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男爵家の六人目の末娘は、○○を得るために努力します  作者: りな
第3章

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ラディンの旅立ち

翌日の夜、ラニアが作り出した玉と、木の魔物の種をどう扱うべきか――再び話し合いの場が設けられた。


「ラディン、すまないが……、行って来てくれないか」

オルフェウスの言葉に、ラディンは一瞬、目を瞬いた。


「俺が、行くのか……?」


「あなたしか、頼めないのよ」

マルグリットが穏やかに微笑む。


「ラニアはまだ幼いし、リリアーナはその相手だ。二人は同行できない。俺は領主代理として城を離れられん」

エドモンドの言葉が続く。


どうやら、三人は結託したようだった。

リリアーナは、あれ、いつの間にか決まってる?と四人を見る。



「……わかったよ」

深くため息をつきながらも、ラディンは頷く。


報奨として、魔鳥の鱗と羽根をいくつか受け取ることが決まった。

そして、ラニアが作った玉を幾つかと、木の魔物の種を携えて。

半ば押し切られるようにして、ラディンの旅立ちは決まった。


意外だったのは、ラニアが「ぼくも、ついていく」と言わなかったことだ。ラディンが遠くだから、一緒に行けない、と丁寧に説明したのが功を成したのか……。

「……わかった」

ラニアは小さく言っただけだった。


やがて旅立ちの日、皆でラディンの見送りをした。

「気をつけて。くれぐれも扱いに注意するんだぞ」とオルフェウスが言う。

「言われなくても、慎重に扱うよ」とラディンが応じたその時、ラニアが声を上げた。


「待って。……これ、持っていって」


ラニアは何かを紙に包み、そっとラディンの前に差し出した。

「……なんだ?」とラディンが尋ねると、ラニアは少し俯きながら答えた。


「ぼくの髪の毛。……何かの役に立つかもしれないから」


ラディンは一瞬、言葉を失い、それから静かに頷いた。

「……とりあえず、貰っていくよ。有難う」


こうして、ラディンは玉と木の魔物の種を携え、旅立っていった。



ラディンが旅立った後、リリアーナは目の回るような忙しさに追われていた。マルグリットから、甘甘草の増産を一任されていたのだ。

毎日、疲れ果てるまで魔力を庭一面に注ぎ続けた結果、甘甘草は驚くほどの速さで、青々と繁っていった。


マルグリットは日ごとに成長を確認し、収穫の順を決めては次々とお茶に加工するよう指示を出した。

「まずは、公爵家にサンプルとして少量を送るのが良いかしら?」

ラニアから「品質は最高だよ」と言われ、自分の分を確保した上で、マルグリットは小さく呟いた。


「……かなり、良い収入になりそうね」

口元には笑みが浮かんでいた。



一方その頃、オルフェウスは倒れていた。


「父上、弓の練習をしましょう。ラニアが言ってました。頑張れば、父上でも魔力を矢にのせることが出来るって」

エドモンドが目を輝かせながら言う。


「……いや、私はもう大分弓から離れていたし、若い者のほうが上達も早いだろう?」

苦笑しながらオルフェウスは言葉を濁した。


「そうです。ところで、若い兵士で1人、ラニアが魔力の適性があるって教えてくれたんです。父上と一緒に練習できますよ」


若い兵士と競うように訓練など、まっぴらごめんだ――そう心の中で思ったオルフェウスだった。

「……だが、領主としての仕事があるしな」と逃げ口上を探す。


だが、その隙をマルグリットの声が容赦なく塞いだ。

「執務のことなら私が手伝うから、大丈夫です。練習をすべきでしょう」


その言葉に、オルフェウスは何も言い返せなかった。


こうして、オルフェウスと若い兵士による魔力操作の訓練が始まった。


エドモンドは他人の魔力を“抜く”ことができる。

「……何も感じないのだが?」とオルフェウスが言うと、

「では、もう少し魔力を抜きますね」とエドモンド。


すでに若い兵士はしっかりと魔力の流れを感じていた。

焦るオルフェウス。しかし何も感じない。突然、視界がぐらりと揺れる。


――そして、オルフェウスはその場に倒れた。



「……また明日頑張りましょう。他の方法も色々試してみるのも良いかも」

熱心なエドモンドの声が響く。


「……もう、やめてくれ」と心の中で呟きながらも、口には出せないオルフェウスだった。


一方で、ラニアはというと、ずっと、何かを思い詰めるように、遠くを見つめる日々を送っていた。



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― 新着の感想 ―
ラディン苦労性ですね⋯(・o・;) 辺境伯家の方々、彼は他の部族の人なの忘れてませんか?(≧▽≦)
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