表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
59/88

59.大臣、再び、陰謀を始めるよっ!


「ぐふふふ、まったく驚きましたよ……」


 ランナー王国の大臣、ジャークは王女を始末したという報告を聞いて胸をなでおろす。

 まさかあの知能の低い王女が自分のことを嗅ぎまわるとは思ってもみなかったのだ。


 世界に悪名高い罪の一つ、国王殺し。

 彼は完全にその主犯だったのである。


 彼の管轄する宮廷魔術師四天王と共謀し、先代の王を呪殺してしまったのだ。


 それは拍子に見せかけた高度な殺人であり、アンジェリカさえも書類だけでは見破ることができなかった。

 あとはアンジェリカをはじめとしたジャマな人材を排除し、病弱な現王を自分の傀儡として打ち立てれば、この国を乗っ取れると大臣は踏んでいたのだ。

 

 これで完璧だと思いきや、彼らの計画は一筋縄ではいかなかった。

 大臣の指揮する宮廷魔術師四天王のうち、三人が変質者としてワイへ王国に捕縛されてしまったのである。

 彼らには多額の資金を投入しており、その投資がすべて消えたとなると、大臣のはらわたは煮えくり返る思いだった。


 しかし、それどころではない事態が発生する。

 これまでせっせと蓄財してきた、彼の財産が吹っ飛んだのである。

 彼の寝室にしつらえていた秘密倉庫の中身、そのすべてが消え去ったのだ。


 何が起こったのか、何が原因なのか、その理由はさっぱりわからない。

 大臣は文字通り卒倒し、一週間ほど泣きわめいて暮らしたのだった。


「ぐふふっ、私はあきらめませんよ! 次期国王になるのは私なのですから!」


 とはいえ、大臣のガッツはなかなかのものである。

 常人であれば人生を悲観して、自分探しの旅に出てしまうようなタイミングであるが、彼は諦めなかった。

 すぐさま『国王陛下即位記念税』などというものを発案し、国民から税金を徴収するのだった。

 もちろん、その大部分は彼のポケットに転がり込む。



「ぐははは、愚民どもめ、もっともっと絞り取ってくれるわ!」


 膨らみ始めたポケットに再び強気になる大臣であるが、そんなことで満足する男ではない。

 一番の懸念事項はやはりワイへ王国への侵攻作戦が上手くいっていないことである。

 まぬけな部下たちのせいで、被害を一切与えられておらず、隣国は無傷のままだ。

 大臣は奥歯をぎりぎりと鳴らし、どうしてくれようかと思案するのだった。


 彼は思う、こうなったら、強大な力をもって叩き潰すのが最善の策であると。

 レイモンドは裏工作をし過ぎたし、カヤックやジャグラムはモンスターなどという不確実なものに頼り過ぎた。

 やはり、国を亡ぼすには圧倒的な暴力だけである。

 自らが先陣を切って攻め込むべきだと考えたのだ。


「しかし、いくら大臣様でも相手はワイへ王国、強力な冒険者を抱えておりますが……」


 部下の一人は大臣の発案にしぶい顔をする。

 確かに大臣は腕利きの魔法使いであったが、冒険者ランクでいえばAランクに毛が生えたようなものである。

 一人で戦いを挑むのは明らかに無謀に思える。

 せめて、ランナー王国の騎士団を率いなければ、戦いにならないのではないか。

 部下がそう思うのは無理のないことだ。


「ぐははは、愚か者め。わしの虎の子を忘れたのか!」


「と、虎の子ですと……!? ま、まさか!?」


 大臣の言葉を聞いた部下の一人は瞬時に顔色を変える。

 そう、彼は思いだしたのだ。

 大臣がとんでもない兵器をワイへ王国との国境の山に隠し持っていることを。


「ワイへはもうおしまいだ……」


 部下はその威容を思い出し、口をパクパクとさせる。

 彼の脳裏には大臣の魔導兵器がもたらすであろう徹底的な破壊がありありと映っていた。


「ぐはは、わし自らが操作し、攻め込んでやるわ!」


 これから起こることを想像し、大臣は愉快そうにほくそ笑む。

 彼の破壊への欲求はもはや誰にも止めることはできないのだった。

 

 


大臣、頑張れ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ