表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
男爵家の六人目の末娘は、○○を得るために努力します  作者: りな
第3章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

84/175

オルフェウスの能力

オルフェウスは、驚愕の色を隠しきれなかった。

しかし、なんとか言葉を絞り出す。


「確かに、弓の実力は認めよう。だが……国の使いだという証拠は、何も無いのではないか?」


セラフィーネは涼しげに微笑み、静かに応じた。


「そうですね。突然やって来て名乗られても、困るのは当然です。では、特別に国の証として、これをお見せしましょう。……人払いをして下さい」


彼女の言葉に従い、部屋から兵士たちが退出する。

セラフィーネは首に下げていたペンダントを外し、掌に掲げた。


「これは、この国で行われる“鑑定の儀”を簡易化した魔道具です。誰でも、その者の能力を調べることができます」


「まさか、そんな道具があるとは聞いたことが無い」

エドモンドが目を見開く。


「そうよ。鑑定とは本来、聖職者が特別な力で行う、厳正な儀式のはずよ」

マルグリットも疑念を隠さない。


「では、実際に試してみましょうか?」

セラフィーネの声は穏やかだが、確信に満ちていた。


「なら、俺を」

エドモンドが一歩前に出る。


セラフィーネはペンダントを自らの手のひらに乗せ、彼の手をその上に重ねるよう促した。


「……あなたの能力は、……騎士ですね」


驚愕するエドモンド。

「合っている……」と小さく呟いた。


「いや、偶然かもしれん」

なおも疑念を拭えぬオルフェウスが、自らも鑑定を求める。


「良いですよ」

セラフィーネは軽く頷いた。


オルフェウス、ペンダントの上に手を重ねる。


セラフィーネは戸惑った様に言う。

「では、あなたは……。言ってしまっても良いのですか?」


「かまわん」

オルフェウスは毅然と答える。


セラフィーネは静かに告げた。

「あなたの能力は……料理人です」


しばし沈黙が流れる。

「……合っている」

オルフェウスは項垂れた。


「父上、本当なのですか? ずっと能力は、無いと聞いていましたが」

息子の問いに、オルフェウスは苦い顔で答える。


「料理人など……言えるか。……どうやら、本物のようだな」



「わかって頂き、何よりです」

セラフィーネはにっこりと笑みを浮かべた。


セラフィーネは穏やかな声を保ちながら、続けて言った。


「リリアーナ様、いえ、この場では敬称をやめましよう。……問題は、リリアーナの能力です。皆様はご存知ですか?」


場にいる誰ひとりとして、答える者はいなかった。

静寂の中、セラフィーネの視線がゆるやかに巡る。


「知ってしまえば、後戻りはできません。……それでも、知りたいですか?」


リリアーナが小さく息を吸い、はっきりと答えた。


「私は……知りたいです」


彼女は八歳の時、本来受けるはずの鑑定の儀式を受けていなかった。

そのため、ずっと自分の能力を知らぬまま過ごしてきた。

それでも、やはり知りたかった。


「リリアーナ。……能力を他の人に知られても良いのですか?……カイルスは、私が信頼を置ける人物です。口は堅いと、お約束しますが」

セラフィーネは念を押すように問いかける。


リリアーナは周囲を見渡した。

エドモンド、マルグリット、そしてオルフェウス、信頼できる顔ぶれを見て、静かに頷く。


「ここにいる人なら……大丈夫です」


「わかりました」

セラフィーネは優しく微笑み、ペンダントを掲げる。


「では、リリアーナ。ここに手を」


リリアーナは小さく緊張した息を吐き、そっとペンダントの上に手を重ねた。


セラフィーネは目を閉じ、慎重に言葉を紡ぐ。


「あなたの能力は――ゼネラリスト。……後天的に、調合、剣、狩人、身体強化、弓、緑の手、毒耐性、リュート弾き……そして、精霊の愛し子、ね」


その声はあまりに静かで、しかし重く響いた。


誰もが息を呑み、ただ沈黙が空間を支配した。



セラフィーネは言葉を継いだ。


「リリアーナ――ゼネラリストというのは、努力をすれば、何でも出来るという能力です。

ただし……どの道を選んでも、その専門には一歩及ばない。不十分な力でもあるのです」


リリアーナは小さく瞬きをし、じっと耳を傾けていた。


「そして……精霊の愛し子。これは、文字通り、精霊に愛される者を意味します」


その声音は淡々としていたが、場にいる誰もが、ただ事ではない響きを感じ取っていた。


セラフィーネは静かに視線を巡らせ、オルフェウス、エドモンド、マルグリット、そしてリリアーナを一人ひとり見つめる。


「……これから申し上げることは、極秘の話になりますが。……続けても、よろしいでしょうか?」


場の空気は、張り詰めるような沈黙に包まれた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
オルフェウスの能力は…【料理人】 さすがヒロイン!圧倒的女子力♡
努力家のリリアーナにぴったりなスキルですね ”一歩及ばない”とは何とも意地悪ですがw それにしても、義父さんのスキルにはウケました(≧▽≦)!! 料理センスあるの羨ましぃ〜
 ワケアリな様子のセラフィーネ。リリアーナを『友人』と言うセラフィーネを信じたい…だからリリアーナをちゃんと帰してくれ。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ