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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 『修羅の国』での死闘  作者: 橋本 直
第五章 発動する『非破壊兵器』

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第24話 発動する『05式広域鎮圧砲』

 訓練場を示す地図が開き、誠の干渉空間が展開される。干渉空間には二種類あり、その活用方法については誠は飛躍的に制御技術向上させていた。


 一つは直接展開空間。


 それは平面状に展開され、シールドや位相転移、すなわち瞬間移動などを行うことができる展開発動者専用の空間である。これを展開できるのは司法局でも誠と隊長の嵯峨惟基特務大佐とその娘で法術特捜主席捜査官の嵯峨茜警視正、さらに副隊長で第一小隊長のクバルカ・ラン中佐だけと言う特殊な技能である。


 そしてもう一つが一般に『テリトリー』と呼ばれる干渉空間だった。


 それは展開した法術者の意識レベルによって変性可能な干渉空間である。その『テリトリー』の運用に長けているのはパイロキネシストだとされていた。パイロキネシス……発火能力者は隊にいないのでその能力がどういったものかは誠も知らなかったが、誠自身もある程度の『テリトリー』内の意識を把握する能力は持っていた。


 干渉空間、テリトリーの展開を開始すると、下で騒いでいたかなめ達の顔色が変わった。テリトリー内では発動する法術師の意識がテリトリー内のすべての人間に伝わるようになる。そのことでかなめも誠の緊張を察して腕組みをして静かに押し黙った。


 テリトリーの範囲が非破壊兵器の有効効果範囲全域に広がると、再び誠の全身から力が抜けていくような感覚が走る。


「干渉空間展開率30……40……50……」 


 小さなウィンドウに記された演習場の地図が次第に赤く染まる。目の前を見ると、干渉済みの空間がゆらゆらと陽炎のように誠の目に見えた。


「法術エネルギーブースト開始。最終安全装置の解除を確認」 


 そう言うと誠は火器管制モードになった画面を見つめる。さすがにこの状況ではふざけるつもりが無いようで、足元で観測機器をいじっている西をかなめ達三人は黙ってみているようだった。


『周囲に生体反応無し!発射よろし!』


 ひよこの指示が下される。誠はトリガーに指をかけた。


「発射!」 


 誠がトリガーを引いた。薄い桃色の光線が揺らめく干渉空間を飲み込む。反動や爆風が起こることも無く、目の前が桃色の光で満たされた。その光景が見えたのは一秒にも満たない瞬間だろう。


 戻った視界の中に見えるのは発砲前とまるで変わらない演習場の景色だった。


『なんだよ。こりゃ?』


 はじめに口を開いたのはかなめだった。誠も、干渉空間を解除する脱力感の中で非常に手ごたえの無さを感じていた。


『これはですねえ、広域犯罪やテロなどの非常事態に被疑者の意識を奪うことで事件解決の……』 


 西は見た目が何も変わらない非破壊兵器の効果範囲を眺める三人に非破壊兵器の効果についての説明を始めようとした。


『んなことはわかってんだよ!だけどなんだ?こんなでかくて強そうな武器だっつうのに、なあ!』 


 まじめに説明しようとする西を押さえつけてかなめが話題をアメリアに振った。


『確かに。カタルシスと言うものが無いわね。もっと、誠ちゃんの機体がひっくり返るような反動があるとか、効果範囲が一面焼け野原になるとか。そう言うなんかすごい効果ってないの?』 


 そう言ってアメリアは紺色のロングヘアーをかきあげる。そもそも効果範囲が焼け野原になったらそれは『非破壊兵器』では無い。そんなツッコミを入れたい衝動に駆られながら、いつもなら誠を襲ってきた法術発動後の脱力感をほとんど感じていないことに気が付いた。


『貴様等……何がしたくて軍に入ったんだ?珍しいものが見たければ動物園に行くか、カタルシスを感じたければ映画館にでも行け』 


 カウラが二人の言葉に呆れた顔をする。誠も二人の反応に少し呆れながらも手ごたえの無さに不安になる自分に気づいていた。



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