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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 『修羅の国』での死闘  作者: 橋本 直
第六章 指導の必要な仲間達

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第27話 ちょうど良い出迎え

「そう言えば、挨拶行かないの?あのちんちくりんに。あの人礼儀にうるさいから、行かないと後でどやされるわよ」 


 機体を降りた誠の前でさんざんかなめにプロレス技をかけられていたアメリアが、屈伸をしながらカウラの顔を見上げる。アメリアのランを『ちんちくりん』と表現するのがツボに入ったらしく、かなめは思わず大爆笑を始めた。


「そうだな。クバルカ中佐は地球の会議に出発して以来、隊には姿を見せていない。地球圏を含めた法術対策会議の為にクバルカ中佐が地球に行かれてからもうひと月か……長期の出張帰りだから顔を見せておくのもいいかも知れないな」

 

 そう言いながらカウラはエメラルドグリーンのポニーテールを秋の風になびかせた。だが、一人眉をひそめているのがかなめだった。


「おい、姐御のところに行くのかよ?あの人相の悪い餓鬼の面を誰が好き好んでみるんだよ?それにどうせ明日になったら隊に出て来るんだろ?そん時顔見りゃいいじゃねえか。年中見てる顔だし。何か?オメエ等ロリコンの気でもあるのか?」


 いつもはランに『鈍ってる!』と言われてシミュレータでの訓練の度に目の敵にされているかなめは不服そうにそう言うと、喫煙所でもないのにポケットから取り出したタバコに火をつけた。 


「いや、西園寺。こちらから出向く必要はなさそうだぞ。早速、中佐ご自身がお見えになるようだ。さっきの貴様等の無法を叱りに来たに違いない」


 カウラはそう言って顔を上げた。噂をすれば何とやらと言うことで本部棟に続く道からランが実験を成功裏に終わらせてリラックスした表情を浮かべて歩いてくるのが見えた。そこにはカウラが予想した怒りの表情よりは実験が無事に終了したことに対する安堵の念が強くにじみ出ていた。


「おう、元気そうじゃねーか!こんなところまで来て……ご苦労なこった。神前の迎えか?アタシはこれから司法局本部に出頭するんで神前にはバスと電車で寮まで帰ってもらうつもりでいたんだが……ちょうど都合が良―や」


 ランはそう言うとかなめ達を見渡した。


「何よ、カウラちゃん。ランちゃんは怒ってないじゃない」


 ニヤけた表情のアメリアがランが自分達を叱りに来ると決めてかかっていたカウラに向ってそう言った。


「そうだぞ、何事も結果オーライだ。心配するだけ損と言うものだ。老けるぞ、カウラ」


 かなめもまたタバコをふかしながら冷やかすような調子でカウラにそう言った。


「中佐は貴様等の日常を見慣れて神経がマヒしてらっしゃるんだ!それに迎えに行こうと言い出したのは私だ。運転するのも私だ。貴様等が一緒についてくる理由など初めから無かったんだ」


 自分だけが責められていることに腹を立てたカウラがそう言って二人をにらみつける。


「オメエをほっとくとまたパチンコ屋に寄るからな。『パチンコ依存症』患者は監視しておく必要がある。その為に乗ってやったんだ。カウラには逆に感謝してもらいたいねえ」


 以前まで生活が成り立たないほどの極度の『ギャンブル依存症』患者だったカウラはかなめにそう言われたら何も返す言葉が無かった。


「そうそう、そう言うこと。あの隊長が失敗した実験を成功させた功労者にまた慣れないバスに乗って吐けって言うの?そう言うカウラこそ残酷よ……この人でなし!上司失格!」


 アメリアにまで止めを刺されてカウラはがっくりと項垂れるしかなかった。



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