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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 『修羅の国』での死闘  作者: 橋本 直
第四十章 かなめとかえで

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第185話 ブチ切れるかなめ

「叔父貴!なんであの変態がうちに配属なんだ?理由言え!半殺しぐらいで勘弁してやるからとっとと言え!」 


 茜のとりなしで落ち着いた機動部隊の詰め所を飛び出したかなめは、なんとか制止しようとする誠とカウラを振り切って隊長室に飛び込むと開口一番そう叫んだ。


「いきなりだな……って予想通りか。だって……アイツの問題行動で兄貴から泣きつかれてさあ……いろいろあるんだよなあ……仕事も法術師としての能力も優秀と言えば優秀なんだけどさあ……セクハラとかセクハラとかセクハラとか……だから許してよ」


 嵯峨はいかにも作り物の涙目で見上げてくる。先ほどのかなめに対する変態行為を見ていても誠にもかえでの問題行動の内容の予想はついた。第一、24人の人妻に自分のクローンを孕ませると言う『マリア・テレジア計画』なるどう考えても問題にならない方がおかしい計画を実行に移してしまうようなかえでである。その準備段階で色々ともめ事を起こしていたことはうぶな誠にも容易に想像がついた。


「あー!腹が立つ!親父か!すべてを仕組んだのは親父か!アイツはどっかの辺境国の大使館付き武官にでもして飛ばしちまえば良いんだ!そうすればアタシはアイツの顔を見なくて済む!」


 かなめはやり場のない怒りのはけ口を求めてこぶしを誠の腹に叩き込んだ。


 誠の息が止まって前のめりに倒れる。手を出して介抱するカウラもすべての元凶である嵯峨をじっと見つめていた。かなめとカウラ。今の二人に共通するのは死んだ魚のような視線だった。


「そんな目で見ないでくれよ。俺もできればこの事態は避けたかったんだけどな……仕事は出来っから役には立つし。それに優秀な法術師が戦力に加わるんだよ?これまで神前一人じゃ心もとないってかなめ坊も言ってたじゃないの。これからはそんなことは無くなる。神前の負担も減る。なあ、神前。美人が増えてうれしいよな!」 


 そう言うと嵯峨は書類の束を脇机から取り出す。表紙に顔写真と経歴が載っているのがようやく呼吸を整えた誠にも見て取れた。


「これまでの話は冗談としてもだ。うちは失敗の許されない部隊だ。まあどこもそうだが長々とした戦略やリカバリーしてくれる補助部隊も無いんだからな」 


 そう言いながら嵯峨は冊子に手をやる。突然まじめな顔になる彼にかなめやカウラも黙って彼の言葉に耳を傾けた。


「となればだ、どうしたって人選には限定がついてくる。それなりに実績のある人材で法術適正があってしかもうちに来てくれるとなるとメンバーの数は知れてるわけだ。しかも来年からは西モスレムの提唱した同盟軍の教導部隊の新設の予定まであるってことになると……ねえ……優秀で問題の無い人材はあっちに行きたがる訳だ。うちは『特殊な部隊』と呼ばれるくらいだから。それに司法局って同盟機構内部では冷遇されてるんだ。人材の取り合いに負けたお偉いさんが悪いの。今回の件は」 


 誠もある程度状況が理解できてきた。実績、能力のある人材を手放す指揮官はいない。さらに同盟軍教導隊には司法局実働部隊の数倍の予算が計上されているという話からして、こんな僻地に喜んでくる人材に問題が無いはずが無い。だが、それ以上にその責任をすべて司法局上層部に持っていこうとする嵯峨の姿勢には疑問を持たざるを得なかった。


 しばらく沈黙するかなめとカウラだが、二人の言いたいことは誠にも理解できた。腕はまだしもかえでの人格にはかなりの問題がある。ただでさえ『特殊な部隊』と陰口をたたかれている実働部隊にこれ以上問題児を増やしたくない。二人の目がそう物語っていた。


 そこで突然、嵯峨がしおれたように机に伏せた。


「ああ、そうだよ。俺は上に信用無いし、今回の件で醍醐のとっつあんや忠さんの顔に泥塗ったから甲武からの人材の供給はこれ以上は期待できないし、他の国は未だに法術関係の人材の取り合いでうちに人を出してくれるような余裕はないし……」 


 嵯峨はすっかりいじけてぶつぶつつぶやき始める。そんな彼をにらみつけながらかなめはこぶしを握り締めている。一方、カウラは呆れて嵯峨のいじける姿をまじまじと見つめていた。茜も子供のように机にのの字を書いている父親に大きくため息をつくばかりだった。



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