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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 『修羅の国』での死闘  作者: 橋本 直
第二十四章 戦地への出撃の時

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第110話 武器使用制限の無い初めての出動

「甲一種か……燃える展開になりそうじゃねえか。思う存分暴れて良いってことだな……これから先が楽しみだぜ」 


 誠を振り返るかなめの視線に危なげな喜びのの色が混じる。それはかなめが時折見せる『殺人者』の目だった。誠は冷ややかに笑いながら周りを見渡した。


 一方で、これから戦場に送られると聞いて誠は明らかに動揺していた。


 司法局実働部隊のあらゆる武装と能力を制限無しに使用可能な甲一種出動。以前の甲武の軍部貴族主義者のクーデターである『近藤事件』ですら運用艦『ふさ』の主砲の使用制限などがある甲二種出動であった。隊員達の視線は壇上のランに集まった。


「おー!今見て通りだ、やる気を見せろってこった。甲一種だぞ、甲一種。つまりやりたい放題だ。使える武器は全部使う。それが今回の作戦内容だ」 


 そう言いながらランは隣に立つ管理部部長代理の菰田邦弘主計曹長に目配せをした。再び画面に全く別の画像が映し出された。そこには見慣れない形状をした大型輸送機が映し出されていた。


「P23。東和軍北井基地の所属の機体だ。去年一号機がロールアウトしたばかりの最新鋭機だぞ!これに第一小隊……ベルガー!」


 ランは得意げにそう言うとカウラに顔を向けた。 


「はっ!」 


 ランに呼ばれたカウラが一歩、歩み出る。


「お前んとこの三人がこいつで敵陣に斬りこんでもらう。輸送機のパイロットは……菰田!」 


 ランは今度は近くに立つ管理部部長代理の菰田に目を向けた。


「はい!」 


 モニターを操作していた菰田が立ち上がった。


「お前さんはこいつの飛行時間が一番長いんだ。パイロットをやれ。オメーの仕事はそろばんを弾くことだけじゃねーことをここに居る全員に教えてやる滅多にねー機会だ。ありがたく思え」 


「了解しました」 


 そう言ってカウラに微笑みかける菰田をカウラは完全に無視した。そんな中、思わず笑いを漏らすアメリアをランの視線が捉えた。


「クラウゼ……。テメエが前線で仕切れ。そんぐらいの仕事はしろよ。今回は運用艦『ふさ』の母港まで移動する時間も惜しい。だから、戦場の指揮はクラウゼが執れ」 


 ランの言葉通り、ゲリラの進行速度から考えれば、今から運用艦『ふさ』の母港、多賀港まで05式を運んでいたらその間に戦場が拡大することは避けられない。誠は空中輸送と言うこれまで経験したことのない戦場を体験するだろうことを想像して緊張に震えた。


「アメリア・クラウゼ中佐。了解しました」 


 アメリアがすぐにまじめな顔で敬礼する。


「第一段階担当は以上!それでは各員、指示書のディスクを受け取って解散!」 


 そのままランは演台から下りる。カウラ、菰田、アメリアがそれぞれランの横に立っていたパーラからディスクを受け取っている。


「おい、チビ。あれだけ広がった戦線に三機のシュツルム・パンツァーでどうしろって言うんだよ。あれか?いちいち神前が『光の剣』を展開して敵を斬り殺しまくれってことか?こいつの身体が持たねえよ」 


 かなめのその言葉で誠は我に返った。広大な領域に戦線を拡大させたイスラム武装勢力をたった三機の戦力でどうこうできるものではないことは誰にでも分かることだった。だが、そんな作戦の立案を依頼されたランには奇妙なほどに余裕が感じられた。


「わからねー奴だな。東和宇宙軍じゃなくてオメー等にお鉢が回ってきた理由。考えてみろよ」 


 そう言うランは勝利を確信しているように見えた。


「確かに戦線は急激に拡大しているな。でもよー配備されている治安維持部隊も激しく抵抗して戦線は入り乱れて大混乱状態なんだぜ。そこで核だの気化爆弾だの敵味方関係なく皆殺しにするような兵器を使ってみろや。同盟崩壊だけじゃすまねー話になるだろ?そこで先日の『新兵器』だ」 


 不適な笑いを浮かべる一見少女のようなランの言葉に誠もようやく事態を飲み込んだ。


「05式広域鎮圧砲?」 


 なんとなく誠の口をついたのはその言葉だった。ランは笑いながら頷いた。同時にこの状況があの実験が行われた時から嵯峨によって仕組まれていたものだと分かって、誠はあの『駄目人間』の脳内構造に恐怖を覚えた。



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