21.賢者様、ライカの突然の豹変に戦慄します。 ひぃぃいいい、ライカちゃん、どうしちゃったのさ!?
「でぇえええ、た、たけざおじゃん! こんな伝説の武器がどうしてここに!?」
さすがは王都のでっかい武器屋さんというべきか。
ひのきの棒と双璧をなす、へっぽこ武器が置いてあるではないか。
その名は、たけざお。
簡単に言えば、竹の竿である。
竹というエキセントリックな素材を大胆に使用した、素晴らしい武器である。
ふぅむ、大陸の東だからこんな武器があるんだろうか。
なにはともあれ、すごく軽い。
おそらく、数回使用したら割れちゃうんじゃないのかな。
あの女勇者ならこれで空飛ぶB29型ワイバーンを撃ち落とすんだろうけど。
「ひょごふっ! これはすごい武器だよ!」
私はたけざおを持って興奮に打ち震えるのだった。
例えFランク冒険者であっても、これを真面目に装備するやつはどんな唐変木なんだろうか?
そう考えるだけで、私は吹き出してしまうのだ。
いや、馬鹿にしてるんじゃないよ。
これでモンスターに立ち向かう強心臓に感心したのである。
まさに鋼鉄の心臓ってやつである。
言うなればリスペクトしてるんだよ、本当だよ。
「お師匠様、真面目にやってください。私にぴったりの装備を選んでくださるって言ったじゃないですかぁ! そんな棒切れじゃ何もできませんよっ」
私がへぼい武器や防具ばかりを見ているので、ライカはご立腹の様子。
ふぅむ、さすがにひのきの棒やたけざおを装備させるわけにはいかないか。
ライカは一応、魔法使い志望なんだし。
「だったら、これがいいじゃんっ!」
そんなときに私の目に入ってきたのは、駆け出し冒険者【魔法使い用】と銘打たれた3点セット。
ぬのの服、とんがり帽子、かしの杖である。
かしの杖は固い木材を使用しているらしく、なかなかの出来栄え。
とんがり帽子もいかにも魔法使いって感じで素晴らしい。
そして、何と言っても最注目は、ぬのの服、である。
ただの布でできた服であり、このチープ感がたまらない。
おそらくゴブリンに一突きされたら破れてしまうような紙装甲だろう。
縫製はしっかりしてるが、どう考えても戦闘向きじゃない。
「布だよ、これ。ただの布だよぉ!」
眺めているだけで、「おひょひょひょひょ」などと我ながら気持ちの悪い笑い声が湧き出してくる。
やっぱり、こういうのじゃなきゃダメだよね。
先ほどライカが着ていたみたいな露出の多い服は魔法使いっぽくないし。
ライカにはこの3点セットを買ってあげよう。
今なら2割引きだし、ポイントも付くらしいし。
でも、ライカは杖は良いの持ってるし、ローブも紋章を隠しちゃえばいいかなぁ。
とんがり帽子だけでいいかなぁ。
うーむ、悩む。
「お師匠先輩、これを見てくださいよっ! すごいですよっ!」
一方のライカは中級冒険者コーナーにて、ぴょんぴょん飛び跳ねている。
彼女が手に持っているのは、お買い得シールの貼られた魔法使い専用の杖だった。
魔法の発現に特化したワンドと呼ばれるもので、小型軽量タイプである。
「見てください! これって、反対側がペンになってるみたいです、ほら、うご、ぎぐ、ごああああああああああですぅうう!」
しかし、その杖を手に持ったライカの様子がおかしい。
杖の便利グッズぶりを解説し始めたかと思ったら、突然、奇声を上げ、白目をむく。
普段からおかしな言動を繰り返してはいるけど、こんなことは初めてだ。
ひぃぃいいい、ライカちゃん、どうしちゃったのさ!?
ひょっとして、大幅にグレードダウンする装備を買ってあげようとしてるから、怒ってるとか!?
「面白かったで」
「続きが気になるっ」
「反対側がペンって、一番くじで見たような魔法の杖だな……」
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