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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 『修羅の国』での死闘  作者: 橋本 直
第四十四章 パワーアップした日常の異常性

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203/205

第203話 帰ってきた『特殊な部隊』の日常

「誠ちゃん!今度のゲリラライブのビラの件なんだけど!ってアン君も『男の()』になったのね!また一つこの部隊も成長したわね」 


 大声を張り上げてアメリアが入ってくるのはいつもの事だったが、ここに第二小隊の新メンバーが居ると言う事実を誠はアメリアにも理解してもらいたかった。そのまま立ち上がったのは誠とかなめだった。かなめはそのまま誠とアメリアの肩を抱えて部屋を出ようとする。


「西園寺!仕事しろ!貴様の気持ちも分からんでは無いが現実から逃げるな!」 


 カウラの怒鳴り声を聞いてかなめは面倒くさそうに振り向いた。


「ああ、遠隔でやっとくよ!それに今更男装女装が増えたところで別にアタシとしてはどうでも良い。それよりやりてえことがあんだよ!アメリア、どうせ茜に頼まれた法術犯罪のプロファイリングの下請けとかあんだろ?手伝ってやんよ」 


 かなめも誠と同様に今日からの新メンバーの登場でこれまでの日常が変化することを察しているように誠には思えた。誠にもかなめと同じように心の準備が必要だった。


「ふうん貴方からそう言うこと切り出すなんて珍しいわね。せっかく第二小隊発足で新たな扉が開かれようとしているのに……つまらないの」 


 部屋の中に取り残されるかえでを見て状況を察したアメリアは彼女もつれてそのまま外に出る。


「一応、誠ちゃんの端末にネタは送っておいたけど確認できる?」 


 アメリアはそのまま部屋から離れようとするかなめの勢いに押されながらも誠の腕に巻かれた携帯端末を指差した。


「ああ、後で確認します。ところで、西園寺さん?」 


 誠の思惑は外れたようで、かなめはアメリアを口実にただ単にかえでから距離を取りたいだけのように見えた。ついでにアンの状況からもしばらく落ち着く時間が欲しいと言う感情が背中からにじみ出ていた。


「もう少し歩こうじゃねえか、な?」 


 明らかに引きつった表情でそう言うかなめにアメリアは何かをたくらんでいるような視線を向ける。とりあえずかえでと距離を取りたい。そのためなら何でもする。かなめの顔にはそう書いてあった。


「稽古中に夜食とかあるといいわよね。できればピザとか。コントの稽古って結構体力使うのよね。お腹も空くのよ」 


 アメリアが感情が顔に出るかなめの特徴を知らないわけがない。当然ここぞとばかりにその弱みに付け込もうとした。


「わかった神前とオメエとサラとパーラの分だろ?ちゃんと用意するよ他の面子は何にする?そばか?うどんか?」 


 かなめは即答した。その様子にいくらでも要求は通るものだと確信したアメリアはさらに押せると踏んで言葉を続けた。


「甘いものは頭の回転を早くするのよね……まあ飴とか饅頭は持ち寄るから良いんだけど……洋風の……かなめちゃんは甲武一の貴族だものね、そのくらいよく知ってるわよね」 


 最初の言葉でさらに要求ができると踏んだアメリアはかなめを追い詰めていく。かなめにはすでに逃げ場などなかった。


「なんだ?駅前のケーキ屋のか?わかった人数分用意する。何ならこの前言ったアメリアお気に入りの喫茶店のコーヒーも付ける」 


 そのままかなめはコンピュータルームまで二人を押していくと、セキュリティーを解除して中へと誠達を連れ込んだ。


「じゃあ手を打ちましょう。ちょうどかなめちゃんの指摘した通りの仕事を茜ちゃんから貰ってきているしね。それにしてもあんなに楽しそうな機動部隊から逃げ出すなんて……かなめちゃんちょっと贅沢よ」 


 そう言って端末の前に腰掛けるアメリアを誠は救世主を見るような目で見つめた。


「なにが面白そうなんだ!あそこにずっといるアタシの身になって見ろ!頭ん中おかしくなるぞ!しかもかえでに関してはアタシの責任だとかカウラの馬鹿がぬかしやがる!知るか!そんなの!」


怒りに任せてそう叫びながらも、かなめは首元のジャックにコードをつないで端末を起動させた。画面には次々と傷害事件や器物破損事件の名前が並んだファイルが表示された。



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