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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 『修羅の国』での死闘  作者: 橋本 直
第二十八章 『鬼姫』の面目

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第128話 母の入知恵

「それより義姉さん、かえでの問題行動の『マリア・テレジア』計画。吹き込んだのはあなたですね。ネタは上がってるんですよ。白状してもらいますよ。あれには俺も迷惑してるんだ。全部かなめ坊の調教のせいだとか抜かす馬鹿が居てね。かなめ坊にそんなことを考える頭は無い。その点、義姉さんなら政治的配慮からそう言うことでも平気でやりかねない」


 ようやく血も止まり落ち着いてきた嵯峨はそう言って目の前まで薙刀を持って歩いてきた康子を見上げた。かえでは気を利かせて康子の手から薙刀を受け取ってわきに控える。


「あら、誰がそんなことを言ったのかしら?新ちゃん一流の勘?ネタは上がってるってことは……相手の誰かから聞き出したの?それはまたご苦労様」


 康子はかえでが既婚の若い貴族の女性を狙って恋仲に持ち込んで自分のクローンを孕ませると言う『マリア・テレジア』計画についてとぼけて見せた。


「俺の勘と言うより、これまでの義姉さんの言動から導かれた推論ですよ。義姉さんは表立って戦うより裏に回って(はかりごと)を企む方が性に合ってると常々言っているじゃないですか。それならば元々女性にモテたかえでをそそのかしてそんな計画を実行に移させるのはある意味、理にかなっているようにおもえるのですが。かつて、自分の娘をすべての王室に嫁がせて自国の覇権を達成しようとしたマリア・テレジア。義姉さんに似た策士だ」


 ようやく身体が治った嵯峨は目の前でその様子を満足そうに見つめている康子に向けてそう言った。


「見事な推論ね。半分は当たり、半分は外れ。そもそも、人妻に手を出し始めたのはかえで自身ですもの。私は常々力押しだけじゃダメだってあの人に言ってるんだから。裏から手を回して自分の目的を達成する……あの人にはそう言うところが欠けてるのよ」


 康子の言葉にかえでは照れながら頭を搔いた。同時にここで話題に出た西園寺義基についてその強引なやり口について康子なりに含むところがあることが嵯峨にも分かった。


「かえでよう。お前なあ……俺のかみさんだったエリーゼじゃ無いんだぞ。夫が居る妻に手を出した男はこの国では『姦通罪』で罰せられる。でも、それが女だったら……その法の盲点を突いたつもりだろうが、問題行動は問題行動だ。義姉さんも義姉さんだ。それを政治的に利用できると変な計画を吹き込んで。義兄さんのやり方に文句があるなら堂々と正面から言ったら良いじゃないですか。俺を通じて言わせるなんて、罪なことですよ」


 それ以上の言葉を嵯峨は口にすることが出来なかった。目の前の康子の表情は相変わらずの笑顔だが、それがいつ怒りの表情に変わるかと思うとさすがの嵯峨も口をつぐまざるを得なかった。


「でもおかげで孫の顔が早く見られそうよ。かなめちゃんはあんなだから結婚がいつになるか分かったものでは無いし、その点この計画ならかえでの娘が沢山見られる。我ながら良いアイデアだと思ったのよ」


 康子の屈託のない笑顔に嵯峨は苦笑いを浮かべるしかなかった。


「しかし、ことが公になった以上は……かえでの身の上。俺の『特殊な部隊』で預かります。これ以上この国に迷惑をかけるわけにはいかない。義父(ちち)としての責任と言うものがある」


 珍しく深刻な表情を浮かべて嵯峨はそう言った。


「よろしくお願いね。できればお婿さんの方も探してくれると嬉しいんだけど。でも、私としてはもう目星がついているんだけどね。もう、相手のお母様からは許可をいただいているし」


 相変わらず本心を見せない笑顔を浮かべて康子はそう言った。



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