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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 『修羅の国』での死闘  作者: 橋本 直
第三十三章 『悪内府』脅迫と彼の言う協調

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第156話 憎むべき敵に確認したいということ

「今日はあなたに確かめたいことがあったんですよ」 


 嵯峨はそう言うとポケットから一人の長身の男の写真を取り出した。細い目と鋭くとがった鼻が目に付くどれも長髪の男の写真が三枚あった。


 一つは軍服姿で戦場視察でもしているかのように部下達に指示を出している写真。その軍服は二百年ほど前の遼帝国の将官の着る制服に酷似していた。


 そしてもう一枚は何かの記念行事のようで背広を着て整列している人々の中央に座っているとでも言うような感じの写真。生気のないその顔はどこと無く不気味に見える。


 最後の一枚は雪の中の街頭らしいところで上から隠し撮りされたとでも言うようなアングルで撮られた写真だった。その背景から察するにそれは東和共和国で撮影されたもので、しかもかなり最近のものだとカーンにも分かった。


「なるほど、この男を知っているかと?君にも知らないことが有るんだね、驚きだ」 


 カーンはその三枚の写真を手にとった。すぐに胸元から老眼鏡を取り出しそれぞれの写真を見つめる。嵯峨は黙ってそんなカーンの様子を観察している。


「もし、この男を私が知っていたらどうするつもりだね」 


 写真を見つめながらカーンが尋ねた。


「どうもしません。知らなくても同じですよ。ただこの人物の顔をあなたも近々多く見ることになるだろうと思いましてね。いうなれば私のささやかな贈り物ですよ。情報を盗んで勝手に使った迷惑料とでもしておきましょうか。当然その三枚の写真はお持ち帰りいただいてもかまいませんよ」 


 嵯峨の言葉にカーンはさらによくその写真の男を見つめた。


「見た覚えが無いわけでは無いが、遼州人やアジア人の顔の区別がつかないものでね。劣等人種の区別がつくほど残念ながら私は賢くは無いんだ。残念だ」 


 そう言いながら写真を手元に置くカーンを見ながら嵯峨は取り出した携帯灰皿にくわえていたタバコをねじ込んだ。


「ほう、これでおしまいかね」 


 そう言って笑うカーンに嵯峨は微笑みで返した。


「死に損ないのおいぼれの時間を取り上げるのは私の理性が許しませんから。それに老人を敬う精神は持ち合わせているつもりでしてね。まあいつかはその両手に鉄のわっかを掛けに来ますんで、それまで元気にしておいてくださいよ」 


 それだけ言うと嵯峨は扉を静かに開いてラウンジへと姿を消した。


 同じ犯罪者から出発して、今は追う側と追われる側になった二人。追われる側のカーンは嵯峨が何を考えてこの写真をカーンに託したのか読み切れないのが不愉快でならなかった。


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