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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 『修羅の国』での死闘  作者: 橋本 直
第二十七章 現場に派遣されたヤンキーの先輩

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第124話 ヤンキー技術屋の仕事

「精が出るねえ」


 東和陸軍の士官に声をかけられ、島田正人准尉は飛行戦車のエンジン回りのカウルから顔を出した。その表情は機械いじりの好きな島田らしくご機嫌そのものだった。


「技術屋のサガでね……自分のミスで虎の子の機体がぶっ壊れたらシャレにならねえでしょ?それに……いつこいつの出番が来るかもしれないし」


 そう言って島田は戦車の下から這い出して伸びをした。そしてそれまで我慢していたタバコをポケットから取り出すと東和陸軍士官が嫌そうな顔をするのを無視して火をつけた。


「確かにな……このままじゃ間違いなく政府軍と反政府武装勢力の衝突は避けられない……いや、もう他の地域では反政府武装勢力が攻勢に出ているそうじゃないか。しかし、君の言うようにあてになるのかね……あの『特殊な部隊』は。これだけ広がった戦場をどうやって収めるつもりだね、彼らは」


 戦車長の士官の問いに胸のポケットからタバコを取り出しながら島田はほほ笑んだ。


「連中ですか……あてになりますよ……だってあの『近藤事件』を制した連中です。それに今回は切り札もありますんで。広い戦場で、敵味方入り乱れた状態に最適な『新兵器』。たぶんその威力を知ったらアンタは腰を抜かしますよ」


 島田はそう言って笑いかけた。東和陸軍の兵士達は誰もが暗い表情を浮かべる中で、あっけらかんとした島田に不審そうな視線を投げる。


「今回は敵味方入り乱れた乱戦状態なんだぞ……あの『近藤事件』で使った『剣』を使えば味方の損害も凄いことになる。『新兵器』……兵器と言うものは人を殺すものだ。そう思えば我々に希望を持つ余地などもう残っていないんじゃないかな」


 戦車長の隣の砲手の下士官のつぶやきに島田は満面の笑みで答えた。


「そんなあの神前と言う男が力任せだけの男だなんて判断されたら困りますね。それはうちを舐めてる態度だ。伊達に『特殊な部隊』と呼ばれているわけじゃないんですよ……すでに仕込みはかなり進んでるって話ですよ。大船に乗った気でいてくださいよ……ああ、時間になったらシェルターに隠れてくださいね、さもないと……後々面倒なことになるんで。理由は明かせませんが、すべてが終わった後、アンタ等はシェルターの外の光景を見て腰を抜かしますよ」


 自信ありげな島田の態度を見ても戦車長の士官の表情は冴えなかった。


「君の言うこと……本当に信じて良いんだね?それになんでわざわざ戦車乗りがシェルターに隠れなきゃならないんだ?どういう兵器なんだ、その『新兵器』とやらは。教えてくれてもいいじゃないか」


 タバコをくゆらせる島田に士官は気難しい表情を浮かべてそう尋ねた。


「内緒ですよ……これはうちの隊長から直々に命令を受けてましてね。これだけは絶対に秘密なんです。味方でも敵でも『新兵器』については一切しゃべるなってね」


 島田は余裕のある態度で吸い終わったタバコを投げ捨てると、遠くを見るように地平線に目をやった。



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