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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 『修羅の国』での死闘  作者: 橋本 直
第十章 恒例行事と化した飲み会

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第45話 珍しい『客』

「茜、まだ来てねえんだ……」


 そう言いながら階段を上ってきたのが嵯峨だった。いくら『小遣い三万円』と言っても、茜からは洋服代くらいは別腹で出してもらっているらしく、それなりにこぎれいな灰色のジャケットに折り目の付いたスラックスを履いていた。


「隊長、いつ隊を出たんですか?」


 誠はどう考えても本数の少ないバスで誠達とほぼ同じ時間に着ける嵯峨に呆れていた。


「いいじゃん別に。俺上座?面倒だな……俺偉そうにするの苦手なんだ。『プライドゼロの男』ってことで売ってるんで」


 そう言いながらも嵯峨は猫背のままグラスを手にしているランの隣に腰かけた。


「遅れました!」


 そこにやってきたのは茜だった。いつものように紫色の地の江戸小紋を着込んだ茜はその金髪と西洋風の顔立ちもあってどこかコスプレしている外国人のようだと誠は常に思っていた。


「いいよ、俺達もさっきついたとこだし……始める?」 


 嵯峨はそう言ってテーブルに置かれたグラスを手にした。


「神前、手伝いなよ」


 そんな嵯峨の言葉を聞いて下座の誠は階段を降りようとした。


「いいですよ、神前君。お客さんじゃないですか」


 そう言って春子はビールのケースを誠に手渡した。それを見たかなめが二本ビールを取ってカウラに手渡す。カウラはすぐさま栓を抜いてアメリアに手渡した。


「まずは主賓から」


 そう言うとアメリアはランの手にあるグラスにビールを注いだ。


「オメー等も座れよ。そんな儀式ばった集まりじゃねーんだからよ」 


 自然と上座に腰をかけたランがそう言って一同を見回した。


「それじゃあ、皆さんビールでいいかしら?ああ、カウラさんとパーラさんは烏龍茶だったわよね。それとかなめさんはいつものボトルで……」 


 そう言って春子はランを見た。


「いいんじゃねーの?」 


 そう言って頷く上座で腕組みをして座っている幼く見える上官をかなめとカウラは同じような生暖かい視線で見つめる。


「なんだよその目は」


「別に……」


 かなめの視線に明らかに不愉快そうにランはおしぼりで手をぬぐいながらそう言った。 


「しかし……茜。和服が似合わねえ女だな。顔が洋風なんだから洋服を着ろよ。それと騎士だって言ってるんだから西洋鎧でも着込んでくれば良いのによう」


 とりあえず注がれたビールを飲んでいたかなめが茜にそう言った。


「私は甲武の生まれなので着物の方が慣れていますの。それに戦場でもないのに鎧を着たがるのはかなめさんがあまりに攻撃的すぎるのではなくて?そう言うかなめさんこそお父様の部屋にある大鎧でお通いになったらいかがですの?」 


 そう言うと茜はランの隣に座る。嵯峨もランが指差した上座に座って灰皿を手にするとタバコを取り出した。


「あの、隊長」 


 カウラが心配そうに声をかける。


「ああ、お子様の隣ってことか?わかったよ」 


 そう言うと嵯峨はタバコを仕舞った。ランはただ何も言わずにそのやり取りを見ているが、いつも目の前でタバコを吸われているので嵯峨の今だけの気遣いなど無用の長物に過ぎないのではと誠は思っていた。


「もう空けましたか、中佐殿お注ぎしますね」 


 アメリアは満面の笑みを浮かべて、口元が引きつっているランのグラスにビールを注ぎ始める。


「おっ、おう。ありがとーな」 


 なみなみと注がれたビールをランは微妙な表情で眺める。気付けば茜やサラがビールを注いで回っている。


「オメエも気がつけよ」 


 そう言うとかなめは誠にグラスを向ける。気付いた誠は素早くかなめのボトルから愛飲するラム酒『レモンハート』を注いだ。



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