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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 『修羅の国』での死闘  作者: 橋本 直
第三十二章 とりあえずの終戦

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第148話 『法術師』の力を知る幼女

「ひでーな。こりゃ。完全に焼けちまってる。ここまでくるとこの仏さんを焼き殺した法術師に言ってやりたくなるよ。『オメーはやりすぎだ』ってな」 


 誠が見下ろすと小さな上司、ランがコックピットの中を覗き込むと静かに手を合わせた。


「クバルカ中佐。法術防御能力のある07式のコックピットの中の人物を外から起爆させることなんてできるんですか?」 


 誠は小さな体でねじ切れた07式のハッチについたパイロットスーツの切れ端を手で触っているランに尋ねてみた。彼女なら喫茶店で誠を襲った法術師の能力を図って見せたように、そう言う法術師との対決経験もあるかもしれない。誠にはそう思えた。


「理屈じゃあできないことじゃねーけどさ。広範囲の法術がすでに発動している領域にさらに介入して目標を特定、そして対象物を起爆させるってなれば相当な負荷が使い手側にもかかるわけだが……。でもこの有様じゃあそれをやってのけたわけだ……その怪物みてーな法術師は。アタシはこういうことが出来る法術師の知り合いは数人いるが、誰もこんなバルキスタンまでやってきて神前を助ける理由がねえ。全く別の法術師の仕業だ」 


 ランが感心しながらコックピットの上のモニターに乗って後ろ向きに中を覗き込んだ。


「それとクバルカ中佐。遼帝国はなんで07式なんていう最新型を選挙監視任務などと言うそれほど緊急性の高くない任務に出したんでしょうか?それだけがどうにも引っかかるんですが……どう考えても発展途上国のあの国にそんなことに予算を割く余裕はないと思うんですけど」


 誠は思い切って次々に沸き上がる疑問をランにぶつけてみた。


「それなんだが……どうも命令書が何者かに書き換えられていたらしい。元々は旧式の89式を送る予定だったのが、なぜか直前になって07式にすり替えられた。アタシにはこんなことをやる存在の答えは一つしか知らねー」


 深刻な表情でランはそう言った。


「『ビッグブラザー』ならやりかねないわね。彼にとっては東和の平和こそがすべてだもの。他がどれほどの戦火にまみれようと一向にかまわない。遼州同盟の崩壊も東和共和国にとっては他国への介入の義務が無くなる分、東和共和国一国だけの平和が近づくことになる。なら、今回は誠ちゃんに死んでもらって、この地を地獄に変えて遼州同盟の無力を示してみせるのも彼の目的には反してはいないわ」


 アメリアはそう言って誠を見つめた。『ビッグブラザー』に死を望まれた誠は何も言えずにその場に立ち尽くした。


「僕は誰か知らない人に弄ばれているんですね……この『特殊な部隊』に居ても……」


 誠は産まれた段階で何者かに監視されていた。この部隊を除隊したいと言った時もアメリアはその後も監視は続くだろうと言った。そして、この部隊にいても何者かが誠を監視している事実を目の前の出来立ての白骨死体が示していた。


「何をそんな難しい顔してるの。世の中そんなもんでしょ。『ビッグブラザー』は私達の事を敵だと思ってることはこれではっきりしたわ。気を付けてね、誠ちゃん」


 そう言うとアメリアは励ますように誠の肩を叩いた。



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