覚的にはそう言う感じはしないですね。しかし、この空間制御力は……やはりクバルカ中佐が言うように、相当な使い手ですよ。以前僕が襲われた法術師とは桁が違う。凄い人です」 


 そう言いながらランの後ろにぴったりとついて誠も階段を上る。ランも超一流の法術師であることは初対面の時にわかっていた。しかし、ランは今回は一切力を使うそぶりも見せない。


 法術師同士の戦いでは力を先に使った者が圧倒的に不利になる。初動の法術は往々にして制御能力ギリギリの臨界点で発動してしまうことが多いため、最初の展開で術者の能力は把握されてしまうのが大半のケースだと司法局の研究者から聞いた言葉が頭をよぎった。


 司法局実働部隊に間借りしている法術特捜の主席捜査官、嵯峨茜警部の法術訓練の成果がランの行動の意味を誠に教えていた。


「このまま一気に屋上のお客さんのところまで行くぞ!急げ!」 


 そう言うとランは銀色に輝く切削空間を作り出す。ランと誠はその中に飛び込んだ。


 転移して昼下がりの生暖かい日差しを目にすると誠はすぐに防御用の空間を展開した。


 しかし、目の前のランは銃を下ろしていた。誠もそれまで感じていた干渉空間とは違う感覚が誠を包んでいることを理解した。


 そこにはすでに先ほど誠に対してプレッシャーを与えた法術師の姿は無かった。代わりに『特殊な部隊』と同じライトブルーの制服を着た金髪の女性が手にサーベルをもって屋上の手すりを撫でているのが見えるだけだった。


 彼女の名は嵯峨茜。法術特捜の主席捜査官である。



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