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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 『修羅の国』での死闘  作者: 橋本 直
第二十四章 戦地への出撃の時

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第108話 『特殊な部隊』の初動体制

 いつものように実働部隊の部屋の端にある時代遅れの端末で備品の発注書を作成していた誠の目の前の画像が緊急呼び出しの画面に切り替わった。


「おう、それじゃあハンガーに集合!」 


 まるでそれが起きるのを待っていたかのような表情を浮かべているランの言葉にかなめやカウラも黙って立ち上がった。


「なんですか?今回は?またどこかでクーデターでも起きるんですか?宇宙は嫌ですよ。また一週間も医務室に缶詰なんて御免ですから」 


 誠の本音はそんなものだった。このような呼び出しは誠は二回目だった。前回は豊川の北にある久留米沢での岩盤崩落事故の支援出動だった。その時はシュツルム・パンツァー05式のパワーを生かしての作業で県警に感謝されたのを覚えている。あくまで災害出動と言う平和な出動だった。


 しかし、今回のランの表情を見ればその時の人命救助の時とはまるで違う『戦場』を前にした時のような緊張した面持ちが見て取れた。


 それはむしろ誠の最初の出撃、『近藤事件』を前にした時のそれにあまりに似ていると誠には見えた。


「ぐだぐだ言ってねえで早くしろ。オメエはいつも一言多いんだ」 


 かなめも誠と同じようにこの出動が戦闘を伴うものだと分かっているようにそう言って誠を小突いた。


「ぶたなくてもいいじゃないですか!もうかなり胃腸も乗り物に慣れてきたんで宇宙だって平気です!もう、以前の僕じゃ無いんですから!」 


 そう言って誠はランの顔を見上げた。感情を隠すと言うことが苦手なランには明らかにこの事態を予測していたような落ち着きが見て取れた。


 扉を開いて廊下に出れば、すでにハンガーには整備班員が整列して直立不動の姿勢をとっていた。管理部の隊員に続いて階段を駆け下りると、さも当然と言うように背広姿の誠の知らない顔の小太りの男が整列していく隊員を眺めていた。誠はその様子があまりに自然なのが気になったが、とりあえず全員がそのことを指摘しないので黙って整列の中に入った。


 ハンガーに整列する隊員だが、技術部はバルキスタンに派遣された島田の姿が無かった。そして運航部では島田の支援の為に島田の『彼女』のサラの姿も無かった。いつもよりバックアップ要員が少ないこともあって、隊員達が整列する姿は誠には少し寂しい光景に見えた。


「遅いぞ、とっとと整列しろ。今回の出動は時間との戦いだ!一分一秒を無駄にするんじゃねー!」 


 厳しい口調のランの前に隊員達は階級ごとに順番に整列した。そんな誠達の前には待機状態の大きな画像が展開していた。前回の事故の時とは指揮官達の表情はまるで違っていた。最後に駆けつけてきたアメリア麾下(きか)のブリッジクルーの女性隊員達もいつものふざけあっている表情を一変させて緊張した表情で整列する。


「オメー等、いいか?これは最初から予定されていた緊急事態だ。すべては仕組まれていた。まあ騙されたと諦めて話を聞けや」 


 居残りの整備班員を整列させ終えた班長代理の技術部員にランが声をかける。そしてそのまま目の前に置かれていたお立ち台の上に上がった。


「一言言っておく!今回の緊急出動は戦闘を前提としたものである!各隊員においては常に緊張した状況で事態に対処してもらう必要がある。各員、気を引き締めて職務に当たってほしい」 


 ランの舌っ足らずの独特のイントネーションが誠のつぼにはまって思わず噴出しそうになった。前に立っていたかなめはそれに気づいて誠の足を思い切り踏みしめた。足の痛みに涙を流しそうになる誠の前のスクリーンが起動した。


「戦闘を前提とした緊急出動……僕にとってはこれが初めてだな」


 誠は自分自身に言い聞かせるようにそう言った。


「それがこの『特殊な部隊』の設立された理由だ。これからもこういう機会は多いだろう。少しでも慣れておくことだ」


 誠の前に立つカウラは励ますようにそう言った。誠はその言葉に静かに頷き、スクリーンに画像が映し出されるのを待った。



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