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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 『修羅の国』での死闘  作者: 橋本 直
第三十四章 恒例となった祝杯

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第163話 ちっちゃい姐御の断れない酒

「この焼酎旨いですね。芋らしい癖もあまりないし」 


「当たり前だ!アタシが選んだんだ。『駄目人間』の飲んでる甲種焼酎とはわけが違う。あんなのは酒じゃねー!あれは世間の憂さを忘れるためのアルコール摂取飲料だ。ああ、もう半分空いたな。今日は最後まで付き合ってもらうからな。もっと飲め」 


 ランにそう言われ、技術部員とかつてのランの教え子の二人の初めて会う助っ人に来てくれた89式のパイロットに囲まれてビールを並べる作業に従事しているパーラに助けを求めるわけにも行かず誠は立ち尽くしていた。


「姐御の酒だ!飲まなきゃな」 


 ラムをラッパ飲みしながらかなめが笑う。


 逃げ場が無い。こうなれば、と誠は一気にグラスを空ける。


「良い飲みっぷりだ。カウラ、オメーからも酌をしてやれ」 


 そう言って一歩下がるランの後ろに、相変わらず瓶を持つか持たないかを悩んでいるようなカウラの姿があった。


「ベルガー大尉の酌か!うらやましいな」 


「見せ付けてくれるねえ」 


 すでにテーブルに並んでいるつまみの乗ったクラッカーを肴に酒を進めていた技術部員の野次が飛ぶ。


「誠……いいのか、私の酒で」 


 覚悟を決めたと言うように瓶を持ったままカウラがそろそろと近づいてくる。気を利かせた警備部員のせいで誠の前には三つもグラスが置かれていた。誠はそれを手に取るとカウラの前に差し出した。


 真剣な緑の瞳。ポニーテールのエメラルドグリーンの髪を震わせカウラは不器用に焼酎を注ぐ。


「あっ!もったいない」 


 技術部の士官が叫ぶ言葉は誠とカウラには届かない。注ぎすぎて出た酒のしずくに誠とカウラは口を近づけた。二人はそのまま見つめあった。


「あーあ!なんか腹にたまるもの食べたいなー!」 


 かなめが皿を叩く音で二人は我に返った。


「ああ、ちょっと待ってください。チーズか何か持ってきますから」 


 そう言って誠はかなめをなだめようとする。だが誠を遮るように立ち上がった技術部員が首を振りながら外に駆け出していくのが見える。今日は誠はヒーローなのだ。誠自身もその光景を見て自覚することが出来た。


「良い雰囲気ねえ。私も見てるから続きをどうぞ」 


「アメリア。何か誤解しているな。私と神前曹長は……」 


 ニヤニヤと細い目をさらに細めてカウラを見つめるアメリアにカウラは頬を赤らめる。


 当然技術部の兵士達は面白いわけは無いのだが、ランがハイペースで伏見の辛口を飲み続けながら睨みを効かせているので手が出せないでいた。


「まあ、いいや。神前。今日はつぶれてもいいんだぜ」 


 そう言いながらかなめはもうラムの一瓶を空ける勢いだった。アメリアは悠然とテーブルを一つ占拠して高そうなつまみを狙って食べ始めている。


「じゃあ遠慮なく」


 いつもの癖で言われるままに誠はアルコール度数40度のラムを混ぜ物もせずにを胃に流し込んだ。


「馬鹿が……少しは進歩しろ」


 カウラのつぶやきが耳の中に心地よく響くのを聞きながら誠はそのまま意識を失っていった。


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