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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 『修羅の国』での死闘  作者: 橋本 直
第十一章 『特殊な部隊』のありふれた日常

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第51話 ありふれた出勤風景

「お待たせしました」


 そう言って駆け寄る誠を見上げたのは寮の入り口の隅の喫煙所でタバコをくゆらせているかなめだった。


「あの、アメリアさんとカウラさんは?」 


 とりあえず駐車場の『スカイラインGTR』のわきに見えるのはかなめだけだった。誠は不思議に思ってかなめにそう尋ねた。


「気になるの?」 


 そう言って突然誠の後ろからアメリアが声をかけてくる。振り返るといつもと変わらぬ濃い紫色のスーツを着込んだアメリアと皮ジャンを着ているカウラがいた。


「それじゃあ行くぞ」 


 かなめの鶴の一言で誠達は寮を出る。空は青く晴れ渡る晩秋の東都。都心と比べて豊川の空は澄み渡っていた。


「こう言う空を見ると柿が食べたくなるな」 


 そう言いながらかなめは路地にでて周りを見渡す。カウラはそんなかなめの言葉を無視して歩いていく。緊張が走る中、ドアの鍵が開かれるといつも通りかなめは真っ先に助手席を持ち上げて後部座席に乗り込む。そんなかなめと渋々その隣に乗り込む誠を見た後、アメリアはそのまま助手席に乗り込んだ。


 『スカイラインGTR』のエンジンがうなりをあげた。ただ、その800馬力を誇るエンジンもこの40キロ制限の一般道ではただ燃費が悪いだけの無用の長物に過ぎなかった。


「確かに遼州は燃料が安いけどもう少し環境に配慮したエネルギー政策を取ってもらいたいわね。まあ、そこが遼州人らしいところと言うかなんと言うか……」 


 アメリアは手鏡で自分の前髪を見つめながらそうつぶやいた。動き出したカウラの車はいつものように住宅街を抜けた。いつもの光景。そして住宅街が突然開けていつも通りの片側三車線の産業道路にたどり着いた。


 その間も誠は昨日の醜態を思い出して沈黙を守る。三人の女性の上官は察しているのか珍しく静かにしている。順調に走る車は渋滞につかまることも無く菱川重工業豊川工場の通用門をくぐった。


「生協でも寄っていくか?またおやつを買うんだろ?アメリア」 


 カウラが気を利かせてアメリアにそう言うが、アメリアは微笑んで首を振る。


「今日はいいわ。この前買ったのがみんなに意外に不評で余っちゃって……今日も同じの食べるの。いい加減飽きたところ」


 カウラはそのまま車を走らせて司法局実働部隊の通用門にたどり着いた。宿直の技術部の隊員がゲートを開けた。カウラはゲートが開くと同時に無駄にエンジンをふかして一気に隊の駐車場まで車を滑り込ませた。


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