34.賢者様、スライム退治の依頼を受けて大興奮します!
「しゅ、しゅらいむだよ! ライカ、この依頼、しゅらいむたいじだっぁああ」
「落ち着いてください、お師匠先輩! 知能が退行してますよ!?」
冒険者ギルドに到着した私は驚きと焦りと喜びのあまり、滑舌の悪さを披露することになる。
しかし、落ち着いていられるかってぇんだい、スライム退治の依頼だよ!
そんなザコ退治の依頼をする人がいるなんて信じられないよ!
「そりゃあ、いますよ? 常識的に考えて……」
興奮する私とは対照的に、やたらと落ち着き払っているライカである。
いやぁ、スライムってめちゃくちゃ弱い生き物だし、指先一つで破裂するでしょ。
わざわざ依頼をだすまでもあるのかなんて思っちゃったんだ。
「いいですか、先輩。梅雨時のスライムはどんどん増えて、畑を荒らしたりするとっても悪い魔物なんです!」
「そ、そうなんだ」
ライカはやたらとスライムの恐ろしさについて力説する。
なるほど、農作業に悪さをするから嫌ってるのかな?
「しかもですよ、今ではスライム専門の冒険者もいて、ギルドにつくなり受付嬢に「スライムだ……」なんてかっこよく言う輩もいるんですよ! その名もスライム始末人! 私、その人の話を吟遊詩人から聞いて、感動したんです! スライムだけ倒してAランク冒険者なんですよ、その人!」
ライカはなんやかやとわめきたて、しまいには「きゃあ」などと声をあげる。
要するに「スライムを甘く見るなよ、この野郎」ということらしい。
ふぅむ、私たちが魔王と戦っている裏では、スライムと戦って村の平和を守ってくれている人がいたのだ。
そんな人には感謝しかないよ、うん。本当だよ。
それにしても、ライカの「スライムだ……」が妙にかっこよかった。
目つきの鋭いライカには背筋がびりっとしたよ、本当に。
「それじゃあ、そのにっくきスライムをやっつけてあげようじゃないか!」
「お師匠先輩、私、頑張ります! 私の杖が火を噴きますよっ! 今朝、雨でトレーニングが中断されたんで欲求不満なんです」
そんなわけで、私はスライム退治の依頼を受けることにした。
ライカは受付のお姉さんに「スライムだ……」などと言って一人で大盛り上がり。
私は私で、スライム退治というFランクならではの依頼にわくわくするのである。
依頼がすぐに終わったら面白くないから、できるだけ沢山いてほしいなぁ。
「スライム退治ね。えっとぉ、この依頼は共同依頼になってるわぁ。他の冒険者も請け負ってるから、適当にやっちゃっていいわよ~」
ギルドの受付嬢のお姉さんは相変わらず気だるそうな接客である。
話を聞くに、このスライム退治の依頼は大量発生したスライムを次から次へとやっつけるという内容らしい。
二人程度では片付かないので、いくつかのパーティーがこれに参加しているとのこと。
共同依頼なんてFランク冒険者にはちょっと頭が高いかなって思う部分もあるが、これを逃さないわけはない。
そんなわけで私とライカはスライムが大量発生しているという丘に向かうのだった。
……そして、私は直面することになる。
スライムが信じられないほど増殖し、丘全体を覆っている状況に。
えぇええ、梅雨どきってここまで増えちゃうものなの?
「面白かった!」
「続きが気になる!」
「スライムは侮れませんよっ!」
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