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男爵家の六人目の末娘は、○○を得るために努力します  作者: りな
第2章

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宴の翌日

リリアーナが眠ってしまった。

「……もう、大丈夫ですから。一緒にお城にお戻りください」

人々がそう告げる。


エドモンドは無言でうなずくと、眠るリリアーナを背に負った。体は軽く、けれど温もりは確かで、その重みが心臓を締めつけるようだった。


――帰り道。

月明かりの下、リリアーナは一度も目を覚まさない。肩に落ちる柔らかな髪が、時折エドモンドの頬をかすめる。そのたびに、愛しさと同時に胸が切なく揺れた。


「……安心して、おやすみ」

彼は誰にも聞こえぬほどの声で囁いた。


城に着き、静かな寝室。エドモンドはそっと彼女をベッドに下ろした。寝具に包まれたリリアーナは、まるで夢の国の姫のように安らかで、美しい。


その寝顔を見つめながら、エドモンドの胸にはどうしようもない愛しさが込み上げる。触れたい、けれど触れてしまえばこの想いがこぼれてしまう。


彼はただ、唇をかすかに噛みしめ、切なさを抱えたまま……リリアーナの眠りを見守り続けた。


……月が雲に隠れ、部屋は静かに闇へと沈む。

それでも、エドモンドの視線は彼女から離れることはなかった。



翌朝。

リリアーナは、ふわりと瞼を開けた。窓辺から差し込む光が柔らかく、鳥のさえずりが聞こえる。けれど、どうして自分がベッドの上で眠っているのか、まるで記憶がない。


「……あれ? わたし、いつの間に……?」


そう呟いたところに、扉をノックする音。入ってきたのはエドモンドだった。


「おはよう、リリアーナ」

「おはようございます……あの、昨日、わたし……?」


リリアーナが首をかしげると、エドモンドは口元を緩め、肩をすくめた。


「宴の途中で寝てた。仕方ないから背負って帰ってきたよ」

「えっ……! そ、そんな……!」


リリアーナの頬がみるみる赤くなる。


「……ありがとうございます。ご迷惑を……」

「いやいや。お礼を言うなら、……代わりに何か“お返し”をくれるのかな?」


からかうエドモンド。


「えっ……ええっ!? えっと……え、ええと……」

慌てるリリアーナの姿に、エドモンドはつい笑い声を漏らした。


「冗談だよ。そんな真剣に悩まなくてもいい」

「も、もう……!」


リリアーナは頬を膨らませて抗議するが、その姿もまた可愛らしくて、エドモンドの胸には温かいものが広がっていた。


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