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82.賢者様、聖女と組んで作戦開始っ!



「小賢しい連中に死を与えてやろうではないか! 天使を操るなど、神を愚弄するのも同然」


 天使は魔力を集めて、再び光の槍を形成し始める。

 あの槍の攻撃力はまともじゃない。

 万が一、直撃したらさすがの私でもあの世行きだろう。


「よくぞ現れたなっ! 私が相手になってやる! 喰らえ!」


「ふん……、かよわい魔法だ。児戯に等しい」


 私は天使めがけて【超音速の右爪ソニックブーム】を放つ。

 真空の刃が相手を切り刻む魔法である。

 これだけでも十分に強力な魔法だが、天使には効いている様子がない。


「児戯だって? それなら本気で戦ってやろうじゃないの。あたしの魔法はこんなもんじゃないからね?」


 天使の安い挑発に乗って、私は魔力を解放する。

 緑色の魔力が体中を覆い、壁をぴしぴしと揺らす。

 久しぶりの本気モードってやつである。


「ひぃいいい、お師匠様!?」


「先生が暴走しますわ!?」


 弟子二人は青い顔をしているが、今は非常時。待ったなしだ。

 聖なる天使様が相手ならば、私の黒猫魔法の出番である。


 【抱きつき蹴り噛みつき(アルティメットヘル)】や【理不尽な八つ当たり(ニューワールドディスオーダー)】といった闇属性の魔法でかたをつけてあげることにした。


 そもそも私は猫神様に帰依した身。

 人間の天使様がなんぼのもんじゃい!

 猫が人間より上位概念だとするならば、猫神は人間の神よりも上位に違いないのだ。


「ほほぉ、面白い魔法を使うようだな、獣人の娘」


 天使は私の魔法を見抜いたようで、口の端を釣りあげる。

 さすがは破壊の天使。

 その攻撃本能に敬意を表して、全力で叩き潰してあげなきゃね!

 

「ばか! 天使様と真っ向からやりあってどうすんのよ!?」


「ぬおわっ!?」


 私が出現させた複雑な魔法陣を聖女は速攻で消しにかかる。

 なんてことをするんだ、こいつは。

 せっかく良いところだったのに。


「天使様を封印したり、討伐したりしたら、世界の秩序に問題が起こるに決まってるわ! だいたい、あんなの倒しても一文の得にもならないでしょうが!」


「結局はそれかい」


 聖女はどんな時でも聖女ゼニゲバだった。

 知ってたけど。

 くぅ、かくなる上は正攻法でやるっきゃないね。


「ええい、それなら聖女、私が天使用の送還魔法陣を作るから、その間だけ防御して!」


「わ、わかったわっ! やれるだけやってあげるっ!」


 私は対天使のための作戦を伝える。

 それは送還魔法陣という、言わば召喚魔法陣の逆バージョンでもって追い返す方法だ。

 天使と真正面に戦うのは正直、やってみたいけど、ライカとクラリスがいる状況では難しいだろう。

 シュレーディンガーさんちの猫で異空間に閉じ込めるのもありだけど、天使相手にそんなことをしていいのかわかんないし。


「ライカとクラリスはここを離脱っ!」


 ここで私はライカたちを地上へと逃がすことにする。

 はっきり言って、少しの集中力も切らすことはできない状況だ。


「で、でもぉ……」


 ライカは悔しそうな顔をするけど、こればかりは譲れない。

 誰かをかばいながら相手ができるタイプではないのだ、あれは。


「ライカ、クラリス様を守るのがあんたの仕事! 傷一つでもつけたら許さないよっ!」


「は、はいっ!」


 私の意志が通じたのか、ライカはクラリス様の手を引っ張って走り出すのだった。

 ちなみに聖女の付き人のミナモトもそれについていった。

 その方がいいと思う。

 普通の人じゃ秒で死ぬ。


「死滅の槍に貫ぬかれよっ!」


「聖なる光よ、我らを守りたまえっ!」


 天使が攻撃を仕掛けてきたのはその直後だった。

 巨大な槍の一撃はまるで魔王の攻撃に匹敵する威力だ。

 聖女は聖魔法でそれをうまい具合に弾く。

 ががんっと轟音とともに、こっちまで震動が伝わってくる。

 弾き飛ばされた光の槍は地下空間の天井を突き破って外に飛んでいく。

 お願いだから被害が出ませんように。


「貴様らも死ぬがいい!」


 救いがあったのは、天使の槍の狙いが定まっていないことだ。

 天使は復活してからまだ間がないからなのだろうか。

 やつは手当たり次第に光の槍を飛ばす。

 おかげで聖女の防御魔法がすり減らないで済む。


「アンジェリカ、まだ!? ちゃちゃっとやっちゃいなさいよ! このぐずっ!」


「わかってるってば! あんただって防御魔法が弱くなってんじゃないの? 修行、さぼりすぎ! だからちょっと太ったんでしょ」


「はぁあああ!? 私が太ったですって!? あんたみたいに貧相なやつに言われたくないんだけど」


「ほぉおお、天使の前にとどめをさすやつがいるとは思わなかったなぁ」


 それでも私たちはケンカをしながら、作業を進める。

 勇者パーティ時代が懐かしい。

 私が詠唱に時間のかかる魔法を放つ時には、聖女の防御魔法にはずいぶん助けられた。

 そう、彼女がいたからこそ私も勇者も竜騎士ものびのびと攻撃できたのだ。


 私は一生懸命に手を動かし、地面に送還魔法陣を描く。

 あと少し、あと少しなのだ。

 ルルルカも頑張って!


「あ、あ、あ、そろそろヤバいかもっ! 悪いけどっ!」


「こっちもあと少しなんだけどっ!?」


 しかし、事態は最悪の方向に流れ始めていた。

 聖女は魔力がつき始め、防御魔法が徐々に小さくなっている。

 このままじゃヤバい。

 やばいけど、いまさら手を離せないっ!?


「貴様ら、人間にしては上出来だったというべきか。私から引導を渡されたことを光栄に思うがいい!」


 天使は防御魔法が弱くなったことに気づくと、こちらにずしん、ずしんと歩いてくる。

 どうやら直接、私たちに攻撃をしかけるつもりらしい。

 天使の癖に悪役のような思考をする奴である。


 しかし、このまま座して死を待つわけにはいかない。 

 ええい、しょうがない。

 今から私が相手になるしかない。


 聖女の言う聖典の教えに反することをすることになるけど、背に腹は代えられないよねっ!?

 私はふぅっと息を吐き【抱きつき蹴り噛みつき(アルティメットヘル)】の魔法の準備に入ろうとした。

 巨大な猫精霊に掴みかかられて全ての爪と牙で攻撃される究極の攻撃魔法の一つ。

 マジギレした猫が行う蹴りながら噛みつくという残忍極まりないスタイルで対象を攻撃し、魔法が終わるころにはズタボロの肉塊しか残っていない攻撃魔法。

 

「そんじゃ、あんたに教えてあげるよ。猫神様の真の恐怖を!」


 私の頭上に巨大な魔法陣が出現する。

 さぁ、始めようじゃないか、ぎりぎりの戦いを!

 私は背筋にぞくぞくしたものを感じるのだった。


【理不尽な八つ当たり(ニューワールドディスオーダー)】←こっちのが気になる

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