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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 『修羅の国』での死闘  作者: 橋本 直
第十六章 誠とアメリアの奇妙な休日

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第68話 ワークライフバランスの観点からの年休の消化について

「オメー等、有給の計画使用できてねーだろ」


 数日後の朝、いつものように出勤してすぐのことだった。本部管理部のガラス窓の前でたたずんでいたランに誠とアメリア呼び止められてそう言われた。


「そうなんですか?僕自身はここに来てから結構休んでる気がするんですけど……確かにパイロット養成課程では一日も有給使ってなかったのは事実ですが」


 誠はいつものように同じく出勤してきたカウラとかなめに目をやる。


「私は年単位で予定を入れているからな。すべては計画通りに行うのが私の主義だ」


 それならパチンコ依存症を自分でどうにかしろと思う誠だが、真面目そうなカウラの顔を見るとそんなことは言えなかった。


「アタシは……この体だからな。メンテとかいろいろかかるんだわ。月に一度の一日メンテ、三か月に一度は三日メンテが必要なわけだ。だから有給はギリギリ。結構厳しいんだわ」


 カウラとかなめはそう言ってアメリアを見た。一番有給を消化していそうな趣味人のアメリアが有給を残している事実にカウラもかなめも驚いているように見えた。


「何よ……私が有給残してるのがそんなにおかしい?私はここに来るのが楽しいの、だからいつもここに居るの」


 誠は正直驚いていた。確かにアメリアは職場に来ているイメージはあるが、宿直室でラジオを聞いていたり、正規のパイロットでないのに誠の機体に乗り込んでシミュレータをしていたり、アメリアが仕事をしているイメージは正直この場の誰にもなかった。


「そんなことはないですけど……夏に海行ったじゃないですか、それにこの前のゲリラライブでも結構……」


 誠はとりあえずそう言ってみた、ランはその言葉に大きくため息をつく。


「こいつが都内に行くときは大体何かの研修受けてたんだろ?夏の海の時は出なくてもいい時に出勤してきたときの代休だし」


 ランの言葉に誠は都内の小劇場を借りて運航部の女芸人達が行ったゲリラライブの際にすぐにいなくなったアメリアを思い出した。確かにアメリアには仕事をしているイメージは無いが、職場には来ていることは間違いなかった。


「あの時……買い物じゃなくて研修受けてたんですか……一応、それも仕事になりますかね」


 実際、アメリアが都内に研修に行く帰りには大荷物を抱えて寮に帰るのが通例だった。


「要はまあやりくり上手って奴よ。いいでしょ?一日の有給も無駄にしない自由人。それが私って訳」


 アメリアは得意げにそう言って胸を張った。


「やりくり上手ねえ……大体その研修も半日で終わるんだろ?役所の研修は半日出勤でも移動時間を含めて一日出たことにするからな……それを使ってる訳だ。一般企業なら半休扱いになるところだぞ、ブラック企業だとそれも無い。やっぱオメエは役人に向いてるわ」


 開き直るアメリアにかなめは呆れたようにつぶやいた。


「そうよ、制度の盲点を利用する。公務員なら覚えておいた方が良い知識よ。かなめちゃんもそれを利用すればいいのに。サイボーグの義体メンテには確か特別休暇の制度が……」


 アメリアの提案にかなめが目の色を変える。


「東和にはそんな制度が有んのか?サイボーグ自体がほとんど居ねえ甲武じゃ考えらんねえよ!今度からはそれを使おう」


 入れ知恵を素直に受け取るところがいかにも利己主義者のかなめらしかった。


「西園寺。それ以前に休みは年単位で計画的に取るようにしてくれ。訓練の予定が狂う」


 一方、カウラはと言えば相変わらず自分の据え付けの端末でスロットをしながらそうつぶやいていた。誠はカウラが真面目なのか不真面目なのか入隊以来今でも判断できずにいた。



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