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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 『修羅の国』での死闘  作者: 橋本 直
第二十八章 『鬼姫』の面目

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第127話 不死の身体の再生能力

「義父上?そんなにしゃべってもうよろしいのですか?」 


 何度見ても傷跡が見る間に治っていく嵯峨の身体の不思議な有様にかえでは慣れることが出来なかった。自身は法術師であるが、かえでは『不老不死』ではない。怪我もすれば老いもする。いずれ、目の前の二人の不死人より先にこの世を去ることになるだろう。その事実がかえでに嵯峨の回復能力を恐れさせている原因の一つだと彼女は思っていた。


「やっぱ久しく本気で剣を振っていなかったのがいけないんですかね、義姉さん。さっき言った二人の師匠がいくら言っても稽古をつけてくれないものだからこのざまですよ。しばらくはここに逗留して鍛え直してもらいましょうか?」 


 嵯峨としてはせめてランにだけでも稽古はつけてもらいたかったが、『不殺不傷』を座右の銘としているランは嵯峨との稽古を頑なに断っていた。


「まあ、それも良いですけど。新ちゃんにもお仕事があるでしょ?一応、社会人なんだから仕事をサボっちゃだめよ。どうしてもと言うのなら私としてはいつでも稽古をつけてあげるつもりだけど。それに茜さんからは新ちゃんはそう言うことを言って遊郭のある甲武に長居して遊郭に遊びに行く手はずを整えるはずだから気を付けてって言われてるのよ。本当に娘に信用されてないのね、新ちゃんは」


 縁側に腰掛けて先ほどかえでが運んできた玉露をすする康子はそう言って頷いた。嵯峨は咳き込んで肺にたまっていた血をすべて吐き出すと何事も無かったかのように立ち上がった。


「茜の奴、余計なことを言いやがって……義姉さんなら、渋ちんの義兄貴(あにき)と違って、小遣いくらいくれると踏んでたのに」


 嵯峨は小声でそうささやいて悔しがった。


「いつもの事ながら……義父上の回復力の早さは不死人の中でもトップクラスですね。もうほとんど傷が治ってる」 


 かえでは義父である嵯峨がすでに戦える状態まで回復しているのを見てそう言った。法術師の中のごく一部に見られる強力な自己再生能力の発現。その能力を義父が持っていることは物心ついたころに何度か冗談で手に穴を開けてはその直る様を見せると言う少し考えてみれば異常ともいえる義父の芸を見て笑っていた時代から分かっていた。


「私も丁度いい稽古相手が居なくて腕が鈍るんじゃないかと心配で……新ちゃんと稽古するのは久しぶりだから張り切っちゃったわ」 


 実母である康子の無邪気な言葉にかえでは肩をなでおろした。かえでが二人の勝負を見ていたときは思わず運んできた玉露を落しかねないものだった。


 義父の剣術の腕、そして干渉空間の時間軸をずらすことで発動する人間の限界を超えた動きですら康子の前には子供の遊びとでも言うべきものでしかなかった。一方的に薙刀の攻撃が嵯峨の急所を狙い放たれる。なんとかそれをかわそうと木刀を繰り出す嵯峨だが、着実にその一太刀一太刀ですぐには回復不能なダメージを受けた。


 かえでから見てもその戦いはあまりに一方的すぎた。


 そして今、立ち上がってかえでの運んできた湯飲みに手を伸ばす嵯峨だが、その稽古着は朝下ろしたばかりだというのにすでにぼろ雑巾のようになっていた。


「それにしても新ちゃんの回復力は早いわよねえ。私の回復力はもう少し遅いのよ。新ちゃんはアメリカ軍に捕まっていた時人体実験で何かいじられたのかしら。兵隊さんらしくすぐに戦場に復帰させるために回復力を高める何かの実験とか」 


 嵯峨のことをいつも母が『新ちゃん』と呼ぶのは嵯峨が故国を追われ、西園寺家に引き取られた時に名乗った『西園寺新三郎』と言う幼名によるものだとは知っていたが、かえではこの抜け目の無い策士でもある義父を『新ちゃん』と呼ぶ母の態度にいま一つなじめなかった。ただ、かえでも逆らえない『甲武最強の存在』である母ならば、『悪内府』の異名で恐れられている嵯峨ですら太刀打ちできないことはかえでも分かっていた。


「まあそれも有るんじゃないですか?俺が遼にいたころに力が封じられていた時もこの力だけは何とか使えましたからね。こうしてアメリカさんに実験動物にされて『壊れた法術師』になった今でも回復能力だけはあの時より早いくらいだ。ただ、回復力は意識に依存するもんで不安定なのが玉に瑕ですが」 


 そう言いながら照れ笑いを浮かべると嵯峨はかえでが差し出した湯飲みの玉露を飲み干した。



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