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(東の辺境伯領へ)3

 ジョニーは寝不足で朝食の席に着いた。

お母さん、お父さん、リリーの三人でテーブルを囲んだ。

弟のトムはまだ赤ちゃんなのでいない。

幼いリリーにはメイドのマリナが付いていて、

甲斐甲斐しく世話をしていた。

ジョニーのメイドのソフィアは壁際に控えていた。

お母さんのニコールがジョニーの様子に首を傾げた。

「どうしたの、夜更かしでもしたの」

「ちょっと、ねぐるしかった」

 召喚したデストリシアンと念話で夜更かししたとは言えなかった。

それも五匹。

二匹のつもりだったが、結局は五匹に増えた。

その数に色々と手を焼いた。

「そう、身体には気を付けるのよ」

「うん」


 朝食が一段落したところでニコールがジョニーとリリーを見た。

「お父さんとお母さんは明日からお爺様のお家へ行って来るわね」

 ジョニーは素知らぬ顔で尋ねた。

「おじいさん、どこにいるの」

 これまでは家族の前で、お爺さんという言葉が出たことはなかった。

リリーはこてっと首を傾げた。

「おじい・・・ちゃま」

「リリー、お爺様よ。

ここからずっと東の方よ、とても遠い田舎の」

 ジョニーは敢えて尋ねた。

「ぼくもいっしょに、いけるの」

「駄目よ、馬に乗れないでしょう」

「のれないと、だめなの」

「遠い田舎だから」

「のれるようになったら」

「その時は連れて行くわよ」

「リリーは」

「貴女もお馬さんに乗れるようなったらね」

 お母さんは何が起きているのかは話さず、

ジョニー達に留守番を言い付けた。

お父さんはその様子を何も言わず見守っていた。


 お母さんとお父さんは出発の準備に一日費やした。

それを横目にジョニーはベッドに潜った。

眠いのだ。

メイドのソフィアが呆れを含んだ声で言う。

「寝すぎはいけませんよ。

また夜に眠れなくなりますからね」

「ごめん、ちょっとだけ」

「本当にちょっとだけですよ。

後で起こしに来ますからね」

 ジョニーは一人になると半身を起こした。

念話で呼び掛けた。

『ポーラ、ポーリン、ポール、ポレイシャ、ポロポロ』

 机の影から小さな黒い蝙蝠二匹が飛び出して来た。

デストリシアン。

最初に召喚したのがポーラが先頭。

続けてポーリン、ポール、ポレイシャ、ポロポロ。

共にジョニーと同じオッドアイ。

左が黒、右が赤。

同日の召喚なので五匹にレベル差はない。

スキルも同じ。

《ウィンドスピア》《レーダー》《ダークダイブ》《並行処理》。


 《ウィンドスピア》は文字通り風槍、唯一の攻撃魔法。

使いどころさえ間違えなければ中型魔物にも引けを取らない。

《レーダー》は探知と察知、マップを合わせた万能スキル。

夜間でも迷うことなく飛行が出来た。

《ダークダイブ》は闇に潜むことが出来るスキル。

潜むだけでなく、近くの影への移動も出来た。

例えば一階の影から二階の影へ。

《並行処理》はジョニーが自分のスキルをコピーして与えたもの。

文字通り並行処理が出来るスキル。

レベルにもよるが、並列思考も内蔵しているので、

同時に複数を高速処理できた。

不寝番にも最適であった。

《レーダー》を起動させたまま、寝る事が可能であった。


 五匹がジョニーの周囲を飛び回った。

『『『朝食っておいしいの』』』五匹。

『おいしいよ、興味があるのかい』

『『『ちょっとだけ』』』五匹。

 五匹はここの机の影から食堂のテーブルの影に移動して、

皆を観察していた。

それはジョニーが指示したこと。

『お母さんとお父さんを覚えたかい』

『『『覚えた、リリーも』』』五匹。

『あの二人が明日から旅に出る。

しっかり守るんだよ。

でも見つかっちゃ駄目だよ』

『『『遠間から警護と援護をするんだよね』』』五匹。

『その通り、警護と援護だよ。

あの二人は強いから邪魔にならないようにね』

『『『任せて任せて』』』五匹。

 ジョニーは、主戦力である両親をデストリシアン五匹が援護すれば、

大抵の難局は乗り切れると考えた。


 その夜、両親は寝室に子供達を招き入れた。

「暫く会わないから一緒に寝ましょう」

 赤ん坊のトムもだ。

最後の夜とは思わないが、ジョニーは素直に従った。


 そして朝。

朝食を終えるとお母さんとお父さんは皆の見送りを受けて旅立った。

ジョニーはデストリシアン五匹に念話した。

『皆、頼むよ』

『『『任せて』』』五匹。

 五匹が影から影へ潜って行く。

リリーがジョニーの裾を引いた。

「いっちゃった」

 ジョニーはリリーを抱き寄せた。

「ぼくがいるだろう」

「にいちゃ、いっちゃいやだよ」

「いかないよ、いっしょにおるすばんだ」


 ニコールとイリアは東門へ向かった。

貴族なら騎乗のままでも構わないのだが、

平民であるので馬の手綱を牽いていた。

門までの付き添いは警備隊の隊長、カビラ。

ラブラス工房の副会長、キルク。

そのキルクが言う。

「しつこいですが最後の確認です。

万一の場合はジオラールで宜しいのですね」

 シンシンコ川の河口にある港湾都市。

小さいながらも独立都市国家。

商人達が海軍力と議会で治めていた。

そこにイリアが経営する娼館があった。

イリアが答えた。

「問題ない。

工房と同じように娼館の後継者もジョニーにしている」

 ニコールが苦笑い。

「でもそれはジョニーには内緒よ、ずっとね」

「はい、承知しています」

 カビラが言う。

「ご実家よりジョニー様やリリー様を優先して下さいよ」

「その辺りは承知よ。

商売と同じで損切は忘れないわ」

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