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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 『修羅の国』での死闘  作者: 橋本 直
第四十章 かなめとかえで

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第183話 すべての原因の『姉』

 誠はかえでから逃げるようにして機動部隊の詰め所に飛び込んだ。


「おい、遅かったじゃねえか。叔父貴に何か無茶なことでも頼まれたのか?叔父貴もいったい何考えてるのか分からねえ奴だからな。何を頼まれた?言ってみろ」


 そう尋ねてきたのがかえでの姉であるかなめだったので誠は思わず飛び上がりそうなほど驚いた。


「神前の反応が奇妙だ……何があった。また降格でも食らったのか?」


 こちらも誠の反応が気になるようで、カウラが誠に尋ねてくる。


 第二小隊の三つの机の隣にもう一つ島が出来ていて、そこの末席にアンが座ってすることもなく心配そうに誠を見つめていた。


「ただ、人を迎えに行ってきただけですよ。それ以上の事は何も頼まれていません」


 誠は直感でそれがかえでだと話すとかなめがまた暴れだすことを察して誤魔化すようにそう言った。


「人を迎えに?運転の下手なオメエが?誰を迎えに行ったかくらい教えてくれても良いじゃねえか……誰だ?今度管理部に来るって言う背広組の偉い人か?どんな奴だった。言ってみろ」


 誤解しているかなめに誠は安心のため息をつくと自分の席に腰かけた。


「普通の人ですよ、変な人じゃありませんでした。じゃあ、僕は今回の出動の報告書を作ろうかな!」


 明らかに自分の不安定な感情を誤魔化そうとしたその言葉が誠にとっては逆効果だった。


「その反応からして、テメエ嘘をついているな?まさか……アイツじゃねえだろうな?神前、怒らねえから正直に言え。いいから言え」


 誠は自分の隠し事のできない性格を恨んだ。


「そうですよ。西園寺さんの予想通り、日野かえで少佐と副官の渡辺リン大尉です。僕が車で豊川の駅まで迎えに行きました!全部僕が悪いんです!謝ります!途中で事故でも起こして西園寺さんが覚悟を決める時間でも稼げばよかったんですか?仕方ないでしょ、最初から決まってたことなんだから」


 この言葉を聞いてかなめはそのまま机に突っ伏した。


「来ちゃったよ……この時が……先延ばしにしてくれってあんだけ叔父貴には頼んどいたのに……なんで今来るんだよ……決まってたのは分かるけど……心の準備ってもんがあるだろうが……」


 嘆くかなめを心配してか、カウラは立ち上がってかなめのそばまで行った。


「いつかはこの時が来るとは知ってたんだろ?それに日野少佐は優秀な法術師だと聞いている。神前の負担も減る。むしろ喜ぶべきことなんじゃないのか?確かに人格面、特に性的嗜好に問題があるらしいがその問題は甲武で解決済みだと聞いている。それならば今更貴様がどうこう言う話では無いではないか」


 カウラの言葉が逆にかなめの神経を刺激した。


「全くオメエは仕事の話しかしねえんだな!アイツと一緒にこの部屋で始業から終業まで顔を突き合わせて暮らすんだぞ?その度にアイツが色目を使ってこっち見てきやがる……それに一日中耐えろって言うのか?それにだ。アイツの手の早さは性犯罪者並みだ。その責任は全部アタシのせいだってことになる。そのことを考えると……ウワー!」


 かなめの尋常ではない反応に誠は自分のしてしまったことの重大性を認識した。


「アイツの性的嗜好の一例をあげるとだな。時々待ち針とか持ってきて『僕をこれで虐めてください』とか言って来るんだぞ?アタシは縛るのも鞭で打つのも良いが血が出る系はお断りしてるんだ……どんな教育したらあんなマゾが育つんだよ」


 誠もかえでがバイセクシャルであることは理解したが、マゾヒストでもあることを知ってなんとなくかなめの言うことが分かった。ただ、そんなかえでに教育したのはほかでもないかなめ自身であるとこの部屋の全員がツッコミを入れたかった。


「それは貴様が小さいころから日野少佐をおもちゃにして遊んでいたからだと私は聞いているぞ。庭の木に裸で縛り付けたり、何かというとぶったり蹴ったり……普通だったら虐待として訴えられるのは貴様の方だ」


 正論を言うカウラだが、かなめとかえでの姉妹にはその正論は通じないだろうと誠は確信していた。


「そうですよ!うちの食客に甲武でも禁書になっていることで有名な作品で知られる高名なSM小説の大家が居てな。その食客に言われる通りに仕込んだらアイツは立派なマゾに育った。ただ、アイツもその食客に人の責め方を教わってるからアイツはサディストでもある。どっちもいける口なんだ……カウラ、気を付けろよ。オメエがその餌食にならねえって言う保証はねえ。アイツは男だろうが女だろうが関係ねえからな。いつの間にか縛られて蠟燭を垂らされて快感に打ち震えてる自分に気付いた時には遅いんだからな」


 かなめはカウラに脅すようにそう言った。


「私にはパチンコがある。それだけで十分だ。それに私にはそんな趣味は無い。日野少佐が持ちかけてきても断るつもりだ。それこそ隊長が養女にと選んだ人物だ。話くらい通じるだろう」


 カウラはそう言うとかなめを慰めることをあきらめて自分の席へと戻っていった。


「アタシの前で縛るとか蠟燭垂らすとか……オメー等大概にしろ!」


 ここで機動部隊の主、クバルカ・ラン中佐が切れた。彼女はどう見ても8歳女児である。そしてその性的知識も8歳女児に近かった。


「姐御は良いよな……かえでの奴は幼女には興味ねえから。アイツはロリコンでもショタコンでもねえからそっちの方で警察のお世話になる可能性は少ねえ。クバルカの姐御は楽が出来て良い身分だ。うらやましい限りだよ」


 かなめはそう言うと逃げるタイミングを計るべく、いつも携帯しているホルスターの銃にマガジンを叩きこんだ。



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