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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 『修羅の国』での死闘  作者: 橋本 直
第十六章 誠とアメリアの奇妙な休日

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第72話 豊川の市街地

 豊川駅が近づくと渋滞することも多くなり、助手席で前を見つめていた誠は不意に運転席のアメリアの表情が見たくなった。


 紺色の長い髪が透き通るように白いアメリアの細い顔を飾っている。切れ長の眼とその上にある細く整えられた眉。彼女がかなりずぼらであることは誠も知っていたが、もって生まれた美しい姿の彼女に誠は心が動いた。人の手で創られた存在である彼女は、そのつくり手に美しいものとして作られたのかもしれない。そんなことを考えていたら、急に誠は心臓の鼓動が早くなるのを感じていた。


「ああ、豊川駅南口のすずらん通りに大きいゲーセンあったわよね?」 


 アメリアがしばらく考え事をしていた結果がこれだった。それでこそアメリアだと思いながら誠は一人頷いた。パーラの四輪駆動車は緩やかに加速をしながら街の中心部に向かった。


「南口ってことはマルヨですか?」 


「そう、マルヨの駐車場に停めてから行きましょう」 


 アメリアの言葉に誠は豊川市唯一の百貨店のマルヨの事を思い出した。


「まあ駐車場があるのはあそこくらいしかないか……コインパーキングはお金が取られるし」 


 窓から外を見れば周りには住宅が立ち並び、畑は姿を消していた。車も小型の乗用車が多いのは買い物に出かける主婦達の活動時間に入ったからなのだろう。


「かなめちゃん怒っているわよね。あの子ったら本当に嫉妬深くって……自分の下に見ているいつも便利に使える誠ちゃんが居ないと途端に不機嫌になるんだもの。自己中心的なのもあそこまで行くと困るわよ」 


「確かに西園寺さんはそんな感じですね」 


 そう言いかけてアメリアは急に誠に向き直った。眉をひそめて切れ長の目をさらに細めて誠をにらみつけてくる。


「も?今、私達はデート中なの。他の女の話はしないでよね……って一度言ってみたかったの?有難う!誠ちゃん!」 


 自分で話を振っておきながらアメリアはそう言うと気が済んだというようににっこりと微笑む。その笑顔が珍しく作為を感じないものに見えて誠は素直に笑い返すことができた。


 買い物に走る車達は中心部手前の郊外型の安売り店に吸い込まれていった。さらに駅に近づいていく誠達の車の周りを走るのはタクシーやバス、それに営業用の車と思われるものばかりになった。


 そのままアメリアはハンドルを切ってマルヨの立体駐車場に車を入れる。


「結構空いてるわね」 


 アメリアがそうつぶやくのも当然で、いつもは一杯の一階の入り口近くの駐車スペースにも車はちらほらと停められているだけだった。


「今日は平日で時間が時間ですから」 


 誠がそう答えると、アメリアはそのまま空いている場所に車を頭から入れる。


「バックで入れた方がいいんじゃないですか?」 


「いいのよ。めんどくさい。それにしても大きすぎる車も考えものね、駐車場、幅がギリギリ。ああ、後でパーラに文句言おう」


 そう言いながらアメリアはシートベルトをはずして振り向く。


「でもここに来るの久しぶりじゃないの?」 


「ああ、この前カウラさんと……」 


 そこまで言いかけて助手席から降りて車の天井越しに見つめてくる澄んだアメリアの表情に気づいて誠は言葉を飲み込んだ。


「ああ……じゃあ行きましょう!」 


 誠は苦し紛れにそう言うとマルヨの売り場に向かう通路を急いだ。アメリアは急に黙り込んで誠の後ろに続く。


「ねえ」 


 目の前の電化製品売り場に入るとアメリアが誠に声をかけた。恐る恐る誠は振り向いた。


「腕ぐらい組まないの?デートなんだし」 


 そんなアメリアの声にどこと無く甘えるような響きを聞いた誠だが、周りの店員達の視線が気になってただ呆然と立ち尽くしていた。


「もう!いいわよ!」 


 そう言うとアメリアは強引に誠の左手に絡み付いてきた。明らかにその様子に嫉妬を感じていると言うように店員が一斉に目をそらす。アメリアの格好は派手ではなかったが、人造人間らしい整った面差しは垢抜けない紺色のコートを差し引いてあまる魅力をたたえていた。


「ほら、行きましょうよ!」 


 そう言ってアメリアはエスカレーターへと誠を引っ張っていく。そのまま一階に降り、名の知れたクレープ店の前のテーブルを囲んで、つれてきた子供が走り回るのを放置して雑談に集中していた主婦達の攻撃的な視線を受けながら誠達はマルヨを後にした。



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