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男爵家の六人目の末娘は、○○を得るために努力します  作者: りな
第2章

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セラフィーネとラディンの密会

夜の静けさが、辺りを包んでいた。

眠るリリアーナの寝息を確認したセラフィーネは、そっと布団を整え、髪を指で押さえながら部屋を抜け出す。

月は真上に昇り、銀色の光が木々の影を静かに照らしていた。


待ち合わせ場所に着くと、すでにラディンが立っていた。影のように黙って月光に照らされている。


「来たわよ」

セラフィーネは涼やかな声で言う。


ラディンの表情は険しかった。

「リリアーナのいる町が、襲撃に遭う。魔獣達が来る日だ」


セラフィーネは眉をひそめ、問いかける。

「……本当に?」

「ああ、族長が話していた。……確実だろう」

「貴方も、その中に?」


ラディンは沈黙の後、静かに答えた。

「俺の親父が殺された。俺は、その日の混乱に紛れて仇を討つ。そのとき、リリアーナが傷つかないようにしてくれ」


セラフィーネは唇を緩める。

「……なんで私に?」


ラディンの瞳が月光を受けてわずかに光った。

「……強いだろ?」

「……どうして、そう思うの?」

「気配が、違う。……隠していても、俺にはわかる」


ラディンは続ける。

「今日リリアーナが摘んでいた薬草……あれは、魔獣に唯一効くものだ。絶対に持たせろ」


セラフィーネは短く息をつき、静かな声で言った。

「……伝えないの?」

「……俺は、知らなかった事に、して欲しい。あの薬草はイリヤ族の秘匿だ」


セラフィーネは月光の下で肩をすくめ、静かに微笑む。

「ふうん。いいわ。リリアーナは守るつもりだったし」


ラディンはわずかに顔を緩めた。

「有難う、頼む」


セラフィーネは、月光の下でラディンをじっと見据えた。

次の瞬間、左手首に嵌めていた銀細工の腕輪を外し、彼の掌に押し込む。


「襲撃の場所や日付がわかったら教えて。……そのときは“落とし物を届けに来た”って理由で、これを渡しに来て」


ラディンは手の中の腕輪を見下ろし、わずかに眉をひそめた。

「……いいのか」


「構わないわ。泊まっている宿は『雪解けの羽根亭』よ。当分はそこにいる」

セラフィーネはさらりと言いながら、わずかに口角を上げた。


しばし沈黙のあと、彼女は問いを投げかける。

「ねぇ、イリヤ族は……魔獣の動きがわかるの?」


ラディンは視線を遠くの闇へやり、低い声で答えた。

「雪豹紋は、腹が減ると苛立つ仕草を始める。……群れの三割がそうなったら、大体三日後に獲物を群れで狩りに行く」


セラフィーネは目を細めた。

「……随分詳しいのね」


ラディンは無表情のまま、淡々と付け加えた。

「あいつらとの付き合いは、長いんだ」


月光が二人の間を照らし、冷たい風が枝を鳴らした。

その音が途切れると、夜の静寂がふたたび降りてきた。


セラフィーネは彼に向かって、ほんの少し意味深に微笑んだ。

「……あなた、いい男ね」

「……そんなこと、ないさ。臆病なだけだ」

ラディンは影のように夜の闇に溶けて去っていった。


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― 新着の感想 ―
父親と同じ方法で殺すのかと思ったけど薬が無いか >襲撃の場所や日付、迎撃できるかな
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