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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 『修羅の国』での死闘  作者: 橋本 直
第六章 指導の必要な仲間達

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第29話 優しい『仲間達』

「じゃあ早く誠ちゃんもパイロットスーツから制服に着替えてきなさいよ。私達は駐車場で待ってるから」


 そう言って誠からアメリアは背を向け立ち去った。彼女の周りにはこの実験を失敗すると決めてかかっていた東和陸軍の先ほどまで誠達の陰口ばかり叩いていた兵士達の群れがあった。アメリアの姿はその中に消えて行った。 


「あのーもしかして迎えに来てくれたんですか?」 


 ようやく気がついたように誠は手に車のキーを持って一人残されたカウラにそう言った。頭を掻きながらカウラは天を見つめた。


 とりあえずかなめやアメリアを待たせると後で何をされるか分からないので、誠は着替えのためにそのまま駆け足でトレーラーの止めてあるハンガーへと急いだ。


「三人とも優しいんだな。やっぱりこの『特殊な部隊』に入って本当に良かったよ、母さん」


 誠は一度は逃げ出したこともある『特殊な部隊』に愛着を感じている自分に驚くと同時に嵯峨の話ではそう仕向けた誠の母神前薫(しんぜんかおる)の事を思い出した。


 嵯峨の罠に嵌められてこの部隊に入ることが決まって、実家を出てからもう三月が過ぎようとしていた。親不孝なことに誠は母親に電話もしていなかった。


 誠の母、薫は厳しい人だった。『神前(しんぜん)一刀流(いっとうりゅう)』と言う名の剣道場の師範として子供達に剣を教える時はいつも微笑んでいても、誠を相手にするときの剣裁きは子供に向うそれとはまるで違う鋭さを持っていた。


 ただ、誠は小学校三年生の時に後に『光の剣』を使えるようになったように、竹刀で物が切れるような法術を自然に発動するようになったので、誠は剣道をやめて野球を始めた。それを勧めてくれたのも母だった。


 思えば、嵯峨の罠も母はすべてお見通しだったのかもしれない。その結果として今はすっかりこの『特殊な部隊』の一員として楽しい毎日を過ごしている誠だった。


「それにしても母さんとも久しく会ってないな……元気かな……お盆は県警の警備に駆り出されて帰れなかったけど、まあ正月には帰れるだろうな」


 この部隊に配属されたあの日以来顔を見ていない母の事を思いながら、誠はパイロットスーツのチャックに手を伸ばした。



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