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男爵家の六人目の末娘は、○○を得るために努力します  作者: りな
第2章

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エドモンドの苦悩

エドモンドの執務室に、兵士が入ってきた。

恒例の定時報告だが、その日は少し違った。

「報告があります。リリアーナ様が青年と仲良さげに森から戻って来ました」


エドモンドの眉がピクリと動く。


翌日。

「報告があります。リリアーナ様が昨日の青年と待ち合わせをし、朝から森に入っていきました。昼過ぎには二人で戻って来ましたが……リリアーナ様は大変うれしそうでした」


エドモンド、頭を抱える。


(……最近、一緒にいない……。庭を一緒にやろうって言ったのに、一回もしてない……)


そして兵士に尋ねる。

「どんな男だ」

「大変美形です。金髪、緑色の目です」


(ぐっ……何か負けてる気がする……)


「……リリアーナは、そんなに嬉しそうだったのか」


「はい。それはもう。満面の笑みに見えました」


「……報告、有難う。また、頼む」

兵士は敬礼しつつ、ちょっと口元が震えつつ退室。


夜、エドモンドは食卓でリリアーナを注意深く観察する。

(なんだ、この落ち着きのなさは……。そわそわして……)


食後、リリアーナは椅子をきれいに戻すと、そそくさと部屋を出ていった。

エドモンドを見ようともしない。

カチャリ(扉の閉まる音)。


エドモンド、目を細める。

(……速やかに出ていったな。怪しい。非常に怪しい。いや、怪しすぎる……!)


不安が胸の中で風船みたいに膨らんでいく。

(もしかして……もしかして私より、その青年の方が……!? いや、いかんいかん、まだ決めつけるな。しかし……!)


グラスをぎゅっと握り、水を溢してしまう。

「……くそっ、冷静になれ私」


しかし冷静にはなれず、頭の中で「リリアーナ+美形青年」が花畑を背景に笑い合っている幻覚が再生され続けていた。



その頃、リリアーナは部屋で机に両肘をつき、キラキラした目で大王栗を眺めていた。


「ふふふ……初めての大王栗だ……!」

手のひらにどっしり収まるその栗は、王の名を冠するにふさわしく、堂々たる存在感を放っていた。


「どうやって食べようかなぁ……煮る? 焼く? 蒸す?ん~、全部試したいっ!」

頬を赤らめながらコロコロと栗を転がし、ひとりでニヤニヤ。


「……あ、明日誰かに聞いてみるのも良いかも!」

そこでピタリと栗を抱きしめ、真剣な表情になる。


「でも……エドモンド様には内緒。サプライズにするんだから」


大王栗を持ち上げて見つつ「……あ、美味しい食べ方、本にのってないかなぁ」と思いつき、本棚へ突撃。

ガサガサッ、バサッ、ドンッ。 本を積み重ねてごそごそ探し始める。


「うーん……“貴族の正しい食卓作法”……ちがう……“森で拾った変なキノコの見分け方”……ちがう……"木の実レシピ……大王栗の項目が無い……」


結局、見つからず。


こうしてリリアーナの明日は……通りかかる人を片っ端から捕まえては、

「大王栗ってどうやって料理すると一番美味しいの?」

と熱弁をふるう、栗レシピ大調査の日となるのであった。



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