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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 『修羅の国』での死闘  作者: 橋本 直
第八章 小さな姐御の本配属

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第38話 モーゼル・モデル・パラベラム

「ルガー?こんなビンテージものどこで手に入れた?マニアに売れば相当な値段だぞ」 


 その特徴的なトルグアクションにかなめは視線を奪われる。その銃は誠も知っている第二次世界大戦のドイツ軍の制式拳銃『ルガーP08』に見えた。


「俺は小遣い三万円の男だよ?どこにそんな高い買い物する金があるんだよ。そんなもんあるなら俺のコレクションにするよ。こいつはモーゼル・モデル・パラベラム。昔、オーストリアの伍長殿の起こしたどんぱちが終わってから作られたリバイバルバージョンだ。P08程じゃ無いがガンショーとかでは結構いい値がつくんだぜ」 


 嵯峨はそう言うと素早くマガジンを抜いた。シングルカーラムの細いマガジンがダブルカーラムで多弾数の銃が主流の現在の戦場にはあまりに不向きに見えたが、どうせ銃がド下手な自分が使うことになるのだと思うと、誠はそれも仕方がないことだと思った。


「こりゃあずいぶん趣味的なチョイスじゃねえか。神前の豆鉄砲と交換するのか?」 


 誠は射撃がまるで下手糞だった。一般的な軍用拳銃ならば初弾はまだしも、二発目以降はどこにあたるか本人にもわからない。そんな彼の為に嵯峨はお守り程度の威力しかない22口径のグロッグG44を与えていた。しかしそれはさすがにやりすぎだとかなめもカウラも思っていた。その為に誠でも二発目以降が当たりそうで威力のある弾丸を使用する銃を嵯峨は探していた。


 かなめは目の前の古めかしい拳銃に手を伸ばした。かなめに銃を持たせるとろくなことにはならないので、全員が肉から彼女の手の動きに目を向けた。かなめはグリップを握りこんだ後、何度か安全装置をいじった。


「なんだよ、じろじろ見やがって。オメエも持ってみるか?」 


 そう言うと肉を噛んでいたカウラに銃を手渡す。彼女も何度か手にした銃の薬室を開いてはのぞき込んでいる。


「あと二、三マガジン撃ってから調整するからな。前のユーザーは結構こいつを撃ち込んでたらしくてトルグがゆるゆるだったんだ。そこら辺は俺の技術でどうにか直した。たぶんちゃんと動くと思うよ」 


 そう言いながら嵯峨は再び皿から牛タンを七輪の上の網に乗せた。いつの間にか誠の隣に座っていたアメリアも黙って彼が載せた肉を素早く取り上げて焼き始めた。


「グリップはウォールナットのスムースですか?神前は慣れないから滑り止めのチェッカーとか入れた方が良いんじゃないでしょうか」 


 カウラから渡された拳銃のグリップを撫でながらパーラが嵯峨に尋ねた。滑り止めの無いオイルで仕上げたグリップがつややかにパーラの手の中で滑っている。


「俺もチェッカーの入った奴が好みなんだけど、どうせバカスカ撃つわけじゃねえんだ。神前が撃ってみて問題があるようなら交換するけど」 


 そう言うと嵯峨は半焼きの肉を口に放り込んだ。


「拳銃談義はそれくらいにして、隊長の殿上会出席のための留守の勤務のシフトはどうするんです。出勤リストとか出来てるんですか?」 


 アメリアのその言葉に嵯峨が黙って手を上げる。


「殿上会は俺は今回は重要な要件が有って絶対出ないといけないからねえ……公爵の位をかえでに譲らなきゃならないからな。シフトはこれが終わったら全員の端末に流す。その辺の抜かりは無いよ俺は」


 嵯峨はそう言うと酒を口に含んだ。


「いい匂いがするんだな」 


 そこに居たのは幼い容貌のランだった。突然のランの登場にかなめとアメリアは驚いた表情を浮かべていた。


「ランじゃないの。本局の偉いさんの接待お疲れさま。ランよ。ご苦労さんと言うことでお前も食っていけよ」 


 ランから渡された司法局の上層部からの書類を執務机に投げた嵯峨が声をかける。


「飯は食ったからな。それにアタシの本異動の歓迎会は月島屋の二階でやるんだろ?一応予約はしておいたけど」 


 それだけ言うと食にはうるさいランには珍しく焼き肉を食わずにそのまま出て行こうとすした。


「さてと、とりあえずまだまだあるからな……ちゃんと食っとけ、良いもんなんだから俺も明日からはカップ麺生活だ。肉の食いだめしとかないと」 


 そう言って嵯峨が立ち上がった。牛タンパーティーは夜半まで続くことになった。



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