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男爵家の六人目の末娘は、○○を得るために努力します  作者: りな
第1章

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エピローグ

学院を後にしたリリアーナとエドモンドは、馬車に揺られながら都の喧騒を遠ざけていく。窓の外には、緑の丘や小川、時折見える森の影がゆったりと流れていた。リリアーナは鞄の中に入れた薬草や調合用の道具、そしてリュートを手に取り、ふと手を止める。


馬車の中は静かで、二人だけの時間がゆっくりと流れていた。リリアーナはまだ心のどこかで、学院生活での陰湿な嫌がらせを思い返していた。しかし、隣に座るエドモンドを見た瞬間、胸の奥に安心感が広がる。自分を無条件に受け入れてくれる存在――そんな気持ちが膨らむのを感じた。


その静寂を破るように、エドモンドが小さく声を漏らす。

「実は……学院の会で、君の歌声を聞いていたんだ。あの時から、ずっと気になっていた」


リリアーナは目を見開き、頬が真っ赤になる。思わずうつむき、声も震える。

「え……えっと……そ、それなら……これからは毎日でも弾き語りをします!」


エドモンドは微笑みながら、少しからかうように言った。

「楽しみにしてるよ」


馬車の揺れと共に、リリアーナは思わず小さな笑みを零す。長かった――心から安心して笑える場所を探し求めて、やっと見つけたんだ。これまでの苦労や孤独、泣いた夜も、今のこの瞬間と比べれば、すべてが遠い思い出のように感じられる。


外の風景が少しずつ北の大地へと変わり、雪をかぶった山々や凍った湖が見え始める。リリアーナは窓の外を見ながら、小さく手を握る。エドモンドの手も、そっと重なり合った。


「エドモンド様となら、どんな場所でもいい」と心の中で思う。

「薬草のことも、剣のことも、一緒に学べる。そして歌も……認めてくれた。だから怖くない」

「少し、エドモンド様の両親に会うのは不安だけれど……」


馬車の中で、二人の距離はさらに近づいた。リリアーナは胸の奥が温かくなるのを感じ、未来への希望でいっぱいになる。

ここには、心から笑える場所がある――そして、もうひとつ、誰かと分かち合える日常がある。


リリアーナは小さく、でも確かに笑った。

心の中で、北の大地に広がる薬草の森や、魔獣との対策、弾き語りの音色、剣の稽古の日々を想像する。

「これからは、毎日が新しい冒険だ」と心の中でつぶやき、馬車の窓から差し込む夕日を見つめる。


そして、リリアーナは確信する。

もう、心が震え、傷つくことを恐れる必要はない。どんな困難も、ここにいる人となら乗り越えられる――と。


馬車はゆっくりと北へ進む。リリアーナとエドモンドの新しい旅は、こうして静かに、しかし確かな希望の光の中で幕を開けた。



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― 新着の感想 ―
続編待っております!!!
残念だけど悪いわけではない両親はともかく(そんな困窮してんなら、ポコポコ子供作るんじゃないよ!)お師匠様や弾き語りの人にお手紙やレア薬草の贈り物をして交流を続けていって欲しいですね。 北に行った後の剣…
お話もサクサクと読み進められて良かったです! やっと心にぽっかりと空いた穴が埋められそうですね〜 色々といいように使われて我慢の連続でしたが、 腐らず受け入れたことによって実が結ばれた感じですかね〜 …
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