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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 『修羅の国』での死闘  作者: 橋本 直
第六章 指導の必要な仲間達

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第28話 まだ残る『東和陸軍』の軍籍

「ベルガーをいじめるのはそのくらいにしとけや。それにしても今回は誠のおかげでアタシの転属が本決まりになりそうだ」


 ランは笑顔を浮かべたまま三人に向ってそう言った。


「中佐は……引継ぎがまだなんですか?それとも上層部の誰かがクバルカ中佐の移籍に反対しているとか」


 急に仕事モードの態度になったアメリアにランは苦笑いを浮かべる。


「まあな……アタシが異動になったのはいいが……ここも元々人手が足りてるところじゃねーからな。とりあえずアタシが作った訓練プログラムが実施されているかの確認とかがあってさ。上層部も、あの何を考えているか分からない『駄目人間』に力が集まることを面白く思わない連中も少なからずいる。それよりオメー等は遊んでていーのか?アタシが出張前に作っといた訓練メニュー。アタシが地球に言ってる間もちゃんと毎日こなしてるだろーな」 


 ランは司法局上層部の裏事情を仄めかしつつ、明らかに勤務時間中に持ち場を離れている三人にそう尋ねた。


「お言葉ですが、法術兵器の使用については術者の身体や精神に過度の負担がかかると聞いていますから、彼の上官としてそのケアに当たるための方策を……」 


 カウラがそこまで言うと、ランが彼女をにらみつけた。思わずその迫力に気おされてカウラは黙り込んだ。そしてその視線は隣で引きつった笑みを浮かべるアメリアとかなめと順に向けられた後、にんまりとした笑みへと変わる。


 その視線の先には機体から降りて三人に向って走ってくるパイロットスーツ姿の誠の姿があった。


「お三人とも何かこの射爆場に用があったんですか?」


 事情がまだよく呑み込めていない誠はカウラ達に向けて間抜けな質問をした。


「ちげーよ。オメエを迎えに来ただけ。隊に居ても暇なだけだし」


 タバコを吸い終えたかなめはそう言うとにやりと笑って吸っていたタバコを地面に投げ捨てた。


「へー、神前曹長。相変わらずモテモテなんだなオメーは」 


 そう言って誠の肩を叩こうとするが、途中で背伸びをして手を伸ばす姿があまりにも間抜けになると気付いたのか、ランがは誠にボディーブローを放った。


「うおっ!!」 


 みぞおちに決まった一撃で誠はそのまま倒れこんだ。


「中佐!」 


 さすがのカウラもランの不条理な行動にたまりかねて二人の間に割り込んだ。 


「鍛え方が足りねーみたいだな。戻ったらまたしごいてやんよ。覚悟しとけよ」 


 そう言うと誠に寄り添うアメリアとカウラを残してランは管制塔へと去っていった。


「相変わらず傍若無人な奴だねえ。神前、大丈夫か?」 


 誠はかなめの言葉を聞くとゆっくりと立ち上がった。


「ええ、まあ」 


 ランの腹への一撃で噴出した脂汗を拭いながら誠は立ち上がった。


「それにしてもやったじゃねえか!叔父貴の失敗した実験に見事成功。見事なもんだ」


 まるで自分の事のようにかなめは喜んで誠の肩を叩いた。


「さっきはこの兵器の悪口さんざん言ってた口が良く言う」


 カウラは呆れながらポケットから車のキーを取り出した。


「神前!早く制服に着替えろ!遅かったら置いてくぞ!」


 かなめはそう言うと駐車場に向けて歩き出した。


「なんだよ……僕を迎えに来たんじゃないんですか?ねえ、アメリアさん」


 誠は矛盾した態度のいつものかなめに腹を立てていつものようにアメリアに突っかかる。


「かなめちゃんは照れてるのよ。あの子らしいじゃない」


 アメリアはそう言って笑った。



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