129 チョコパフェは美味しいよね
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3巻は6月18日発売です。
よろしくお願いします。
129 チョコパフェは美味しいよね
週末になると、フレドリックが『猫御殿』に訪れた。
連絡したとおり、裏口から入ってくれる。
俺を見た途端、笑顔になったが、目がものすごく怒っていた。
あー、ヤバイ。
ほんとマジだ。
だけど、ここで怒鳴ることはせずに、黙って俺の部屋まで着いてきてくれる。
この沈黙が、なんか怖い。
部屋に着いた途端、怒鳴りかけたフレドリックだったが、そこにタイミングよく声がかけられた。
「フレドリック様、ご無沙汰しております」
ケヴィンだ。
俺のベッドに座りながら、ニコニコと愛想よく笑っている。
「フレドリック様、どうぞこちらへ。生憎、お茶しかございませんが、ご要望でしたら、お店のメニューからお好きなものをご用意させていただきます。いかがされますか?」
そして、すかさずリチャードがフレドリックを席に案内しつつ、ご機嫌を取ってくれた。
うう、ふたりともありがとうな。
フレドリックに用意した席は、ふたつあるベッドの間にテーブルを置いた、その奥だ。
店から借りてきた椅子だから、座り心地はいいはず。
そしてテーブルの上には、ティーポットとティーカップを並べてある。
これもリチャードが用意してくれたものだ。
完全に気勢を削がれたフレドリックは、ため息をひとつついて、おとなしく席に着いた。
「じゃあ、リチャード。悪いけど、甘いものをもらえるかな。予定外のことが多くてね。少しイライラしているんだ」
誰かさんのせいでね、と睨まれる。
だから、悪かったって。
「そうですね、甘いものは疲れを癒やしてくれますから。それでしたら、パフェはいかがですか? 確か、チョコレートパフェがお好きでしたよね」
「ああ、それで頼むよ」
人数分のお茶を淹れてから、リチャードは一礼して部屋を出て行く。
それを待っていたかのように、フレドリックがドアの側で立ったままの俺を睨みつけた。
「――で、説明してもらえるんだろうね」
「もちろん」
ここで逆らうわけがない。
そもそも、そのために呼んだのだから。
「ではまず、なぜこのメンバーなのか説明してもらおうか。その男は誰なんだい?」
ケヴィンとは反対のベッドに座っているジンを示す。
その横で、なぜかブタ猫が丸くなっていた。
「ええと、こいつのことは長くなるんだけど……一言で言うなら、精霊の王かな」
ブフゥ! と、ケヴィンがお茶を吹いた。
フレドリックも目を丸くしている。
ブタ猫は欠伸をしていた。
「いまは俺の友達だな。今回、助けてくれた恩人でもある。あとは……」
「待ってくれ。……精霊の王だって?」
話についてこられないのか、フレドリックがストップをかけた。
「ああ、俺と契約している。名前はジンだ」
フレドリックはまじまじとジンを見た。
いまのジンの格好は、白いシャツに猫御殿のエプロンをして、長い髪をポニーテールにしている。
……神秘性の欠片もないな。
いつもの服を着させりゃよかった。
「本当に?」
「疑うなら、それでもいい。人間は疑り深いからな。特に王族という生き物はそうだ」
ジンは冷たく言い放つと、腕を組んで目を閉じる。
相変わらず、王族には容赦がないな、こいつ。
「わかった。事の真偽はともかく、テオが必要だと判断したことは納得した。だが、彼は?」
ジンの同席を認めたフレドリックは、今度はケヴィンに目を向けた。
「ケヴィンか? 手紙を届けてくれた交換条件だな。ケヴィンも〝黒い稲妻〟のことを知りたいみたいだから」
別に構わないよなと、言うと、フレドリックが盛大に溜め息をついた。
「テオ……君って奴は……。もう少し、隠すということを覚えるつもりはないのかい?」
「なんで? ケヴィンに隠す必要なんてないだろ」
そう言うと、なぜかフレドリックもケヴィンも、目を丸くした。
「俺がこんなことを言うのもなんだが、なぜそう思う? 俺とフレドリック様は面識はあまりない。ましてや、こういった相談ごとなんて信用されないものだ。なのになぜ?」
ケヴィンが尋ねる。
こういう重要な話は信用が大事だと。
そんなもの、決まっているじゃないか。
「俺が知ってるからだよ。ケヴィンは信用できるってな。それに、めちゃくちゃ頼りになる。それで十分だろ」
すると、ふたりとも絶句した。
そしてケヴィンが呆れたように呟く。
「……たいした自信だ」
「本当にそうだからな。これでも選んでいるんだぜ。リチャードに話す気はないし。あいつに説明するのは、もう少し、物事がはっきりしてからがいいと思う」
「まぁ……そうだな」
ケヴィンが顎を撫でながら同意する。
「なるほど。じゃあ君は、今後ゴルドバーグ卿も巻き込むつもりなんだね?」
「だって、俺たちだけでなんとかできる話じゃないだろう? だったら、信頼できる人に話を通していたほうがいい。だから、フレドリックは、最初に北西のゴルドバーグ領へ行くことを薦めたんじゃないのか?」
「……まいったね」
俺に予測されているとは思わなかったのか、フレドリックは半笑いで椅子にもたれた。
「わかったよ、君の言うとおりにしよう」
こうして俺たちの会議が始まった。
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