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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 『修羅の国』での死闘  作者: 橋本 直
第三章 あまり役に立ちそうにない兵器の『実験』

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第13話 扱いの難しい兵器

「今日の新兵器……着想としては非常に人道的で効果的な兵器なんですが、使い方が難しいんです。本当に使うのは誠さんでいいのかな?あの人優しすぎますから……その効果範囲の広さとか、誠さん知ったら躊躇(ちゅうちょ)しちゃうかも」


 荷台の外からのひよこのつぶやきが誠の耳に届いた。『人道的』な兵器と言うものは誠には想像もつかなかった。そして効果範囲の広さと言うことは、これから実験で誠が使用する兵器が誠の使う『光の剣』とは全く性格が異なる兵器であることを意味していると誠は感じた。 


「駄目ですよひよこさん。中で神前さん着替えているんですから。それにあの兵器の詳細については軍でもトップシークレットですから。相手に存在を知られた時点で意味がなくなる兵器なんだってクバルカ中佐も言ってたじゃないですか」


 ひよこの隣に居るらしい西の言葉がパイロットスーツに袖を通す誠の耳にも届いてくる。 


「でも……私不安なんです。あの兵器の法術師に与える負荷は『光の剣』の比じゃないんですよ。しかも、発動には安定した法術師の精神力が要求されるので……優しい誠さんに耐えられるかどうか」


 ようやく着替えが終わって出て行くタイミングを見計らっている誠だったが、ひよこのそんな言葉に出るに出られない状況になっていた。 


「神前さんを信頼しましょう。それより……神前さんも一応六機撃墜のエースなんだから……パーソナルカラー位やってもいいのになあ……。神前さんはいつまでこの東和陸軍標準色のオリーブドラブの機体に乗るつもりなんだろう?せめていつも西園寺さんが言うようにノーズアートを入れるとか撃墜マークを入れるとかすればかっこいいのに」


 西はそう言うが誠は人を殺したことを自慢する気にはなれなかった。だから機体は標準色でノーズアートも撃墜マークもつけないことは誠なりのこだわりだった。


「誠さんは優しいから……そういうことはしないんですよ、きっと」


 そんな誠の心を察してか、ひよこは優しい口調で西にそう言った。


「そんなもんですか?島田班長は『アイツには気合いが足りねえんだ!だから自分を褒めることが出来ねえ!俺達に新しいノーズアートを考えてくれって言って来るくらいにならなくちゃいつまでたっても半人前だ』っていつも言ってますよ。優しさじゃ戦場では生き残れません」


 誠の暮らしている寮の寮長でもある整備班長の島田は、誠を指導の名目で鉄拳制裁を浴びせつつ、誠にいつも『もっと自信持てや……オメエは強ええんだから』と言っていた。誠も『光の剣』を使える以上敵にとっては脅威以外の何物でもないのだが、それでも自分をそれほど特別な存在だとは思えなかった。


「誠さんは本当に優しい人なんです。きっとそうですよ、きっと。それに私の『ヒーリング能力』でどんな怪我をしても私が誠さんを守って見せます。優しさが命取りになるなんてことは有り得ません」


 完全に出て行くタイミングを逸した誠は西とひよこの雑談を聞いていた。


 誠は第二惑星系国家、『甲武国』で起きたクーデター未遂事件、通称『近藤事件』での初出撃六機撃墜のエースとして自分の愛機にオリジナルの塗装を施すことを許される立場となった。しかし今でも誠の機体は特にそれらしい塗装は施されていなかった。


 理由は誠自身が気乗りしないことと、アメリアが『絵が得意な誠デザインの痛いキャラで』と言うのに対してカウラとかなめが猛反対しているからだった。誠の機体にはまだ東和陸軍標準色の塗装のままで、肩に部隊章である『大一大万大吉』が記されているだけだった。


「ごめんね!お待たせしました!」


 誠は漸く意を決してひよこと西の間に飛び出していった。二人は明らかに遅れて登場した誠に少しばかり責めるような視線を向けてきた。


「どうだ?調子は」 


 誠がトラックのキャビンを出飛び出したタイミングで、作業服に身を包んだランが歩み寄ってきた。どう見ても八歳女児にしか見えない上官に誠達は礼儀程度の敬礼をする。その姿に苦笑いを浮かべるとランは手にしていた書類に目を通した。


「とりあえず神前は05式乙型の起動、西達は立ち会え。ひよこはアタシと一緒にデータ収集だ。観測するために本部棟に行くぞ」 


 ランはそれだけ言うともと来た道を帰り始めた。


『了解しました!』 


 誠達は今度はそれらしく一斉に敬礼をする。ランがそれを返すのを見るとすぐに西はトレーラーの運転席に走った。誠もまた他の整備班員とともにトレーラーから降りて荷台に積まれた05式乙型に被せられたシートをめくる作業を始めた。


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