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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 『修羅の国』での死闘  作者: 橋本 直
第三十章 掌の上で転がされて

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第138話 飛行戦車の性能の限界

「カウラさん。かなめさんならあの程度の敵の相手なんて大丈夫ですよね」 


 誠は自分の言葉に懇願するような響きが混ざっていることに気づいた。だが、カウラは首を左右に振ると誠を先導するように通信の地点へ機体を進めた。


『飛行戦車の主砲は230ミリロングレンジレールガン並みの威力だ。重装甲の05式でも直撃を食らえばただでは済まない。さすがの西園寺でもあれだけの数が相手だと厳しい戦いになるだろう』


 嘘の付けないカウラの言葉に誠の心配はさらに募った。ただ、かなめを信じる気持ちだけは切れることが無かったのが誠にとっての救いだった。


『まずいわね。回り込んだのがいるわよ。5両。動きが早いから西モスレムからの義勇兵でも乗ってるかもしれないわ。西モスレムの元正規兵上がり。ちゃんと正規軍で訓練済みだから腕は保証付きよ。それに、ここで敵が出て来るってことは敵の指揮官も正規軍崩れのプロね。当然予備戦力の用意ぐらいしてあって当然ってわけよ。誠ちゃん、気を付けてね』 


 画面の中で珍しく神妙な顔をしたアメリアが親指の爪を噛んでいるのが目に入った。ここまで追い詰められた表情を浮かべるアメリアを誠は初めて見た。


『仕方ないわ。クバルカ中佐!こちらより神前機の護衛を優先してください!作戦の重要度はそちらが上です!お願いします!』 


 上空で誠達を運んできた輸送機の護衛任務にあたっていたランにアメリアは援護を頼んだ。


『わあってるよ!そんなことは!まあベルルカン内戦がらみの条約だとかは嵯峨の隊長に任せることにしてこっちはアタシが引き付ける!カウラと誠はそのまま進撃しろ!』 


 誠の機体のレーダーで輸送機の護衛に回っていたランがすさまじいスピードで降下していた。


「凄い……05式ってあんな速度出ましたっけ……」 


 ランの効果速度はシュツルム・パンツァーとしては重い部類に入る05式としても常軌を逸した速度だった。それが法術増幅装置によるものだとしてもその速度は常軌を逸していた。


『感心している場合じゃないぞ!貴様の持ってる05式広域鎮圧砲に敵の飛行戦車の主砲が被弾すればすべてが終わる!油断するな!』 


 カウラの声と目の前が爆炎に包まれるのはほぼ同時だった。そして誠の頭にズキンと突き刺さるような痛みを感じる。


「法術兵器?炎熱系です!」 


 カウラの機体も炎に包まれていた。誠はすぐさま干渉空間を展開しようとする。


『敵にも法術師がいるな!神前、力は使うな!たかだか自爆狙いのテロリスト風情に私が遅れをとるわけがないだろ!』 


 対法術装備を搭載しているもののカウラの機体は発火能力者、『パイロキネシスト』の炎で包まれていた。


「でも!」 


 誠はそれ以上話すことができなかった。モニターの中のカウラのエメラルドグリーンの瞳が揺れている。


『行け!神前!今はオメーだけが頼りなんだ!』 


 ランが敵の遊撃部隊と接触しながら叫んでいる。そう言いながらランは五機の飛行戦車を次々とダンビラで叩き斬っていた。


「じゃあ!行きますから!クバルカ中佐もお気をつけて!」 


 誠はそう叫ぶと警備部の派遣部隊から出されている信号に向けて機体を加速させた。


「やっぱり付いてくる……二両」 


 誠は自分の機体の武装を確認する。両腕が法術兵器でふさがっている以上、本体の固有武装に頼るしかなかった。旧式の飛行戦車M5の200ミリ主砲相手ならどうにか05式の重装甲で対抗できるが、05式と一つ世代の違うだけの開発時期の飛行戦車M7に出くわせばM7の誇る230ミリロングレンジレールガンと同クラスの主砲の雨を食らうことになる。誠機が今装備している空対空ミサイルなど目くらまし程度の効果しか期待できなかった。


「要は逃げおおせればいいんだ!逃げるぞ!いつも隊長が言ってるじゃないか、逃げるってのが一番大切なことなんだって!逃げ切って見せる!」 


 自分に言い聞かせる誠だが、明らかに恐怖のあまり全身の筋肉が硬直していくのを感じていた。そして視線はレーダーの中で接近を続ける二両の敵飛行戦車の信号に吸いつけられた。絶え間なく襲い来る容赦の無い恐怖。心はその言葉で満たされて振り回された。


 二両の敵飛行戦車は機動性に劣る05式に確実に近づいてきていた。逃げ切ることは不可能だった。戦闘経験がこれで二度目の誠にもその残酷な事実は分かった。


「やっぱり無理ですよ……僕には……所詮僕にできることはここまでだったんですね。どうやらこれまでのようです」 


 アメリアに聞かれているにもかかわらず誠は自然にそうつぶやいていた。



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