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男爵家の六人目の末娘は、○○を得るために努力します  作者: りな
第2章

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マルグリットの心情

まだ、マルグリットがリリアーナに会う前。


マルグリットは、エドモンドからの手紙を読んでから、ずっと胸が高鳴っていた。


「結婚したい人ができた」


その一文を見ただけで、もう頭の中はぱあっと花畑。

エドモンドがやっと未来を選んだのだという喜びに、目尻に涙まで浮かぶ。


「まあ……どんなお嬢さんなのかしら?頭が良くて、成績優秀で……薬草に詳しいって……あら、剣までできるの?すごいじゃないの!」


思えば思うほど、勝手に理想の義娘が形を持ち始める。


その子はいつも清楚なドレスを身にまとい、可憐に笑って、

「お義母様、これはどうすればよろしいでしょうか?」と小首をかしげる。


「まあまあ、こうするのよ」と、マルグリットは優しく教えてあげる。

お菓子作りも一緒に、刺繍も一緒に、午後は紅茶を飲みながら笑い合って……。

「可愛いわねえ、私の娘になってくれてありがとう」

そんな言葉を口にする日々が、もう目の前に迫っているような気がした。


マルグリットはその夜、嬉しさのあまり眠れなかった。

翌朝には鏡の前で「あら、少し若返ったかしら」なんて思ってしまうほど、頬はほんのり赤らんでいた。


――そして、運命の出会いの日。


「……まあ!」

初めて目にしたリリアーナは、本当に可愛らしかった。

紫の瞳は光を受けてきらめき、紫の髪は陽を浴びて宝石のように輝いた。

マルグリットは胸を押さえ、「この子が義娘になるのね……!」と心の中で感嘆する。

思わず抱きしめてしまいそうになるほどだった。


だが。


数日後。


「森に行ってきます!」

「え?」


帰ってきたリリアーナは、薬草の匂いをぷんぷんさせ、泥で服は汚れ、袖口は裂けていた。

「……え、ええっと……貴族のご令嬢、でしたわよね?」

マルグリットは目をぱちぱちさせ、ついには頭を抱えてしまう。


次の日もまた薬草にまみれ、その次は弓を背負って森を駆け回り、服はいつもボロボロ。

「……夢に見た紅茶とお菓子の午後は……どこへ?」

マルグリットの理想の妄想は、薬草の匂いと共にかき消されていく。


そして、ある日リリアーナが言った。

「魔鳥との戦いに、私も出ます!」

「あり得ませんわぁぁぁ!!!」と心の叫び。

マルグリットは自分の知らない生き物を見たような気がした。


――だが。


ある時、マルグリットは、兵士の言葉を聞いた


「……リリアーナ様は、『今、必要だと思うことを、しているだけです』って言ってました」


その一言が、胸に深く響いた。


リリアーナは毎日のように矢を射っていた。

汗をぬぐいもせず、何度も何度も的に向かって。

また、薬は魔鳥対策らしい。

派手に語ることもなく、ただ静かに――必要だからと動いていた。


魔鳥襲来の後。

リリアーナは立っていた。

息を切らし、髪は乱れ、服はさらにボロボロ。けれど、その瞳は真っ直ぐで、力強かった。

弓を握るその手は震えていたが、仲間を守り抜いた姿は、確かに立派だった。と聞いた。


「……あの子は……なんて……!」

マルグリットの胸に熱いものが込み上げ、涙がこぼれ落ちる。

「私……何もわかってなかった……!あんなに立派で、あんなに優しい子だったなんて!」


嗚咽まじりに泣き出すマルグリット。


「マルグリット」

椅子に腰をかけているオルフェウスが声をかけた。

オルフェウスは随分と回復した。

彼は立ち上がりはしなかったが、手を伸ばしてマルグリットの背を優しく撫でた。


「嬉しいのだろう?」

「ええ、嬉しいのよ! 私の義娘があんなに立派だなんて……!私、誇らしくて……!」

ついにマルグリットは顔を覆って、椅子の脇にずるずるとしゃがみ込んで泣き崩れる。


オルフェウスは苦笑しながらも撫で続けた。

「はいはい……泣きすぎて床に水たまりができそうだぞ」

「だって、嬉しいんですもの……」


部屋には、すすり泣きと笑いが入り混じった、不思議に温かい空気が広がっていた。



――夢想とは違った。

でも、現実は想像以上に誇らしく、そして温かかった。



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― 新着の感想 ―
マルグリットさん、夢に見た娘とのふわふわほのぼのデイズがーΣ(゜д゜lll)ガーンな気持ち、よくわかります。 でも、魔鳥退治も一段落ついたし、きっと、誘えばアフタヌーンティーにも付き合ってくれますよ。…
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